第19話:色欲の屋敷③
全員と挨拶をしたところで、マナさんからのお話が始まった。
「さて、新人であるシェイル君はこのギルドの勝手を知ってもらわなければならない、というわけで暫くはツーマンセルで動いてもらうよ」
「誰と動けばいいんですか?」
またマナさんに面倒を見てもらうことになるのだろうか、多分それなら失敗はないだろう。
なにせ強豪派閥の上位9名に名を連ねるのだ、安全と成長は確約されたも同然だろう。
だが………
「私が暫く面倒を見てもいいのだが………どうやら野暮ったいようだね」
そんな安定を選んでしまえば、より高みを目指すことはできない。
それに正直に言ってしまえばマナさんと僕では差が大きすぎて技術を盗もうにも盗めない、だからまずは他から盗むべきだ。
「まずはキミ自身の事を知る必要がある、無論あの水魔法もね」
この間の一件にて発動した水魔法の事を僕自身が理解できていないし、コントロールしようなんて不可能だ。
荒れ狂う大波を制御できなければ僕に明日はない。
「恐らくキミとレーレーンと相性がいい、キミの成長を助けてくれるだろうね、レーレーン、頼めるかい?」
「了解しました、いつも通り動いて、着いてきて貰えばいいですよね?」
「それで構わないよ、シェイル君もわかったかい?」
「勿論です、暫くの間よろしくレーレーン」
「うん!よろしくシェイル!」
こうして、レーレーンと共に任務をこなすことになった。
同い年で尚且つここまで打ち解けてくれているから彼女がパートナーになってくれてありがたかった。
「さて、顔合わせも終えたところだし、ここで解散だ、シェイル君、キミの部屋は階段を上がって1番奥の部屋だ、シルハに荷物は運ばせておいたよ」
「了解です、シルハさんにはお礼言わないといけないですね」
持ってきた荷物がないと思ったら既に運んでくれていたのか、大荷物だっただけにシルハさんには少し申し訳なく思った。
言われた部屋を目指して大階段を上がり、2階に上ろうとした。
こんなにも広い屋敷なのだ、前に住んでいた格安の宿とは比べ物にならないほどいい部屋なのだろう。
心を弾ませて階段の1段目に足をかけた。
「くたばれっ!!この蛇野郎ッ!!」
「“お手”なんて誰も言うてへんで駄犬がッ!!」
「シェイル危ない!!」
レーレーンの慌てる声がした。
何事かと振り返ると、目と鼻の先に血管の浮き出たシルハさんの拳が迫っていた。
俊敏性に定評のある獣人族の拳なんて、僕に避けられるわけもなく。
「「あっ………」」
シルハさんとスペークさんの声が重なる。
「なんで…」
僕が殴られるんだよ、まで言わせてくれずに、僕の顔面にシルハさんの鉄拳がクリーンヒットした。
とんでもない勢いで飛んできた拳に吹き飛ばされて、僕は再び後頭部を強打することになった。
前言撤回、もうこの人に2度と申し訳ないなんて思うことはないだろう。
「………煩わしい」
ロビンさんの呟きを最後に、僕は本日2度目となる失神を迎えるのであった。
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