レアルタにて
第7話
「ついたぞ。」
レアルタはそれなりに大きい都市だ。まあ、世界一ではないし東京の大きさには負けるが。こんな大きい都市の討伐依頼が停滞していたらさぞ大変だろう。
ちなみに、討伐依頼を片付ける生き物の大半は冒険者だ。在住の戦士が片付けることもあるにはあるが、大半はぽっと出の冒険者が片付けているのが現状だ。これだけ大きい都市なら冒険者もたくさん来る気がするが・・・・。まずは宿屋へチェックインを済ませることにした。
都市に足を踏み入れてみるとパレードのようなことが行われていて、宿屋の主人に聞いてみた。
「すみません、今何かイベントでもあるんですか?」
「イベントも何も・・・・アルベルジェッティ公爵家のご令嬢が戻ってくるというお触れがありましてな、パレードをやっているんですよ。」
「戻ってくるということは、他の町にいたのか?」
「そうらしいですぞ。都市を出るのはわかっていたそうだけど、戻ってくるのが急で急いで準備したらしいですぞ。」
アルベルジェッティという言葉はどこかで聞いたことがある。どこだったっけ・・・・
「念のため、戻ってくる方の名前を聞いてもいいか?」
「気になるのか?確か、アドリア・アルベルジェッティという名前だったかな。帰ってくる理由は”殿下とお話をするため”だそうだぞ。」
「・・・・やっぱりか。」
「なんだ?」
「大将、ありがとうございます。シングルの部屋を二部屋借りてもいいですか?」
「ダブルじゃないのか?」
「いいえ、シングルを二部屋お願いします。」
強調して言ったら相手が口を出してきた。
「悪いけど、シングルの部屋って一部屋しか空いてないんだ。何しろお一人様が多くてな。」
「・・・・じゃあ、ツインの部屋でお願いします。そして、シングルの部屋が二部屋分空くようになったら変えますので、すぐに言ってください。」
「・・・・わかった。」
「私たちはこれからどうしますか?」
「一件ぐらいなら討伐依頼を受けられそうだから、受けるぞ。」
「はい!」
「ただし過保護はなしで。」
「・・・・はい。」
なんか返事のトーンが違った気がするが、とりあえず討伐依頼を受けることにした。
「討伐完了。過保護すぎるぞ。」
「・・・・わかりました。」
過保護すぎるヒーリング・・・・回復を受けながら、サクッと討伐依頼を完了させた。
「戻るぞ。」
とりあえず討伐依頼完了の報告をするために戻ることにした。俺たちは静かに歩き始める。
「・・・・私のどこが過保護なの?」
「回復魔法のかけすぎだ。前衛だから多少の怪我は許容しないとタヴァーノのMPが持たないぞ。」
「私には底なしのMPがあってこれぐらいのヒーリングなら全然大丈夫なの!」
「短い距離ですぐ帰れる状態だからそう言ってられるかもしれないが、長距離歩かないと村すらない場所だってあるんだぞ。温存できるならしたほうがいい。それにMPが減るとだんだん回復量も減るし調子も悪くなる。まさか、MPが減ってる状態を体感したことはないとは言わせないぞ?」
「・・・・」
ようやく黙ったか、と思ったがこの少女はとんでもないことを言った。
「私がやりたいの。ヒーリング。」
「は?」
好んでヒーリングをやっている生き物なんて見たことがない。
「どういうことだ?」
「ずっと、生まれ変わった優のためにヒーリングを練習していたの。優に回復魔法をかけて助けてあげたいって、ずっと思ってて。だから、私の16年分オスカルにヒーリングしたいの。」
迷惑がすぎる。そんな想いを押し付けられても重いという感想しか出てこない。そもそもこっちは復讐のために仲間にしただけなのに。
「だから、回復魔法をかけさせて?」
「だったら、もう少し効率というものを考えろ。」
「へ?」
「もっと傷が多い状態でもヒーリングはできるだろ。」
「・・・・」
「ほら、歩くぞ。」
「・・・・はい。」
そう思って前を見たら、熊の形をしたモンスターが数
この世界では”どの形の何位の種類”でモンスターを表す。このモンスターの場合なら”熊形の2位種”だ。そして、何位種というのは”その種類で何番目に強いか”ということで、今のモンスターなら”熊の形の中では2番目に強い”ということだ。2位種ならギリギリこの周辺に出てくる範囲か。
「戦闘にかかるぞ。」
「はい!」
俺はモンスターに向かって走った。タヴァーノも俺に回復魔法が届く範囲まで近づくのだろう。近づいてモンスターに剣で一回切りつけた。モンスターには効いてなさそうだ。
そうだった、熊形2位種は物理に強く魔法に弱い。ということは物理攻撃を使うと時間がかかる。でも、こちらには攻撃魔法を使える生き物はいない。タヴァーノが使えるかもしれないが、ここ数日で攻撃魔法で攻撃をしているところは見たことない。ということは使えないだろう。さて、どうしたものか・・・・。
一応少しでも弱らせた方がいいかと攻撃を続ける。やっぱり攻撃はあまり通らないが、少しづつでも弱っていってる気がする。でも、この方法では時間がかかる。レアルタを見捨てて逃げるか、このまま攻撃を続けて援護が来るのを待つか。さて、どうする?
「ちょっとまってて?」
「なんだ?」
「そのまま攻撃を続けて?間接的になら魔法使えるかもしれないから!」
間接的ってなんだ?と発言したかったが、モンスターにきっちり反撃を食らって口を閉ざす。それより、間接的にと言ったら普通、召喚魔法を使えるってことだ。でも、そんな大きなアドバンテージがあるなら普通は紹介所の登録のときに書くだろう。召喚魔法ではないマイナーな魔法なのか?それとも、登録のときにかけない事情があった?
そう思っていると、モンスターの背後から魔法が飛んできた。
「これが間接的な魔法か?」
「いや、それ私じゃない!」
「はぁ?」
じゃあ、誰かが援護に来たのか?こんなに早く?
「助けに来たわ!」
「え!?」
そこには金髪のよく知っている幼馴染がいた。
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