番外「ある所長の夕方」
本業にすると大変な仕事
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この世界に足を踏み入れて12年くらいは経つ、多くの者を見て、多くのことを経験した。心を折られそうになったことも、血反吐を吐く死地も何度かは経験している。それでもこの仕事は辞めずに、所長の座を座っている。
「そういえば、もう夏休みが始まる頃なのか。」
ランドセルを背負って走る小学生を見ていると、悩みだらけの学生時代を思い出してしまう。理解者もいなかったあの頃、悩みがなかった日はなかった。
今悩みがないかと考えると、そうでもなかった。自分もまだ悩みを持つ数多い人間の1人である。
「妹と母が心配ということと、後継者が見つからないことが私の悩みだな。」
口から漏れ出した悩みごとを、これ以上深く掘らないように、小さく溜息を吐き出し、公園の椅子から腰を上げた。
汗を流す半袖の子供達を見て、暑くなっている夏を実感する。
季節が夏になっている中、自分の格好は決して涼しいとは言えない服装だが、一滴の汗も流さずにいられるのは手に持つこの傘のおかげだ。
前所長から受け取ったこの傘には何度助けられたのか。小さなことを数えたらキリがない。命の恩人と言っても過言ではない。
ありがとう、こちよ。
心の中で手中の彼女に感謝を述べ、服のポケットから携帯を取り出した。
今から行う仕事の内容の最終確認のために、開いたスマホで時間を見てみた。
丁度5時40分となっている、もうすぐ日が沈む夕方となる時間だ。自分が公園で1時間座っていたのも、この時間になるまで待っていたからである。
仕事のために、見つけなければいけない相手が出没しそうな時間帯は6時過ぎ。早めに準備して行動することが鉄則であるのがこの仕事、自分も今から公園から出て仕事をしないといけない。
「おじさんは何してんの?」
無邪気な子供の質問が聞こえた。
声の主を確認するために視線を動かすと、自分の右側に10歳くらいの男の子と女の子が自分を見つめて立っている。
さっきまで少し向こうで遊んでいた2人の子だ。チラチラ視線をこっち向けていたが、気になって話かけてきたのだろう。
「お仕事だ」
思わずに少し冷たい声で質問の返答をしてしまった。数年も冷たい人をやってきた自分には、急に明るい声なんてとても簡単に出せるものではない。
「そうなの?公園にいるのが仕事の人ってニートじゃないの?」
子供の心に刺さる疑問に驚く心を抑える。
確かに、公園の椅子に一時間も座っているのを仕事と名乗ったら、そう思われる。それでも、驚いてしまう疑問だ。
公園にいる見知らぬ大人の男性に声かけるこの男の子は、予想以上に勇気があるようだ。
そんなことを考えながら、彼の質問に答えるため、再び口を開く。
「少し公園で待っていただけだ、これからが仕事だ」
「ニートじゃないなら、おじさんは何している人なの?」
「たいきくん、ニートは失礼だよ」
男の子から鋭い質問でダメージを負いそうになったが、初めて口を開いた大人しそうな女の子が、我慢できずに焦った様子で、たいきと呼ばれる男の子に注意した。
どうやらこの女の子はちゃんとしているようだ。
「夏の公園で変な傘を持ってる人いたら、気になっちゃうじゃん。」
「知らない人に失礼したら、ダメだよ。そういうの直さないから怒られるんでしょ」
「気にすんなよー、めんどくさいな」
2人の子供が言い合いを始めてしまった。
やはり、公園で待つのは選択ミスだったかもしれない。こんな格好している人がいると、気になってしまうのが普通の人の反応であるだろう。
まぁ、普通は声をかけないが、子供なら気になった気持ちでそのまま声をかけるような子もいる、実際今目の前にそんな男の子がいる。
「結局おじさんは何している人なの?」
たいきと呼ばれた男の子が再び質問を投げかけてきた、女の子もそれが気になるようにこちらを見てくる。その様子に少し悪戯心をくすぐられたのか
「おじさんの仕事はお化け退治だ」
少しからかうような口調で答えてみた。だが、普段の冷たい声とはそう変わらなかった。
「お化けって、おじさんは中二病なの?」
「たいきくん、それも失礼だよ。」
下らない冗談を言った自分に後悔する。
たいきくんは色んな言葉を覚えているようだ。ネットやスマホの発達もあるし、最近の子供は色々知っている。
眩しい夕日の光が目に刺さる。
仕事に行かなければいけないことを思い出させたその橙色の光を手で防ぎ、2人の子供に視線を向けた。
「私はもう行く、2人は仲良くするように。」
「おじさんじゃなくて、えっと、お兄さん、お仕事頑張ってね」
たいきくんのおじさん呼びに釣られたかのように、うっかりおじさんと呼んでしまったが、丁寧に訂正したこの子の応援に、思わず口元が緩んでしまった。
「応援ありがとう、帰りは気をつけるんだそ」
「おう、おじさんも気をつけるんだぞ」
「おじさんじゃなくて、お兄さんでしょ、失礼でしょう」
わざわざたいきくんのおじさん呼びを、訂正してくれたこの女の子の名前を、私は知らない。わざわざ聞くべきでもないだろう。
でも、彼女の両親が彼女に良い名前をつけてくれていることを確信している自分がいる。
考えを馳せる前に、腕時計を覗いた。
もう少しここに居たいが、そろそろ行かなければいけない。再び言い合いを始めた2人を背に、公園の出口へと足を動かした。
元気な子供から応援を貰い、少しモチベーションが上がったかもしれない。それを察したのか、傘からほんのりと温もりが伝わって来た。
「それにしても、私はやっぱおじさんに見えてしまうのかな。」
悩みなんて二つだけかと思っていたが、新たに、少し小さな悩みができたかもしれない。
△▼△▼△▼
今回の仕事の内容は超常恐怖存在の退治、放置しておくと多く死傷者が出る恐れがあるため、脅威レベルは3(強)に設定されている。
先日PKDの職員が帰宅時に襲われ、なんとか応戦し、逃げ出したことで発見した存在。その職員が元戦闘員であったことが幸いであった、戦闘能力の無い者では情報を知らせることも出来ず、殺されるのが結果だ。
夕方の住宅街での出現であったため、早めに被害が出ないように、迅速に制圧しなければいけない。故に、実力のある者に対しての任務欄に出された。
丁度任務欄をアクセスしていた時に貼り出されていたから受けたが、この程度のことは他に適任がいると職員に言われてしまった。
難易度の高くない依頼などを受ける時によく言われてしまうことだが、これも悩みの一つかもしれない。
言われ慣れたことだから、任務のキャンセルをしなかったというのもあるが、後継者を探す今の自分は、縁のある出会いを求めている。難易度の高い任務だけを受けるわけにはいかない。
今回の依頼についての分析を行いながら歩いているが、公園を出て、道を歩き始めて20分は経っている。
感覚を研ぎ澄ませて、ターゲットを探しているのに、一向に気配がしない。特定時にのみ出現するタイプか、隠密能力が高い怪異かもしれない。
「少し面倒な仕事かもしれないな」
戦闘能力は報告によると高いが、脅威レベル4の範疇は超えていない。自分にとっては机上の虫を潰す感覚程度で撃破できるだろう。
だが、見つからないように隠れられていると、奴が動き出してから、自分が辿り着いた時には被害者が出ている可能性がある。こんな多くの人が住む住宅街ではその可能性はとても高い。
この仕事で被害を出さずに事件を確実に終息させるためには、目標が動きだす前に探し出して、倒すしかない。
「脅威レベル3、戦闘力はレベル3から4、この俺が見つけ出せないとなると、潜伏能力が高い上に実体を持たないタイプか、自分の実体を現実世界から隠しているタイプの二種類のどちらかだな。」
この二つと断定するのは早い、他の可能性もある。
「報告内の実力はあくまで一部の可能性も捨ててはいけない。普段身を潜める場所が他の場所で、凶行を行う時に遠出するような慎重で狡猾なやつの可能性もある。」
予想以上に手こずっていることに少し焦ったのか、独り言で相手について分析をし始めた。あらゆる可能性を想定するように考えを走らせた。
だが、その時間も長くは続かなかった。
「来る!」
夏とは思えない異様に寒い風が吹いた。場所は250メートル先、その場所の空間が少し歪に歪んだように感じ取れる。
現れたな。
その場所には報告通りの長身の女の化け物以外に1人の少年がいることに気づくと、私は全身に力を入れ、地面を踏み付けた。
体の存在感を薄めて、空高く跳び上がった。
目的地までの最短ルートを確認するために、約20メートルの高さまでジャンプした。目的地までの景色を一瞥し、脳内で最適ルートを割り出す。
屋根上を行くのも選択肢として思い浮かぶが、屋根は自分の脚力を想定して作られている物ではない、踏み破って家の中に落ちることもある。
実際11年間で2度は経験している。どちらも素早い相手を追いかけるために足に力を入れて走ったのに、着地点にあまり気を配らずに起きたミスだった。
正直踏んでいる屋根の強度はちゃんと観察しない限り、どうなっているかわからない、見た目が問題なさそうでも、踏んでから中身がボロボロだと気づくこともある。だから道路として適していない。
行き方を決め、もう一度対象の恐怖存在を目で確かめる。
今回は全速力まで出して走る必要はなさそうだ。
確認したが、あの怪異の実力はちゃんと脅威レベル3から4の範囲内、想定外の事態が起きても、本気を出せば一瞬でその場に着いて始末できる。
ならば、事後処理や目撃者や騒ぎが無いように立ち回るのを優先しよう。
着地までの2秒間で脳の思考を巡らせ、判断を下した。
そして、足が地面に着いた瞬間、地面を蹴って走り出す。全力に及ばぬもその速さは陸上競技の世界記録を簡単に塗り替える程のものだった。
その速さに振り回されないように、綺麗な線を描くように目の前の壁を乗り越える。
跳ね上がり、壁を越え、手と脚を巧みに利用して障害物と住民の目線を避けて行く。
この移動法は、多種の武術の歩法に現代のパルクールの動きを合わせて、現代の入り組んだ複雑な街中での移動をこなすために、編み出された。
PKDでは必修科目になるほどのものだ。戦えなくても逃げることは馬鹿でもできるというのがこの移動法の教えである。
幾つもの家を越えると、ついに怪異の近くまで来れた。ものを壊さずに、人目に触れないように移動するのに苦労し、約9秒掛かってしまった。
最後の壁を越え、道に出て左に体を振り向けた。そこには少年と怪異がいた、実際近くで直接見る怪異は思ったよりも大きく感じ取れてしまう。
そして、彼らの様子を見て、小さな驚きが湧いてきた。
少年が怪異の手から抜け出したことはさっき駆けつけて来る途中で感知した、それに対しての驚きはすでに済ませた。
この2度目の驚きは、少年が戦う覚悟を決めて、綺麗な戦闘態勢を取ったことと、怪異がそれに応えるように、本気を出そうとしていることに対してのものだ。
見覚えのある少年の構えに思考が巡る前に、傘を小さく構えた。物事の優先順位は重要、化け物退治を済ませるほうが先だ。
傘に力を流し、気配を消したまま怪異の背後を取る。少年の年齢に見合わないほどに熟練したあの構えに少し影響されたのか、少しだけ気分が高揚している。
今、自分にできる最高の一振りを
そんな思いがなぜか、脳に過った。だが、それも悪くないと感じる。
傘に入れた力を、自分の持つ技術で最高の一撃に仕上げよう。そう思い、体を動かした。
力をこちよに流し込み、こちよがそれに応えるように力を合わせてくる。その二つの力を練り合わせて、最適な形を作る。
それを肉体の力で動かし、化け物を確実に消滅させる筋を沿って振るう。
「どうせ死ぬなら、お前の顔面に一発叩き込んでから、えっ?」
この一撃は、少年の覚悟の決まった言葉の最中に、怪異を跡形も無く消し去った。
私と少年、両者の間の障害であった怪異が消えたことで、少年の戸惑った表情が見えるようになった。決め台詞を打ち切られた彼の動揺がその顔に現れていた。
少年も自分も言葉を発することなく、数秒の沈黙が訪れた。
少し気まずい心情を作ってしまった自分を反省し、心を落ち着かせる。
明鏡止水にはまだまだ遠い、自分は未熟と感じると共に、夕方の住宅街で怪異を1人で始末しないといけないこの仕事が、思ったよりも大変だったということに心の中で溜め息を吐く。
「凄い」
少年の称賛の言葉が聞こえた。彼の自分の技に対する感想を少し心嬉しいと感じるも、仕事の続きをしなければいけないと、気持ちを抑えた。
「面倒だ、この仕事も」
そんな愚痴のような一言を口から出してしまった。
被害者も目撃者も出ないように立ち回らなければいけない上に、出た場合の事後処理も行わないといけない。
基本は最低限でも数人体制でチームを組んで仕事を行うことが普通であるこの世界で、1人で仕事を行う自分のような者は一匹狼のように異色を放っているだろう。
それでも、ちゃんと騒ぎが起きないように行うのがこの仕事の一環である。他に目撃者や被害は出てないが、この少年は怪異と遭遇して、接触してしまっている。
被害者や目撃者の健康診断、検査、治療、記憶の封印誘導、事件の黙秘の協力などを行うのもPKDに所属する者の仕事、PKDの事後処理部門に連絡して頼むのも手であるが、この程度の事件な上、1人しか遭遇した者がいない。
ならば、他人の手を煩わせることなく、自分1人でやっておくのが道理。
脳内で思考をまとめた。この仕事を早く切り上げて、帰って夕食の準備を行わなければいけないと思いながら、少年に近づくために足を動かした。
化け物の手から抜け出し、あの構えができる少年に興味はあるが、仕事の方が優先だ。怪異に遭遇した中学生の彼のケアの方が大事だ。
動揺と困惑の様子で固まった少年はその場で直立していた、何か話そうとするも口に出て来ない様子だった。それに構わず、彼の頭に自分の左手を乗せた。
「あの?」
少年の疑問の籠った声が耳に響く。
今は、神経を研ぎすませて、彼をいう存在に集中して、検査を行っている。
肉体の頭頂から爪先まで一秒かからずに全てのチェックを行い、負傷なし、異常無しという結果を出した。
ならば問題なし。
次に行うのは、記憶と認識の操作だ。
超常的存在が、社会一般的に知られて騒ぎにならないように、事件の目撃者の記憶を封印することはよく行われている。
効果はそれだけじゃない、事件によってトラウマを負う者も、心の傷を負う者もいる、記憶を封じれば、それも解消される。
非常にデリケートな記憶と脳に干渉を行うことは技量を問われ、一歩間違えれば被施術者が危険に晒される。
故に、削除などは行わずに、薄め、脳の奥に、仕舞い込む。数日前の食事の中身のように、なかなか思い出せない領域に押し入れる。たとえ本人がそれを思い浮かんでも、夢のように、ただの妄想であるように、気に留めないようにする。
この術の定義と詳細を思い出してから、記憶沈下希薄化術を彼に掛けるための呪文を唱えるために、口を開いた。
「心神安寧、保命護神、眠れ。謹請す、悪しき夢を忘れ、日常に戻れ。全ては夢幻のように。」
呪文に合わせて、力をほんの少し彼の体に流し込む、彼の肉体を放心状態にし、ゆっくりと眠りに導く。
目が覚めた時には怪異の記憶も彼方に放り投げているように、彼の記憶と体を誘導する。
呪文を唱え終えた時には、少年は眠気に抗えずに、ゆっくりと瞼を閉じていた。
「ん?」
眠りについた少年は、直立状態で立っていた。リラックスした肉体が倒れるように眠り込むことを選ばず、綺麗な立ち姿で睡眠に入ることができる人間はそうそう無い。
「そういえば、さっきこの少年が取った構え、既視感が強い。どこかの高名の武術家に習ったのか、練度の高い構えだった。」
記憶している武術を少年のものに照合し、脳内で探し出し始めて数秒。少年から目覚めの気配がした。
目覚めるまで待った方がいいと考えた自分にとって、早めの目覚めはありがたいことだったが、これは早すぎる。
「これなら放置しても大丈夫そうだ、ん!?」
予想以上に早く目覚めた少年が、突然瞼を開いた。
だが、問題は無かった。彼が瞼を開くその一瞬で隠れることは、自分にとって造作も無いことであった。
少年の背後の道の曲がり角から気配を消しながら、覗き込むように頭を出した。
少年は立ちながら何か考え事をしている。突然直前の記憶が曖昧な状態で道路の上で目覚めれば当然の反応だろう。
そんな少年の姿を見つめて、今日は驚くことの多い一日だと感想を抱きながら、彼が通常最低でも十数分は続くはずの術から1分経たずに目覚めたことに、驚嘆している。
「こんな早く目覚めるのか」
彼にはこの道を歩む才能があるだろう。
さっき怪異から抜け出したのも偶然ではないはずだ。今回彼が怪異に遭遇したのも、常人が持ち得ない才能を持つのが原因かもしれない。
「勧誘するのは、そうだな、やめておこう。中学生が関わる世界じゃない」
一瞬、次期所長に相応しいのは彼じゃないかと思ったが、彼の姿を見ればその考えも収まる。彼はまだ中学生である、持っている鞄は近くの中学の物だ。
この年齢で彼のその才を開花させるのは、彼にとってどんな影響を及ぼすのか誰にもわからない。そして、青春を捨て、この道を歩む者の苦労を俺はよく知っている。
こっちの世界は、危険だ。
だから、彼にはこのままいつも通りの日常に戻ってもらおう。
才能ある少年をこの道に導く案を却下し、1人の少年の青春と日常を守る方を選択した。
彼もそう望んでいるだろう。危険な仕事より、普通の生活の方がいい。
俺はそう思い、少年を勧誘したい気持ちを断念する。
「とりあえずこれでいい、中学生に見せるべき道ではない。次期所長は若い子が良いが、中学生はちょっと若すぎる。もし、本当にこの道に縁があるなら、またどこかで会えるはずだ」
そう言い、走り出した少年から目を離して、自分の迷いを消すように背を向けて歩き出す。
そして、少年のことが気になる心を抑えるために、面倒な現実を思い出す。
帰ったらやることも多い、夕食の用意をした後は、今日の事件のレポートや記録を作成して、PKDに報告しなければいけない。
その時に、少年のことも調べないといけないのか。彼は被害者だしな。
再び少年のことが気になりそうな気持ちを抑え、私は頭を振って忘れようとする。
「事件の報告か」
少年以外に目撃者も被害も出なかったおかげで書くものが少ないが、まぁまぁ面倒な作業である、専門でレポート記録作成を代行してくれる人もいるくらいだ。
そういうサービス自分も何度も利用したことがあるが、まぁ、慣れれば自分での作成もそこまでの苦ではない。
でも、必要があれば、あの怪異についての追加調査もやらないといけない。
発生要因、人的の要素がないか、他に同類の個体がいないか、PDKでの調査部門で終わればいいが、依頼を受けた自分に回ってくる可能性は普通にあるからな。
「そんなことより、今日は何を食べるか悩むな。」
そう言い、面倒なことから逃げるように、想像を膨らませた。
寿司、焼肉、中国料理からジャンクフードまで、今日の夕食を、そして、明日の自分の様子から、はるか先の出会いまで。
願わくば、早めに次期所長が見つかりますように。
そんなことを考え、少しだけ、足の速度を速めた。
帰ってやることが多いからな。
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奇峯事務所19代目所長 黒宮蒼陽
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