第4話

「行くぞ。」

「はい!」

 訪れたのはとある宿屋の一室。扉を三回ロックする。

「入ってください。」

 そういわれたので扉を開けて入った。部屋の中には濡れ羽色の髪に濡れ羽色の瞳をした女性が二人いた。片方の女性は身長が低く、もう片方の女性は身長が高い。女性たちが着ているシンプルなワンピースといい、明らかに日本人の見た目をしていた。

 なんでここを訪れているかというと、師匠に対しての挨拶だ。

 独立するときには師匠に挨拶するというのは、異世界の文化だ。そして、俺の師匠は男性なので、この二人はタヴァーノの師匠だ。そして、今めちゃくちゃ緊張している。

 理由は、この二人が世界一の賢者様だからだ。姉はハンナ・イザード、妹はライラ・イザードという名前だ。

 それにしても、顔を見た瞬間から前世の記憶が鮮明になった気がする。最初に思い出したときも今も頭は痛くないけど。

「お姉ちゃんたち、こんにちは!」

「その人がオスカルさん?」

「え、噂?」

 どんな噂だよ。少し不気味な気持ちになってしまう。

「テクラさんね、ずっとオスカルさんが大好きだって、でも会う資格がないって、せめて謝って罪を償いたいって言ってたのよ、オスカルさん。」

「はあ。」

 ストーカーが悪いっていう自覚はあったのか。

「で、二人ともパーティーを組むの?」

「はい、そのつもりです。」

「そうなのね、お幸せにね。」

「タヴァーノさんと恋愛をするつもりは全くありません。」

「え、そうなの?」

「はい。」

「そっかぁ。もう友達以上恋人未満なのかと思ったわ!」

「それだけはありません。」

 俺は復讐の手段として仲間になるだけなのだから。

「・・・・お姉ちゃんたちはもうそろそろいなくなるの?」

「うん、そろそろ行かないといけないんだ。お姉ちゃんたちもすごく行きたくないんだけどね。」

「そっか・・・・」

「行く?」

「ああ、聞いてなかったの?私たちはね、異世界転移を繰り返しているの。」

「正確には”繰り返させられてる”かな。」

「あの女・・・・母親に魔法をかけられてね。そのときに仲間は絶対に殺されるから、そもそも仲間を作らないか、転移前に逃がすようにしているの。」

 やっぱり、強い人は相応の修羅場をくぐり抜けている。俺もそんな風に強くなりたいと思った。

「だから、テクラ。もう自立しなさい?」

「わかったわ!」

「賢者様、ありがとうございました。」

「うん、こちらこそ弟子の幸せな姿を見せてもらってありがとうね!」

「また会うことがあったらまた会いましょう。」

 そういって俺たちは部屋を退出した。


「お前、ついに旅立つのか。」

「はい、そのつもりです。」

「こんないいお嬢さんと旅立てるなんてな。幸せになれよ。」

「はい、じゃあ準備しに行きますね。」

「わかった、デートして来い。」

 なんか、師匠勘違いしてる?俺、タヴァーノを仲間にする理由は復讐のためなんだけど。彼女いない歴=年齢なんだし、女っ気とか今まで全然なかっただろ。

「タヴァーノ、準備するぞ。」

「わかりました。」

 準備にどれぐらいかかるかわからないが、ついに始まる冒険に心を躍らせていた。

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