第6話 アルバータの屋敷
アルバータは王城へは馬車通勤しているとのことで、便乗させてもらう。
何か考えている様子で、話しかけてもじっとこっちを見るだけで返事はくれない。
また言葉が通じなくなったのかと心配になった頃、到着したアルバータの自宅は王城に程近い立派なお屋敷だった。
玄関近くでアルバータから先に馬車から降りると、扉が歩調に合わせて自動で開いた。
エントランスではすでに、いかにもな執事やメイドが出迎え整列し一斉に頭を下げている。
「お帰りなさいませ」
アルバータは執事から挨拶をされながら、言いつける。
「クリス、新しい使用人だ。部屋を与え生活に必要な物を見繕ってやってくれ。常識を知らない奴だから教育はしっかり頼む」
こうして連れて来られた住み込みの使用人の部屋は、木製のベッドとベッドサイドテーブル、木製の衣装ケースがあるだけの質素な部屋だったが、窓もあり物が少ない所が元の世界の自室に近い。
清潔でプライベートが守られる空間にホッと息が付けた。
今は言葉も通じるようだし、馬車内でのアルバータの様子はいったい何だったんだろうと不思議に思う。無言であの綺麗な顔に見つめられるのは心臓に悪い。
案内してくれた執事のクリスからは、今晩はお疲れでしょうからゆっくり休んで、明日からはビシバシしごきますと言い渡されている。
クリスは白髪混じりのダークグレーの豊かな頭髪と髭を蓄え、執事服がビシッと決まった年齢不詳の紳士だ。
どこか可愛がってくれた母方の祖父に面差しが似ていて親しみを感じる。
クリスから渡されたトレイの夕食は品数は少ないが味は良く、育ち盛りのカズマにも量も充分だった。
着替えも何着か渡され、転生した際に囲んでいた人々が着用していた物に近い形だったから、庶民の服装なんだろう。
慣れないながらも寝巻きと思われる服に着替え、早々にベッドに入って何も考えずぐっすり眠った。
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