第8話

「助けに来たわ!」

「え!?」

 そこにいたのは、金髪の幼馴染だった。今は貴族が着るような白い服の上に灰色のローブをまとっており、慌てて支度した感があった。

「ディアクマ!」

 目の前にいたモンスターが凍っていく。そのままモンスターは絶命した。

「・・・・アドリア?」

 そう、討伐依頼を受けたときには前にいた町にいたはずのアドリアが、今目の前にいたのである。まさか、追いかけたとかではないよな?アドリアなら十分あり得る話だが、”アドリア・アルベルジェッティが町に来ている”という噂が俺より早く出回ってるのもおかしい話だ。・・・・そもそもアドリアは貴族なのか?

「どう?私の力も結構強いでしょ?」

「はいはい。で、なんでここにいるんだ?」

「ああ、あの二人で討伐依頼を頼みに来た日には招集がかかってたの。”お話がある”だって。なんかレアルタに来たときには私側にお話があるみたいになってたけど、別にいいわ。」

「別にそれも気になっていたんだが、なんでこの場所にいるんだ?ここは都市から外れているだろう。」

「え、ここにいるって聞いたから。」

「うんちょっと待て、全く同じルートを通ったのか?」

「うん、そうだよ?」

「ここは森だし、道なんてないぞ。」

「・・・・ごめんなさい、位置情報取得しました。」

「だと思いました。」

 ていうか、これ何回目だよ。数えきれないほどやらかしてるぞ。

「ひどいわね。」

「やらかした人がいうことじゃないと思うけどな。」

「ぐぬぬ」

 まあ、タヴァーノも前世で俺(女子高生)の学校の鞄にGPS忍ばせてたからな。ぐうの音も出ないよな。なんなの、俺って位置情報取得される運命なの?

「とりあえず帰って宿屋で話そう、な?」

「わかったわ!」

 ここでは(貴族令嬢には)危険なので、宿屋で話すことにした。


「アドリア、ここに泊まるのか?」

「え、いいの?」

「普通に考えて、公爵家の苗字を名乗る生き物がローブを着ているのはおかしいだろ。」

 そもそも貴族令嬢は魔法を使えないことが多い。魔法を使うのもかなり根気がいるし、物理方面の練習をするのと努力の量は大して変わらないからだ。

「その代わり、明日の討伐依頼に参加してもらうけどな。」

「それぐらいならお安い御用よ。」

「大将すみません、部屋を一部屋増やすことはできませんか?」

「お、一人増えたのか?残念だがな、一人で泊まる部屋は埋まっちまったんだよ。三人部屋が一部屋あいてるから、その部屋を使ってくれ。」

「そうか。わかった。」

 もうどうでもいい気がしたから了承した。そもそもやむを得ずとはいえ、異性と同じ部屋でお泊まりしようと思っていたのだし、二人とも気にするならこの時点で異議を申し立てているだろうから。

 とりあえず、部屋に入って荷物を降ろした。

「で、アドリアは公爵家出身なのか?」

「そうよ。元はアルベルジェッティ家の四女ね。生まれるのは遅かったけど、正妻から生まれた子だから今の後継ぎの次に立場が強いわ。まあ、そのことを思い知ったのは今日の話なんだけどね。」

「なんであの町・・・・ソグノにいたんだ?」

 ちなみにソグノは前にいた町で、俺の出身地である。

「5歳から10歳にかけて脱走を繰り返してたの。それで、”私は貴族になんかなりたくなかったの!”って叫んだ覚えがあるわ。そしたら、”お前は平民の生活をしてみろ!”って言われてソグノに左遷されたわ。」

 そういえば、最初に年齢聞いたとき10歳って言ってたっけ。そのとき俺は9歳だった気がする。

「じゃあ、なんでずっとソグノにいたんだ?」

「ああ、15歳になったら帰ってくる約束だったんだけどね、その、ソグノの生活が楽しすぎて約束をフルシカトしていたら、護衛にブチ切れられちゃって。レアルタに連絡とられて強制送還されちゃったってわけ。」

「めちゃくちゃお転婆じゃねーか!」

「うん、昔から自他共に認めるお転婆だよ~。」

「・・・・はあ。」

「ねえ、引かないでよ!」

「ねえねえ、アドリアちゃんって壁ぶち破ったりする人?」

「ああ、それもいいかもね。魔法で窓ガラスを溶かして脱走したことはあったよ。」

「魔法版ア○ーナかな?」

「まあまあ、あれはガチのお姫様だし、一人娘だから・・・・」

「その生き物はよく知らないけど、脱走するために魔法使い始めたぐらいだからね、私。」

「それで、屋敷で何を話したんだ?」

「ああ、フルシカトしたことに対する説教と、”嫁ぎ先を用意した”だそうよ。」

「そうか、がんばれ。」

「・・・・やけに冷たいわね。」

「は?」

 正直、それ以外にかけれる言葉はあったか?

「ピアチュの城下町にある家の侯爵令息だって。ただ、嫁ぎたくないのよ。」

「で、何が言いたいんだ?」

「ああ、単刀直入に言わないとわからないタイプだったわね。私をあなたたちの旅に連れて行ってください!」

「いやです。」

「落ち着け、タヴァーノの意見も聞くが俺も考えさせてくれ。」

 食い気味に拒否したタヴァーノは、また青色の炎を出しそうなほど嫉妬していた。

「だってあなたが加入すると後衛が多くなっちゃうじゃない。そうなるとオスカルの負担が増えてしまうし、何よりお貴族様がいるといろいろと大変だから。オスカルに飛び火が飛ぶ可能性があるでしょ?」

「貴女って本当にオスカル中心の考え方ね!もうちょっと他の人のことを考えないとオスカルに愛想をつかされるわよ?」

「はあ?だって炎で窓ガラス溶かしたときの迷惑を考えたことはないの!?」

「私はよ!」

「名前間違える人がいるようなパーティーには入らなくて結構でしょ?」

「私はパーティーにオスカルがいる限り絶対についていくわよ。」

「結局オスカル目当てじゃないの!この女狐!」

 うん、これはどういう状況だ?アドリアは結婚したくないからパーティーに入って逃げるってことじゃないのか?

 あと、俺はこの状況をどうやって片づければいいの?

「とりあえず、アドリアは仲間にする。」

「え!?」

「ありがとうね!」

「ただ、パーティーメンバーと他の人に迷惑はかけないように。あと、さすがに貴族の服を着ていたらバレるから、服に関しては動きやすいものを買いに行こう。」

「OK!」

「え、こんなやつのためにお金を使うの?」

「アドリアは”一度でも人に迷惑をかけたら追放される”ぐらいの気持ちでいてくれ。」

 まあ、実際は時と場合によると思うが。それに、脱走して行方不明になる時点ですでに迷惑をかけていると思う。

「あと、部屋はなるべく両方別の部屋にさせてくれ。今回は無理そうだからいいが。」

「え、私もダメ?」

「ダメだ。」

「わかった!」

「・・・・わかった。」

 なんかタヴァーノの諦めがやけにいいな。何か企んでいるのか、素直にあきらめたのか・・・・。

「じゃあ、明日、討伐依頼とかを受けに行きましょう!」

 そうだった。ここで討伐依頼を受けまくってお金を貯めるんだった。

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