第10話 計画
「フレッド、昨日カズマが街で攫われかけた」
「えっ」
カズマの実験はまだ続いているが、魔道具課の部屋の外を警備の者で固め、2人は打ち合わせの為にアルバータの部屋へ移動した。
人払いはしてある。
属性の検査結果は歴然だが、魔力量の検査、しかも全属性分ともなると時間がかかる。
扉がしまった途端、アルバータは話し始めた。
フレデリックはアルバータの、普段から要点しか話さなかったり、自分の胸にだけ納めてしまう性格に、やきもきする事が多い。だが、今日カズマの無事な姿は自分の目でも確かめているので、驚きはしたが冷静に続きを促す。
「何とか隙をみて逃げ出したようで無事だったが、数件別の行方不明者の報告も上がっている。既に動き始めている可能性がある」
「偶然じゃないの?可愛い子をナンパとか」
フレデリックとて希望的観測だとわかってはいる。
カズマはこの世界ではない格好をして道で倒れていたのだ。すぐに保護したとはいえ、人の口に戸は立てられない。
「カズマについてはこれからも他言無用だ。特にラグハルト王に近い貴族にはな。王には折を見て私から話す」
「そうだね。警戒するに越したことはない。奴等に先を越されては計画も台無しだしね」
どこに敵の目があるかわからない場所では、身分の違いもあり態度も言葉遣いから違うが、2人きりでは気心の知れた同志である。
「いずれ貴族の間でも噂にはなるだろうがな。
何としても次のルアレーナの夜までには準備を抜かりなくしておきたい。」
王宮のアルバータに与えられた執務室にて、2人はこの数年、何度も人知れず策を練ってきた。
決行の日と決めていた今年のルアレーナの日があと僅かに迫る中、魔法属性の多い異世界人までもが現れたのだ。
カズマを巻き込むことにはまだ躊躇いがあり、本人に意思を確認してもいない。
断られてもやむを得ない。その時はこれまで通り自分たちだけで戦うつもりだ。
2人はその瞳に決意の炎を灯し、それぞれの支援者に使いを飛ばした。
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