第21話 慎也くん、お目が高い!
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それから僕はどうにかドローンを捕まえて配信を終わり、アーカイブも完全に削除したのだった……でもるーたん曰く、この配信切り忘れの様子はそれなりにバズってしまったらしく、トレンドとかにも入ったらしい。よくわからんけど。
でも配信者じゃない妹も意図せず映してしまったから、「転載はやめてくれ」と僕が土下座でお願いしたところ、みんなそれは守ってくれたみたいだ。インターネットって性根腐ってる奴らばかりかと思ってたけど(主語がデカい)、いい人もたくさんいるみたいだ。ってか、大半はいい人なんだよ……そのことを忘れちゃダメだよな。
まぁ後日、乃愛から「アーカイブ消してるじゃん」と詰められてしまったけど。誤魔化しておいたが、多分消した理由は分かってるんだろうなぁ……。
──
……ってなわけで数日後。るーたんからの招集が掛かったので、僕はギルド『カナリア』まで足を運んでいた。僕がギルドに入るなり、しょぼくれた顔をしたるーたんとヒナが僕を出迎えてくれて。
「……どうした? そんなしわしわ○カチュウみたいな顔して」
そう聞くと、るーたんはツッコむ素振りも見せず、気まずそうに。
「いや……あのー、ね。慎也くんが来る前に、前の探索でゲットしていた金貨を換金する配信をやってたんだけど」
「結局配信してたんだ……」
ってかまぁ、この様子から察するに……。
「偽物だったんだな」
「そう! そうだったの!! 最高金額いくかもって視聴者煽って、その辺にいた探索者の注目を集めて、盛り上げてたのに……!!」
「アタシが本物だろうと高を括って、鑑定してなかったから……!」
二人は悔しそうに言う。良いオチがついてよかったじゃん……ってのはさておき、僕は十中八九それらが偽物だということは分かっていた。そもそもあれは、探索者をおびき寄せるために置いてあった宝箱だし、中身が本物である意味なんてないのだ。
唯一あそこのダンジョンで本物だったのは、ボスのドロップアイテムである『魔導のペンダント』だけで……ってかペンダントの存在が明らかになった以上、みんなそれ欲しさにみんなウノダンジョンに挑むと思うんだけど。どうなってるんだろう?
「それより今、ウノダンジョンはどんな感じなんだ?」
「ああ……あの配信以降、魔導のペンダントを狙う人が大量に押しかけちゃって、一層二層にある罠が作動しまくって、大変なことになってるらしいわよ? 攻略難易度が一気に跳ね上がって……まぁ、アタシならまだ罠見切れるけどね!」
ヒナは得意げに言う。続けてるーたんも。
「そんな感じで最深部まで行くのは、今まで以上に大変になってるみたい。それにボスのドロップアイテムのペンダントも、激激激レアだったみたいだし」
「そっか。じゃあ魔導のペンダントの価値は一気に下がったりはしないみたいだな」
「かもねー。むしろ上がったかも?」
そんな会話をしながら僕らはギルド内を進んで、食堂のテーブル席に着く。そしてるーたんはカバンからお菓子と何枚かの紙を取り出しながら、僕に話しかけてきて。
「まぁ、慎也くんはエリクサーが無いダンジョンのことなんかどうでもいいよね?」
「よく分かってるじゃないか……ってことは、ようやく探しに行くんだな」
「うん! 私、エリクサーがありそうなダンジョン色々と探してみたんだー! まぁとりあえずはこの近くから攻めてみようと思ってねー?」
そう言ってるーたんは紙を僕とヒナに渡してくる。どうやらそれは探索マップのようで……各ダンジョンの階層や構造、敵モンスターの情報やドロップアイテムなど、ダンジョン攻略に必要な情報が、丁寧に手書きで書かれていた。
「へぇー、るーたんこんなことも出来るのね!」
「うん! ……まぁ配信とかウィキとか、視聴者からの情報パクっただけだけど」
「でも無いよりはマシだと思うぞ。ありがとな」
「えへへ~」
褒められるのが珍しいのか、るーたんは嬉しそうにふにゃふにゃと笑う。まぁでも僕、この辺りのダンジョンは大体制覇してるんだよな、言いにくいけど……。
「……ん?」
……でもその中に一つ、僕が聞いたことのないダンジョンが書かれた紙があるのが目に入った。僕はそれを手に取る。
「ここは……?」
「お! 慎也くん、お目が高い! ここはつい最近出現したとされるダンジョン、『キラボシダンジョン』だよ! 推奨探索者ランクは……なんと、S」
「……へぇ、面白そうじゃないか」
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