第19話 毎度お馴染みすぎるだろこの展開

 ──


 それから僕はドローンの追尾を僕に変更して、急いで乃愛を部屋に返した……そしたら『のあちゃんを出せ』『妹を返せ』とコメントが荒れだしたが、もう知ったことではない。とっととヒナに謝って、配信を終えよう……。


「あー、えーっとな。一応今日配信をしたのは、テスト配信の意味合いもあったが……ヒナに謝罪をしようと思ってな。昨日雑に扱ってごめんな、ヒナ」


 そう言って僕は頭を下げる。だが僕の薄っぺらい謝罪など、視聴者にはお見通しのようで。


『ん?』

『本音かそれ?』

『お前昨日ノリノリだっただろww』

『これ妹に言わされてるんじゃないか?』

『ああ、そういうことかww』


 乃愛に言わされていることに、みんな気づいたらしい。僕が自発的に謝罪なんかしない人間だともうみんな知っているようだ……それはそれで、なんかアレだけど。


『ヒナ:そんな見え透いた謝罪なんかいらないよ。もう慎也たちの仲間なんだし、ナビとしてジャンジャンこき使いなさいよ』

『おっ』

『本物!?』

『ヒナちゃん!?』

『ヒナちゃんもよう見とる』

『パーティメンバーの二人ともちゃんと慎也にぃの配信見てて草』

『そりゃ初配信は注目されるからな』

『VTuberかな?』


 どうやらヒナ本人までコメント欄に現れたらしい。本物かどうか確かめる方法は分からないが……多分周りの反応的に本人だろう。


「ああ、ヒナいるのか。次会ったら連絡先教えてくれよな」


『ヒナ:いいけどキショいメッセージ送ってきたら即消すからね?』


「僕をなんだと思ってんだ?」


『草』

『まぁ慎也お兄ちゃんは妹いるから大丈夫よw』

『妹LOVE過ぎるからその辺は安心』

『妹以外に興味なさそうだもんなぁ……w』

『そりゃあの妹がいたら他の子霞むわ』

『るーたんもヒナも超美少女なんだけどなぁ……?』


 コメントではなんか変に安心されていた。確かにるーたんとヒナは世間一般で言う美少女に該当していると思うし、僕も可愛いとは思う。普通の男なら変な気でも起こしそうなもんだが……まぁ僕には妹がいるからな。比べるのも失礼な話だ。


「まぁ、そんなことしないから安心しろ。そんな時間あるなら、妹に愛のメッセージを送り続けるから……」


 そこまで言うと、コメントの速度は一気に早まって。


『うわ』

『うわぁ……』

『うおw』

『キツイっす慎也さん』

『やっぱこのお兄ちゃんちょっとキモいね』

『のあ:でしょ?』

『草』

『みんな配信見てて草』


「……ん? これ乃愛……じゃないな。乃愛はこんなこと言わないから」


『草』

『草』

『現実受け止めろお兄ちゃん』

『ちゃんと本人やぞ』

『仲良さそうでいいわw』


 みんながなんと言おうと僕は信じない……うん。じゃあ無事にヒナにも謝罪出来たことだし、そろそろ配信を終わるとするか。


「よし、じゃあ今日はこんなところにしようか。今度るーたん達とダンジョン行くときは、僕のチャンネルでも配信すると思うから、チャンネル登録とかしててな」


『え~もっとやって!』

『終わろうとしてないか?』

『雑談配信頼む』

『妹映してくれ!!』

『妹ちゃんと配信やって♡』

『慎也にぃのゲーム実況見たいわ』


 配信を終わろうとすると、コメントのみんなが引き止めてきた……この反応は流石に予想していなかった僕は、困ったように頭を掻く。


「えー……? そんな僕の雑談とかゲームとかそんな需要ないだろ?」


『ある』

『大いにある』

『慎也にぃはゲーム下手そうww』

『絶対お前のダンジョンエピソード面白いから……』

『探索者のコーチングとかで稼げるんじゃね?』


 みんなダンジョン探索くらいしか興味ないと思っていたが、どうやら他にも色々と期待してくれてるみたいだ。まぁ探索配信以外はやんないと思うけど……頭の片隅くらいには置いててもいいかもな。


「ま、やらないとは思うけど、乃愛の要望があったら考えるかもな」


『おっ』

『乃愛ちゃん頼む!!! 慎也お兄ちゃんに鬼畜ゲーさせてくれ!!』

『自分が戦ったほうが早いとか言うぞ』

『絶対言うw』

『妹ちゃん頼む、慎也にぃにコスプレさせてくれ』

『あれ、いなくなった?』

『乃愛ちゃーん……どこ……ここ……?』


 どうやら乃愛がコメントしなくなったらしい。もう見るの止めたんだろうか。


「もしかしてもう寝たのかもな。それか急に体調悪くなったのか…………」


『あっ』

『あ』

『大丈夫か?』

『見に行ってあげたら?』

『もう終わってもいいよ』

『俺らのことは気にすんな』


 良くない考えに至った僕は少し焦る……でも妹のこととなると、コメ欄のみんなも僕らに気遣ってくれるようで。優しい言葉が増えていった。


「……ああ、大丈夫とは思うけどちょっと心配だし、とりあえず今日はここまでだ。結構突発でやったとはいえ、たくさん見てくれてありがとな……」


『うん』

『いいってことよ』

『るーたんパワーがデカい』

『あんな風だけどダンジョン配信者トップクラスだからなるーたん』

『知名度はナンバーワン』

『まぁ悪い意味でも目立ってるから……w』


「よし、じゃあお前らまたな。えっと、追尾機能オフにして………」

 

 僕はカメラの前でお礼を言って、慣れない手つきでドローンを操作した後……乃愛の元へと向かうのだった。


「…………………乃愛ー? 体調大丈夫かー?」













『ん?』

『あ』

『あっ』

『あれ?』

『切れてなくて草』

『続いてて草』

『い つ も の』

『毎度お馴染みすぎるだろこの展開』

『親の顔より見たぞこの流れ』

『ノルマ達成』

『切る練習もしろとあれほど言ったのに』

『追尾じゃなくて配信を切れ!!! 慎也!!!!』

『ちょ、るーたん電話電話!』

『るーたん:かけてるけど気づいてないんだよねぇ……マナーモードしてるのかな』

『家でマナーモードすんなww』

『多分妹以外は音鳴らないようにしてるんだよ』

『まぁ慎也にぃだし大丈夫でしょ(適当)』

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