『のろい』

やましん(テンパー)

『のろい』 上 (全3話)


 ぼくは、ある日、伝説の古代都市があったという噂のある『たちばち山』に入った。


 崖もあるし、暗くなると危ないから、余裕を見て、朝早く麓を出発しようとした。


 すると、宿のおかみさんが言うのである。


 『あそこには、おそろしい妖怪が出ますから、くれぐれも、ご用心ご用心。出会うと、半年以内に必ず死んで、しまうとか。もしも妖怪が出たら、このおにぎりをあげなさい。おにぎりが大好きとされますから。運が良ければ助かるとか。出なかったら、おにぎりは、あなたがどうぞ。』


 ぼくは、お礼を言って、山にわけいった。


 まあ、妖怪が出る訳もない。旅館の人が妖怪役をするのかしら、とか思ったりもしたが、どうやらそういう伝説があることは、ほんとみたいである。


 しかし、そうした言い伝えがあるということは、やはり、山中には危険な場所があるということだろうし、かつて、なんらかの理由で、住民の立ち入りを阻止しようとした、古い痕跡かもしれない。


       ⛰️


 一応、山道はあるが、それはもう、がたがただったのである。


 しかし、ナビを持ってきているし、方位磁石もあるし、携帯電話もトランシーバーもあるし、ラジオもある。地図もあるが、簡略すぎて、役に立つかどうかは分からない。


 それなりの服装にも、なっている。携帯食料や、飲み物もちゃんと用意してある。


 ツチノコさんは、まあたぶん、でないと思うが、カメラも2台あるうえに、動くものを瞬時に撮影対応できる、自動撮影装置付き最新型ヘルメットカメラも装着した。


 頂上付近には、謎の石積があることは分かっているが、これまであまり調査はされていない。いわゆる古代山城の一種かもしれないとは言われていたが、注目されたりはしていなかったのである。


 さて、お天気には恵まれたが、上にあがるほど、道は危なくなった。というより、ほぼ、無くなったのである。


 『甘くみたかなあ?』


 とも思ったが、2度とチャンスはないだろうから、とにかく前に進んだのだ。


 そうして、ついに、人工物らしきを見付けたのである。


 資料には見当たらないものだ。


 『やた。新発見か!』


 そこは、まだ、頂上ではなくて、そのやや手前あたりだろう。


 確かに、石積があるのだ。新しいものではなさそうだ。ただし、文字などは何もない。

 

 しかも、それは、さらに奥の方向にも続いている。


 深入りすると、迷子になりかねないだろう。


 ところが、そこに、突然に、出たのである。


 『わっ!』


 それは、本で見る、弥生時代あたりの、頭からすっぽりと身体をおおう、つまり、貫頭着みたいな服を着た、みめ麗しい女性であった。


 

     👘








 


 


 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る