『のろい』 中


 『そなたは、ピミカノ、末裔か?』


 『ぶっ?』


 とうてい、想定していなかった質問が来た。


 なんらかの妖怪が出ると、怪しい質問をぶつけてくるのは『エディプス』以降も当たり前にある。


 うまく答えられないと合格しないのは、入試と同じである。妖怪の場合は、食べられてしまったり殺されたりする。


 現代社会でも、まま、そうした理不尽なことは、あることだろう? なんらかの力や武器を持つ人が、よくやるから。弱いもの苛めである。


 ただし、時たまだが、試験官を越えるような力があり、まさに仰天させる回答をしたりする受験生がいる。


 フリードリヒ・グルダさんは、『ベートーヴェンのピアノ・ソナタなら全て暗記しています。どの曲のどこを指定してくれても良いです。』とか言って、その通りにできたらしい。しかも、試験官を唖然とさせるレベルでだ。そういうのは、希であろう。


 『ピミカ』は、その服装から推察するに、これが何者であろうが、『卑弥呼』の事であろう。


 しかしだ、源氏の子孫とか、平氏の子孫とか言う人はあるが、自分が卑弥呼の末裔かどうかなど、いまのところは、まず、解るわけはない。遺体が見つかり、遺伝子レベルでの解析や分析ができるようになったら分からないが、可能性は低そうである。


 卑弥呼さんが実在したかどうかさえ、いまだ明確ではない。


 さて、どう答えるべきか?


 しかし、ぼくに迷いはなかったのである。


 『知りません。はい。』


 と、回答したのだ。


 『良い答えである。では、そなたには、褒美として、のろいを授けよう。そなたは、1年の半分まで行かぬ間に死ぬであろう。』


 『はあ。じつは、ぼくは、病気で、お医者さんから、あと半年くらいの命だろうと、言われております。あなたは、正しい解答をしたのです。たぶん。』


 『なんと。』


 その美しい妖怪…….たぶん妖怪だろう………は、絶句した。

 

 『ここは、なかのおおえのみこ、どの、により築かれたが、その以前、すでに砦があった。築いたのは、わらしである。ここを、良く掘れば解るであろう。』


 『あなたは、どなた?』


 『覚えておらんわ。そなた、50年前の事を覚えておるか? しかし、何者かにより、密かに殺されたのは間違いないのだ。その恨みは果てしなく、三千年は続くであろう。その刺客は、ピミカノ子孫、とか名乗っておったのだ。』


 『それは、うそかもしれませんよ。』


 『恨みと言うもは、うそかまことかには、関わらぬのだ。うそは、いつしかまことに変わり、まことは、いつしか、うそに変わるので、ありむ。押して知れ! はははははははハハハハハハ、ハハハハ………』


 『あ、待って、お握りを差しあげます。』


 『おう。』


 妖怪は、にこりと微笑んで、消えた。


 消えたことをもって、妖怪と呼ぶことにしたわけだ。




     😤ナニカ?









 


 


 

 

 

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