第23話 接触
アルバータの仲間が探っているザガール男爵の屋敷の庭の一角で、黒い人影がギュドスフォーの手下と揉みあっている。
浩輔が潜んでいた森の小屋に、どうしてわかったのか父からの使いが来た。
「父君が、お会いするとのことです。一緒にいらしてください」
使いは、慇懃無礼な態度で浩輔に言う。
今更、父に会う気など全くなかった。今となっては父とも思っていない。何と答えようか逡巡する浩輔に、使いは重ねて言った。
「重大な話があるとのことです。ルーカス様が来られないなら、別の方に代わりに来てもらうことになります」
何かを匂わせたその言い方は、自分が行かなければ自分の大切な人に何があるかわからないぞ、との脅しに他ならない。
自分にとっての大切な人は1人しかいない。父がそれを知っているはずがない、と思ってはいるが。
万が一、万が一にもカズマに何かあっては後悔のしようもない。
浩輔は、使いの後に続き馬車に乗り込み、ザガール男爵邸に来た。
だが、素直に父に会うつもりはない。
ザガール男爵の敷地内に入るや否や、浩輔は使いを物陰に連れ込み柔道の締め技で無力化した。
そのまま建物の壁沿いの芝生に寝転がせると、玄関を一瞥する。そちらには向かわず、なるべく静かに窓に近づいた。
ギュドスフォー領の森の中には狩猟小屋があり、狩猟小屋は隣国のデュラムナリクへの通り路にある。
その路を通る大事な献上品は、安全に運ぶ必要があった。当然森に見張りも置く。
ギュドスフォーは、その狩猟小屋に若い男が住みついているとの報告を受けた。
調べさせると、どうやらこの狩猟小屋を最後に幼い頃に行方不明になっていた息子のルーカスだというではないか。
ギュドスフォーは良いことを思いついたと、1人、口の片端を歪ませた。
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