第3話

「これとかどうですか?」

「あ、ああ、いいかもしれないな。」

 今は引き受ける討伐依頼を選んでいる。人助けとはいえ、自分の身の丈に合った討伐依頼を受けるというのは大事だ。自分の強さを正確に客観的に把握してそれに合わせた依頼を引き受けないと、簡単に死ぬような世界だからだ。

 そして、タヴァーノは俺のレベルに合わせた依頼を選んだ。正直怖いぐらいだ。結構補佐としても使えるタイプだな。それより自分の強さを完璧に熟知してることの怖さの方が上回るけど。いつ知ったんだよ、本当に。

「アドリア、この依頼を引き受けてもいいか?」

「はいはい、どうぞ。気を付けて行って来てね!ところで、今日は誰を連れてるの?」

「ヒーラーのテクラ・タヴァーノです。」

「へぇ、ヒーラーか・・・・タヴァーノさんはの何なの?」

「・・・・呼び捨てにするな。」

「別にいいじゃない。」

 いや、全然よくない。今からすごく優柔不断な復讐をしようとしてるし、タヴァーノから青い炎が今にも出てきそうな表情をしてるから。多分嫉妬だろうけど、生まれ変わっても未練あったのか。これは厄介だ。

「今世では今会ったばっかりですよ。」

「へえ、前世で会ったことがあるの?・・・・討伐依頼、行ってらっしゃい。いつか私も仲間にしてね。」

 文字で見たら普通に見えるかもしれないが、表情や声色は皮肉と嫉妬を含んだ声色だった。

 依頼の紹介所を出たあと、俺はタヴァーノに話しかけた。

「見苦しいところを見せてしまって申し訳ない。」

「・・・・別にいいよ。いいよ、別に。」

 なんか、すごい自分に言い聞かせるみたいな感じがするけど、これ大丈夫なの?

「あの人は誰?」

「幼馴染のアドリア・アルベルティってやつなんだけど、ちょっとヤンデレな一面があるんだよ・・・・。」

「・・・・彼女?」

 もしかして、さっき見せたものすごい嫉妬は彼女だと思ったからなの?

「俺は彼女いない歴=年齢だから違う。」

「そっかぁ!」

 あからさまに喜んでるけど、これって大丈夫なのか?ちなみに彼女いない歴=年齢なのは本当。まあ、5歳のころから15年間修業に没頭していたら彼女なんかできないと思う。

「それはともかく、討伐依頼に行こう。」

「はい!」


 深い森に包まれた現場に行くと、獣系のモンスターが待ち構えていた。どうやらあたりに他のモンスターも他の人もいないようだ。俺は走ってモンスターを切りつけた。すごい金切り声みたいなのがモンスターから聞こえたが、何度も聞いてきたので眉一つ動かさずに無視する。

「はっ」

 構えなおしてもう一度モンスターを切りつけた。モンスターのHPもそれなりに減っているし、あと2、3発食らったら討伐完了だろう。これぐらいのレベルの相手を選ぶのが結局無難だったりする。

 モンスターが近づいて右手の爪で攻撃してきているが、軽く身を引いてかわしたら、左手の爪で待ち構えていたように攻撃されて軽く怪我してしまった。それでも、HPも体力もそこまで減ってない軽傷なので、普通なら無視するぐらいの傷だ。

「大丈夫ですか!?」

「ああ、大丈b」

 言い終わる前に傷口に光が飛んでくる。それは明らかに回復魔法だった。それにしても、この程度で回復魔法を使うとは、何を考えてるんだ?過保護すぎる。

 回復魔法に気にせずモンスターに簡単にとどめを刺した。

「討伐成功」

 そういって俺は討伐成功の証としてモンスターの毛を抜いて持っていく。こいつの毛は上位回復薬の材料に必須だから売ればお金になるし、何より討伐したことを証明することになるからな。世の中には”討伐したってあなたの感想ですよね?嘘ついてる可能性もありますよね?証拠を持ってきてくださいよ”とか言って討伐依頼の報酬を払わない不届き者もいるからな。

「さあ、帰って休みましょう?怪我してしまったんだから。」

「いや、この程度の怪我など大したことない。討伐依頼の報酬をすぐにもらいに行こう。」

「・・・・わかったわ。」

 聞こえてきたのは言葉と違ってすごく納得してなさそうな声色だった。


「ありがとうな、これ報酬だよ!」

「おう、ありがとうな。」

「オスカル、立派になったな!強い冒険者になることを願ってるよ!」

「はいはい。」

 ちなみにこのおっちゃんは昔からここに討伐依頼を依頼して、おっちゃんの討伐依頼を師匠と共に受けまくっていたため、おっちゃんとは顔見知りだ。というより、ここの町の人たちみんなと顔見知りだったりする。

「タヴァーノ、あそこの併設カフェで話をしよう。今後のことについて。」

「は、はい!」

 最初に会ったときのカフェで話をすることにした。


「まず、タヴァーノをパーティーに入れる。それは俺の中で決まってる話だ。」

「はい!」

 すごく嬉しそうな表情と声色をしている。この後の地獄も知らずに。俺は表情や声色を全く変えずに淡々と続ける。

「そして、これ以上の仲間は必要ないと思う。なぜなら何人もいるほうがかえって邪魔になる状況も多々あるからだ。これからは状況に合わせて仲間を増やしたり減らしたりしようと思う。」

「そうですね、すごくいい考えだと思います!」

 表情と声色がこれ以上なく嬉しそうだ。どう頑張っても俺が振り向くことなどないのに。まあ、男女の二人旅というのは非常に恋愛関係になりやすい。生まれ変わっても未練があるならなおさら嬉しいだろう。

「だから、明日からお互いの師匠に挨拶と、この町を出る準備をする。いいな?」

「はい!」

 早くこの町を出て広い世界を見てみたいと思ったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る