第27話 立て直し
カズマはフレデリックの馬に同乗させることにし、アルバータは、馬を飛ばしてザガール邸に戻る。
ザガール邸に残っていた仲間から1人先に報告を受けるためだ。
「荷馬車が準備されや荷物や子供が運び入れられ、もう間もなく出立しそうな配列となっています。そして、つい先ほど1台豪奢な馬車が屋敷に入り合流しました。」
やはりそうか。合流したのはギュドスフォー本人の乗った馬車だな。
となると、予定していた荷物の入れ替えはできない。どこか休憩場所で停まらない限り子供達を馬車から下ろすことも難しい。
こうなっては、荷馬車の後をついて行き、引き渡しの際を狙って捕らえるしか方法がない。
王へ、先だっての報告は間違いだったと知らせ、少しでも手勢を加勢してもらえないかと頭を下げるしかないだろう。
そんなことは何てことはないが、王がどこまで手を回してくれるかはわからない。
それでもやるしかないんだ。
急いで手配を終えると、先ほどの残っていた見張りがもう一度報告があると言ってきた。
「公爵、これは関係ないかもしれませんが」
「何だ。どんな些細なことでも良い、報告を。」
「公爵がギュドスフォー別邸に向かわれた直後のことです。
前夜に屋敷をうろついていた若い男が、その時は誰もいなかった屋敷で、どこかから現れたザガールの手の者に捕らえられていました」
カズマと向き合っていたあの男か。アルバータはこのことをカズマに知らせるか、一瞬考える込む。思考を遮って、仲間が更に続ける。
「そいつも縛られて馬車に乗せられていましたので間違いありません」
アルバータが、王への親書を急ぎで出した後すぐ、フレデリックとカズマ以外の仲間がザガール邸へ戻ってきた。
「急ぎ馬を取り替えろ。奴らはもうすぐ出立だ。後手に回ってしまったが、奴らが出立したら後を追うぞ。ここからは作戦変更となる。引き渡しの際を捕らえることになる。次は力技のみの戦いだ。剣の準備も抜かりなくな」
「はい。わかりました」
返事と敬礼と共に、到着したばかりの仲間が慌ただしく動き出す。馬の調達をする者、見張りの交代をする者と、皆忙しく走り回っている。
自分がもっと早く気づいていれば。仲間たちには、自分の判断一つで大変な思いをさせてしまった。
作戦以外のことを考える余裕はないはずだったのに……指揮官として痛感したアルバータは、自分の不甲斐なさに押しつぶされそうになる。
だが戦いはまだ残っている。今は全力で対処せねばならないと気を引き締めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます