第34話 エピローグ1
王宮からは、帰りも王家の馬車を出してくれた。
王様と一緒に晩餐をして狩猟小屋に帰り着く。
狩猟小屋は、確かに古い石造だが、さすが貴族の持ち物で、泊まる時のための客室は数室あった。ただ、使われなくなってからは、非常用の1室のみ整ったベッドがある。
他には、井戸も、煮炊きする設備も、シャワーもあり、住む分には問題なさそうな建物だった。
「思ったより良さげじゃない?」
なぜか無口な浩輔に言ってみるが、返事がない。
昨日、目覚めると何故か裸で立派なベッドに寝ていて、隣には裸の!浩輔がいた。
驚いたけど、時々浮上した意識で、枯渇とか、魔力注入とか聞こえていたし、何やら浩輔が一生懸命やっていた記憶も…少しはあった。
だから冷静に、神妙な浩輔の説明を聞き、呼ばれたレスター先生にも太鼓判を貰って、安心した。
決戦の日の戦いは、アルバータとその仲間が勝利した。復讐を果たせたし、これでアルバータが夜魘される原因も取り除けただろう。
その敵だった人が、浩輔のこちらの世界の父親だったわけだけど、俺も浩輔も幼かった頃に、その人に酷い目に合わされているし、悪い人だったようだから捕まって良かったと思う。
管理人さんの美味しいご飯を食べてまた寝て、そして今日王宮に行ってきた。
だから俺は、浩輔との2人きりが何となく気恥ずかしい。
「ご飯とか、自分達で作らなきゃならないんだよ。ガスとかIHとかないんだよ。大丈夫?」
「大丈夫だって。俺ってば火も起こせるし、凍らせれるし、灯りも魔法でつけられるんだぜ」
親のことは関係ないと言うが、やはり浩輔は口数が少なく、モジモジしてる。何だ?
「ベッドが1つしかないんだけど、それも大丈夫か」
下を向いて小さい声で言う。何だそんな事か。
「俺は平気だったけど、浩輔が嫌ならしょうがないな。じゃ、浩輔は床に藁でも敷いて寝れば?」
からかい甲斐のある浩輔だ。
「嫌だよ。じゃ一緒に寝るって事だね」
撤回されたら敵わないとでも思っているのか、慌てている。
本当に浩輔といると楽しい。
夕方暗くなり点けていた灯りを、就寝用の明るさに魔法で変える。
この世界の気候は温暖で、四季はあるけど日本程はっきりしていない。年中過ごしやすいらしく、この季節もクーラーいらずだ。
「浩輔、奥な、詰めて」
先にベッドに入っていた浩輔が、奥に移動しそのまま壁を向いている。
「おやすみ」
浩輔の寝ていた温もりが残っている場所に入り、声をかけると静寂が訪れた。
ギシギシ ギシギシ
「眠れないなら、話でもするか?」
仰向けになっていた俺は、そう、浩輔に向かって話しかける。
浩輔が、身体ごとこっちを向いた。
「眠れるわけないじゃん。好きな人と2きりで同じベッドだよ」
俺は笑みがこぼれる。
「ははっ。初めて浩輔に好きって言われた」
「じゃ、カズマはどうなの。死ぬなら俺のそばでって熱烈な告白みたいだけど、違うよね?好きって聞いてないんだけど」
真剣な表情で整った顔で俺を見つめる浩輔に、胸が高鳴る。整った顔立ちとか、俺を好きだと訴える目とか、好きって言って欲しくて困っている眉毛とか。
前は何とも思っていなかったはずなのに、浩輔の顔を見ているだけでドキドキするようになってしまった。
好きなんだろうな。性格もひっくるめて。友情も愛情も全部含めて。
俺を追いかけてきてくれる所も、怪我をしながらも俺を優先してくれる所も。
じゃあ、言わないとな俺も。
「…好きだよ俺も」
ちゃんと浩輔の顔を見ながら、俺の気持ちを伝えた。
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