第25話 ギュドスフォー別邸
日付けも変わり計画当日となっている。
交代で休んだ仲間たちを前に、アルバータとフレデリックが計画の最終段階を説明する。
「共謀するザガール家の屋敷には、子供達と隣国への物資やギュドスフォーの一味は見当たらなかった。
よって作戦場所は、ギュドスフォー家の郊外にある別邸となる」
アルバータが、巻き跡がつき端の丸まった大きな地図を広げ、指を指しながら口を開くと、フレデリックが続く。
「ギュドスフォーの別邸は、別の見張りが探っている所です。これから先発の仲間と合流し作戦開始となりますが、何せ警備が厳重な上に、探査妨害の魔法が使われていて、子供達が別邸のどこに捕らわれているのか、まだわかっていません。またギュドスフォー本人の行方がはっきりしていないので、必ず2人1組みで行動すること」
「魔法は俺が無効化できるけど」
カズマが口を挟む。
「俺は誰と行動すればいい?」
「カズマは私から離れるな。必ず守る」
アルバータが一人一人に役割を割り振り、最後に仲間たちの目を見ながら言った。
「皆、今夜でギュドスフォーの悪事を断たねば、この国に未来はない。頼んだぞ」
馬車と馬にそれぞれ分かれ、ギュドスフォーの別邸へ向かった。
カズマは、アルバータの乗る馬の前に当たり前のように乗せられた。
ギュドスフォーの別邸は王都の郊外にあり、到着は昼近くだった。ギュドスフォー本邸からから見て、当初疑われていたデュラムナリク国とは反対の、隣国バリュース国に近い地域にある。
以前は側室に与えられていた屋敷だったが、最近は住まう者がなく管理人が時々訪れる程度だったという。
アルバータとカズマの乗った馬が皆より先に近くの隠れ家に着き、隠れ家の前で、馬にのったまま、アルバータがカズマに尋ねる。
「ここから、探査妨害を無効化できそうか?」
屋敷間が王都よりも広いため、隠れ家と探査妨害をかけられた屋敷には少し距離がある。カズマは試しに一度目を瞑って探ってみた。
「無理みたい。もう少し近づきたいな」
「わかった」
アルバータが後から隠れ家に到着したフレデリックに伝える。
「カズマともう少し近くから術をかける。妨害が解けたら探っておいてくれ」
アルバータは器用に馬を操り、目立たぬよう緩い駆け足で走らせた。
「ここなら出来そう」
馬を道脇の木の影になるよう留め、カズマが探索妨害を解除するべく集中するのを、馬の後ろでカズマを支えながら見守る。
瞼を閉じ祈るかのようなカズマの顔を、横から覗き込んだアルバータはたまらなくなった。
愛しいと感じている。誰にも取られたくないと思った時、ザガールの屋敷で見たあの男の事が頭をよぎる。
若く、整っているが野生的な魅力がある男だった。カズマと何があるんだ?
やがて目を開けたカズマが、横からアルバータの顔が自分を覗き込んでいるのに気づき、馬から落ちそうになる。
「あーびっくりした。何だよアルバータ様。解除できたよ」
アルバータは、カズマがやり切ることは微塵も疑っていなかった。作戦の真っ只中にいる今、計画以外のことに心を奪われている自分が信じられない。だが伝えずにはいられなかった。
「こんな時に何だが、カズマ」
アルバータは、心を込めて告げる。
「私との事を真剣に考えてくれないか」
「え?」
カズマが意味を分かりかねているようなので、噛み砕いて言う。
「好きだ。この一件が終わったら結婚しよう。考えておいてくれ」
カズマは、突然の馬上のプロポーズに固まってしまっている。
そんな初々しい仕草まで可愛らしい。
アルバータは馬に合図をし、また駆け足でギュドスフォー別宅近くの隠れ家まで戻って行った。
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