第14話 慎也にぃ辛辣で草

「えっ、どういうこと……!?」


「この隠し通路も罠の一つだったんだよ。数々の罠を乗り越えた先にご褒美がある……と思いきや、それすらも罠だったってこと。もしかしてここに閉じ込められて、死んだ探索者もいるんじゃないか?」


「えっ……そ、そんな恐ろしいこと言わないでよぉ!!」


『こわ』

『ええ……』

『罠を乗り越えた先には罠があった!!!』

『うーん、紛うことなきクソダンジョン』

『クソ過ぎるwww』

『このダンジョン性格悪すぎだろwww』

『殺意が高すぎる』

『普通にヤバイんじゃないか?』


「うっ、うわーん!! 出してよ! ここから出してよぉ!!」


 そしてヒナは喚きながら鉄格子を揺らす。見たところ鉄格子は特殊な結界が張られてるようで、さっきのような力技では壊せそうになかった。


 で、そんな喚いてるヒナとは対照的に、るーたんは余裕そうに宝箱を抱えながら。


「まーまー落ち着いてヒナちゃん、私はワープスキル持ってるから! この宝箱持って地上にワープすれば何も問題ないよ…………ふっ! …………あれ?」


「……るーたん?」


『あ』

『あっ』

『あっ……(察し)』

『えー、出られませんw』

『ダンジョン生活、一日目開始──』

『すみません、サバイバル配信会場はここですか?』


 るーたんは、焦ったように何度もスキルを発動させようとするが、全く使えずにいた。どうやらワープ系のスキルが使用出来なくなってらしい……一応僕も試してみたが、どうやら移動系のスキルのみ使えなくなっているみたいだ。


 それでも、るーたんは諦めずに移動スキルを使おうと奮闘していて……。


「ふっ! ふぬぅん!!! 『エスケープ・ワープ!!』『アルティメット・ワープ!!』……え、えーと、後は……『リレミト!!』んっ、『トラエスト!!!』」


「ねぇだろ」


『草』

『草』

『ゲームの技とごっちゃになってるンゴ』

『閉じ込められちゃたねぇ……w』 

『一生ここで過ごすのか』

『ふーん、えっちじゃん……』

『ダンジョンサバイバルチャンネルに変えよう』


「…………使えない?」


 やっと事実を受け入れたるーたんは、ガシャンと宝箱を地面に落とす。そんな絶望してる彼女を見てか、ヒナは更にパニックになって。


「あ、アタシ、こんなとこで一生過ごすのイヤよ!!?」


「……いいから落ち着け。ワープが使えないってことは、使えないようにした元凶がいるはず。そいつを潰せばここから出られるはずだ」


 たまに特定のスキルを使えないようにしてくる敵がいることを僕は知っていたので、ヒナを落ち着かせるようにそう言う……今回もきっと、スキルを縛ってくる系のボスモンスターの仕業だろう。


 その可能性に、るーたんも気づいたようで。


「あっ、なるほど。確かにそうだね。ヒナちゃん、敵の捜索お願いしてもいい?」


「う、うん。わかったわ……『エネミーサーチ!』」


 ヒナにスキルを発動するようお願いをした。するとヒナの開いたマップの一本道の先に、なにやら大きな反応が見えて。


「うん、確かにこの先に、強力な反応が一つあるわ。慎也達なら造作もなさそうだけど……何か嫌な予感がするわね」


「僕もそう思う。こんな人間を騙そうとする罠を仕掛けるモンスターなんて、初めて見るし。何かヤバイことやってきそうだ」


「でも誰も知らないボスを配信で見せられるなんて、すごいことじゃない!? 動画にしたら、きっと急上昇一位取れるよ!」


「るーたんはいつでも配信のことを考えてるんだなぁ……」


「えへへ」


「褒めてないよ」


『草』

『草』

『草』

『慎也にぃ辛辣で草』

『まぁ新種のモンスターの動画は注目されるからなw』


 で、そんな感じで進んでいくと……僕らは道の最奥までたどり着いた。そこには長い毒槍のようなものを持った、紫色の鎧を纏ったモンスターが玉座に座っていて……体長は2メートルほどだろうか。まぁボスにしては小さい方だな。


「元凶はこいつっぽいな……初めて見た」


「私も。硬そうだけど、慎也お兄ちゃんならワンパンいけるいける!」


「まぁ、やるだけやってみるけど」


 言いつつ、僕は剣を取り出して電撃を込める。鎧のモンスターも立ち上がり、構えながら僕らの様子を窺っていた。そんな余裕あるのか? まぁ何にせよ、力を込める時間をくれるのならありがたいが……。


「……待って!!」


 突如、ヒナの大きな声が。振り向くと、彼女は震えながら僕らにこう伝えてきて。


「こ……この敵、全ての属性の攻撃無効なんだけど……」


「ええ……」


「ぜっ、全部!!?」

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