第10話 どんぶらしてるがいいわ!

 そしてそのまま僕らは、近くにあった公園に移動して……そこで配信を開始したるーたんは、視聴者のみんなに新たに加わった仲間を紹介するのだった。


「やっほー、みんなこんるーたん! 今日は新しい仲間が加わったから、紹介配信をするよー!」


 るーたんはドローンカメラに向かって言いつつ、ホログラフを展開してコメントを空中に表示させる……ああ、それダンジョンじゃなくても使えるんだ。


『きちゃああああああああああ!!』

『こんるーたん』

『こんるー』

『本当にナビ来たのか!!??』

『嘘はよくないよるーたん……』

『どうせメガネかけた慎也にぃが「新しいナビです」って来るだけだよ』

『それは草』

『ありえそうwww』


 そんなコメントを横目に見つつ……僕は配信に乗らないよう小さな声で、隅っこの方にいるヒナに話しかけた。


「ヒナ、なんか凄い震えてるけど大丈夫か?」


「……えっ!? だっ、だだ、大丈夫よ! 別に緊張なんてしてないんだから!」


「してるんだな」


 ヒナは一目で分かるくらい、顔を赤くして身体を震わせていた。まぁ、るーたんは登録者100万人という視聴者を抱えてるし、いきなりそんなところに出演するのは緊張するものなのだろう……僕が全く緊張しないのは、未だにそんな大勢に見られてる感覚がないからだろうなぁ。


「よーし、じゃあ早速紹介するよ! ナビ、こっちおいで!」


 そしてるーたんは手招きして、彼女をドローンカメラの前に呼ぶ。ヒナは不安そうに僕を見るが……「大丈夫だ」と僕が頷くのを見るなり、彼女も頷き返して……犬のようにドローンカメラの前まで駆けていくのだった。


 そんな彼女の姿をカメラが捉えると、コメント欄はざわつきを見せて。


『え?』

『小学生?』

『公園で遊んでる子映った?』

『まさか……この子がナビ?』

『んなわけwwww……ないよね?』

『ロリっ子きたあああああああああああああ!!!!!』

『ドッキリか……?』


「はい、じゃあ自己紹介どうぞ!」


「え、えっと……あ、あたしは吹春ヒナよ! ナビ系のスキルは基本全部持ってて、二人の役に立つ自信はあるわ! だから……よっ、よろしく頼むわ!」


『かわいい』

『ええええええマジだったの!?』

『うそだろwwww』

『ホントに全部使えるのか……?』

『心配しかない』

『あの二人についていけるとは到底思えないが……』


 どうやら本当に優秀なナビなのか訝しんでる人も多かったので……僕もカメラに映って、彼女を信頼しても良い理由を視聴者に説明していった。


「ああ。一応探索者カードってやつ見たから、ヒナの実力は間違いないと思うぞ。まぁ偽造してなければの話だけど……」


「そんなことするわけないじゃない!! あたしだってプライドあるんだから!」


「そっか。……まぁまだ、僕も3/4くらいは疑ってるんだけど」


『草』

『かわいそう』

『お前は信じてやれよww』

『半分以上疑ってて草』

『どっちにしても面白い展開だけどなw』


 まぁこれでひとまずは信用してもらえただろう……でも僕に疑われてると言われたのが気に入らなかったのか、ヒナはプイっとそっぽを向いて。


「ふーんだ! 慎也なんかキライ!」


「呼び捨てかい……」


 まさか13のガキンチョに呼び捨てされるとは思わなかった。まぁ『お兄ちゃん』なんて甘ったるしく呼んでくるよりは、遥かにマシだからいいんだけど……それでるーたんは、その光景を微笑ましそうに眺めて。


「まぁ私はヒナちゃんのこと疑ってないけど、ナビの実力を確かめに、後でダンジョン潜ってみようと思ってるよ! どんなことが出来るか知れたら、私達と連携も取りやすいだろうし、高難易度ダンジョンにも挑めるかもしれないからね!」


「……え、今日行くの?」


 予想外の発言に、僕はるーたんに視線を向ける……すると彼女は「当然でしょ」とでも言いたげに頷いて。


「そりゃ、新メンバー紹介だけじゃ終われないでしょー。ヒナちゃんもいいよね?」


「もちろんよ! アタシの力、見せてあげるわ!」


「マジかよ……どこに行くつもりだ?」


 僕がそう聞くと、るーたんはスマホで周辺のダンジョンを検索しながら……。


「そうだねー。じゃあこの近くにある『ウノダンジョン』に行ってみよ!」


「ええ……? あそこトラップがめちゃくちゃある割に、全然アイテム落ちてないぞ。敵も無駄に多いし……」


 昔、僕もそこは探索したことがあるが、トラップだらけで探索するのも一苦労だったのを覚えている。全くアイテムも無かったし……だから行く意味ないと思ったんだけど……。


「だからこそだよ。あそこならヒナちゃんの実力が発揮されるんじゃない? 慎也お兄ちゃんが見つけられなかったものも、見つけてくれるかもしれないし」


「なるほど……」


 確かにるーたんの言うことも一理あった。ナビがいれば、僕が見落としていたものも見つけてくれるかもしれない……エリクサーとか、エリクサーとか。


「分かった。じゃあヒナに案内してもらおう」


 それを聞いたヒナは嬉しそうに、誇らしげに胸を叩いて。


「任せなさい! 大船に乗った気持ちでどんぶらとしてるがいいわ!」


「その擬音、現代で使う人いるんだ」


『草』

『草』

『かわいい』

『ヒナちゃんもいいキャラしてるw』

『遂に癒やし枠が出来たな!』

『は? 慎也にぃがいるんだが?』

『癒やし枠は慎也にぃだってはっきりわかんだね』

『るーたんに仲間が増えて俺、嬉しいよ』

『慎也お兄ちゃんの戦闘が早く見たいわ! 早く見せてちょうだい!』

『マダムもいます』

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