第16話 幻のアイテム

『え』

『えっ』

『ええええええええええええええ』

『はぁあああああああああああ!!??』

『本当かよ!?!???』

『マジで言ってる!?』

『え、嘘だよね……?』

『ヒナちゃん冗談はよくないよ~w ……え、マジで?』

『多分ガチだあれ……』


 ヒナとるーたん、そしてコメントは驚愕に包まれているが……ただ僕一人だけがポカーンとしていた。なんだ、そんな凄い物でもドロップしたのか……? 置いてかないでほしいんだけど。


「何をそんな驚いてるんだ? 見たところ普通のペンダントにしか見えないけど」


「いやいや、慎也お兄ちゃん……これ、ずっと幻って言われてたアイテムだよ。装備した人の最大魔力を増加させるっていう……」


「へぇー、魔力増加か。強そうだな」


 魔法スキルの使える回数が増えるってことだろうか。確かに便利だな……まぁ僕はありがたいことに備わっている魔力量が多いので、魔力に困ったことはほぼないのだが……でもそんな僕の薄い反応を見てか、るーたんは食い気味に。


「いや、あんまり凄さ伝わってないよね!? 最大魔力を上げるなんてこと、普通は絶対出来ないんだよ!? そんなアイテム、今までに見つかってないんだよ!?」


「そうなの?」


「そうだよ!! スキルはとっても優秀なのに、魔力量が足りなくて活躍出来ず、涙を流した探索者が何人いたことか……そういう人達にとって、魔導のペンダントは喉から手が出るほど欲しいアイテムなんだよ!!」


 そして続けるようにヒナも大きな声で。


「そ、そうよ、慎也!! 分かりやすく言うなら、魔導のペンダントはエリクサーと同じ立ち位置の幻のアイテムなのよ!?」


 その単語を聞いて、僕はピクンと反応する。


「……だったら、エリクサーも本当にある可能性が高いってことか!?」


「うーん……そういうことになるのかな?」


『そうなの?』

『そういう話してた?』

『伝説度は同じくらいじゃないか』

『まぁこれが見つかったなら、可能性はある』


 それは朗報だ。これまで僕がずっとエリクサー探していたのは、無駄じゃなかったんだんだな……モチベ上がってきた。このまま別ダンジョンはしごしようか。


 それで未だ恐れ多いのか、ヒナは自分の身体から離すようにペンダントを持って、声を震わせながら。


「で、こ、これ……どうするの?」


「ああ……じゃあヒナが装備したらどうだ?」


「ええっ!!? い、いいの……!? 本当に!?」


「ああ。ナビだし、沢山魔力使うことになるだろ? ヒナが適任だろ」


 あのヒナのナビ能力がずっと使えたら、探索はもっと楽になるだろうからな。この中で装備するなら、絶対にヒナがいいと思う。それはるーたんも理解しているようで、特に反論はしてこなかった。唯一渋ってるのは、当の本人であるヒナだけで。


「で、でも……これ、本当にレアよ!? エリクサーみたいなものよ!? エリクサー首からぶら下げてるようなものよ!?」


「でもエリクサーじゃないし」


「そうだけど!!」


『草』

『まぁヒナちゃんが適任やね』

『あの高性能なスキルを無限に使えたらもう最強よ』

『加入一日目にして弱点克服か……』

『戦闘の度に敵の弱点教えてくれるナビが俺のパーティにも欲しいよ』


 コメントもヒナ以外はありえないだろうという雰囲気になっていた。でも本人はまだビビっているようで……それならと、僕はこんな提案も出してみて。


「んー、じゃあ売りに出してみるか? そんなにレアなら高く売れるだろうけど……」


「そっ、それは……!! 絶対ダメよ! これを他の人に渡すなんて……!」


 そこで初めてヒナは、そのペンダントをギュッと手の中に包みこんだ。まぁレアなアイテムを使いたいって気持ちと、自分なんかが使っていいのかって気持ちで葛藤しているのだろう。僕もいきなり最高級の剣とか貰っても、ちょっとビビるし。


 ……まぁエリクサー渡されたら、即座に持って帰るけどな!! 


 それでるーたんも、売るくらいならヒナに装備してもらいたいと思ってるようで。


「うん、だったらヒナちゃんが装備するべきじゃないかな。売ったら多分数百万はするだろうけど、他の人に渡るくらいならヒナちゃんが使ったほうが……」


「えっ、数百万で売れるの?」


「……慎也お兄ちゃん?」


『あ』

『あっ』

『草』

『揺らいでて草』

『それくらいレアだからねぇ……』

『出す人はもっと出すよ』


 高いだろうとは思ってたけど、まさかそんなに価値があるとは…………正直ちょっとだけ揺らいだ。でもまぁ、お金よりもヒナの魔力が増える方がきっと僕らの助けになるはず……エリクサーが見つかる可能性だってきっと高まるはずだ。


「…………でも、それでもヒナに装備させるべきだ」


 その言葉に、二人は安堵の表情を見せて。


「うん! 流石慎也お兄ちゃんだよ! ……すっごい間あったけど」


「いや、だってるーたんが数百万とか言うから…………まぁとにかく、これはヒナの物だ。大事に使ってくれ」


「……分かった。ありがとね、慎也」


 ヒナもその間に決心したのだろう。お礼を口にしつつ、ヒナは自分の首にペンダントを掛けた。何も特別なエフェクトとかは出なかったが、確かにその効力はヒナだけ実感しているようで……。


「……す、すごい……! 力がみなぎる……今なら何でも出来る気がするわ!!」


「じゃあヒナちゃん! この宝箱全部回収してみて!」


「ええ、任せなさい! 『エンドレスポーチ』!」


 そしてヒナは四次元ポケットもびっくりの収集スキルで、落ちている宝箱やドロップアイテムを一気に集めていった……おお、すげぇ。ヒナ一人いれば、ドロップアイテムも全部持って帰れるんじゃないか?


『うおおおおおおおおおおおおおお!!!!』

『めっちゃ吸い込むなww』

『オバキュームかな?』

『これでお金持ちや!!!!』

『ヒナちゃんに家の掃除して欲しいンゴねぇ……』

『多分お前が真っ先に収納されるぞ』

『草』


 そして回収し終わったヒナは満足げに、次の指示を要求して。


「次は何すればいいかしら!」


「途端に元気になったな……うん、じゃあもうここは制覇したっぽいし。僕らを入口まで送ってくれないか?」


「分かったわ! はあっ! 『エスケープ・ワープ』!」


 ヒナがそのワープを唱えた瞬間、僕らは光に包まれて……次に目を開いた時には、僕らはダンジョンの入口の前に立っていたのだった。

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