第18話:色欲の屋敷②

「さあ諸君!我々の新たな同居人の紹介をしようじゃないか!さあ私唯一の後輩、挨拶をするんだ!」


「シェイル・フォールンです、来て早々に吹き飛ばされた意味がわからないです、よろしくお願いします」


気を失ってから目が覚めた僕は先輩方の面々に挨拶をしていた、もちろん不満全開で。

広いリビングのソファに腰掛けたり寝転がったりしている面々は興味深そうに僕を見ていた。


「さ、諸君も自己紹介してくれ、そうだね………じゃあシルハから」


「え〜?マナ姉めんどくさいって〜」


犬耳の獣人が寝転がって駄々を捏ねる。

それに対してマナさんは微笑んだ、目は笑ってなかったが。


「シルハ、しばらく褒美は無しにしようか」


「いや!それだけはご勘弁を!!!そんなことされたら俺死んじゃうって!!!!!」


「じゃあ自己紹介をしてくれるね?」


「はいッ!します!!!今すぐにッ!!!!!」


マナさんは飴と鞭の使い分けが上手かったようだ。

マナさんにシルハと呼ばれた獣人がピンと立ち上がって自己紹介をする。


「俺はシルハ・ハスキーだぜ!見ての通り犬系の獣人だ、あとマナ姉の一番弟子は俺だからな!マナ姉に指一本触れさせねえぞ!新人ッ!!」


「マナさんなんで僕はもう嫌われてるんですか」


「知らないし弟子にした覚えはないんだが」


もう睨まれてるし唸ってるし威嚇している、こんな敵扱いは理不尽だと思う。

それとこの人マナさんにすげえ魅了されてんな、と思った。

そりゃあマナさんのいうご褒美を取り上げられたら死にたくなるんだろうなとも思った。

本当にマナさんを見る目がまさに忠犬だ、尻尾もすごく揺れている。

番犬という名が彼には相応しいだろう。


「では次はロビン、頼むよ」


僕に敵意剥き出しのシルハさんを放置してマナさんが指名したのは亜麻色の髪に緑の瞳が映える美男子、尖った耳はエルフの特徴だ。


「………ロビン・サタナキア、ハーフエルフ」


今度は警戒心丸出しなのがよく伝わってきた。

まあこちらも不機嫌なのを隠していないから当然と言えば当然だ。

エルフは警戒心が強いとよく聞く、ハーフとはいえ彼も例に漏れていないだけだろう。


「こう見えてロビンは屋敷で最年長だからね、困ったら頼るといい、では続いてピオニー」


「はーい!」


元気に返事をしたのはソファの後ろに立っていた女性だ、前の2人よりも笑顔でフレンドリーな感じがした。


「ピオニー・ゴトアラです!この屋敷で医療担当してるから、体調が良くなかったら気楽に相談してくださいね!」


「医療担当………ってことは、さっき治療してくれたのって」


「ピオニーだね、彼女は怪我から病気まで対応できるのさ」


「ありがとうございます、助かりました」


「どういたしまして!また何かあったら言ってくださいね?」


屋敷に入る前にマナさんは全員破天荒だと言っていたが、ピオニーさんのどこが破天荒なのかよくわからなかった。

頼れる優しいお姉さんといった感じでなんだか心が安らぐ。


「ほな、次はワイの番やな」


マナさんが指名する前に糸目の青年が名乗りを上げる。

蛇を想像させるような細くくねくねとした立ち姿だった。


「スペーク・フルーレティや、さっきはワンコとの喧嘩に巻き込んですまんかったな、ワイの顔に免じて許してくれや」


「ああ!?誰がワンコだとてめえ!!」


「ウチにワンコは1匹しかおらんかった筈やけどな」


「ワンコじゃねえ!狼つってんだろこの野郎!!目ぇ開いてねえけど寝てんのか?ああ!?」


「お前!人のコンプレックスを堂々と指摘しおって!!狼やなくて大馬鹿や!!」


「んだとてめえ!!」


シルハさんとスペークさんが取っ組み合いをし始めた。

それも子供の喧嘩ではなく強豪派閥メンバーの喧嘩だ、殴り飛ばして遠くまで行ったりしている、理由は子供なのだが。

なんとなく、来て早々喧嘩に巻き込まれた理由がわかった気がする。


「彼らはさておき、続きをしようか、クエス」


「僕の番か」


手を挙げたのは身長が僕の腰ほどの高さしかない小人族、眼鏡が光を反射している。


「クエス・デカルトだ、クエスでもデカルトでも好きに呼んでくれ、屋敷の設備開発をしているから僕が1番屋敷のことを理解している、困ったことがあったり要望があったら申し出てくれ」


「わかりました、よろしくお願いします」


丁寧な物腰で自信のある声色だった。

周りをざっと見ても、見たことのない物がいくつもある、彼の作った設備なのだろう。

屋敷の中では彼に1番頼ることになるかもしれない。


「では最後は………」


「私、ですね」


最後に僕に近寄って来たのは耳の辺りについた魚のヒレのような物が特徴的な、いわゆる魚人の少女だ。

歳は同じぐらいだろうか、マナさんとは正反対の艶のある黒髪と翠緑の瞳に僕は既視感を覚えた。


「レーレーン・メイ・シレーヌです、見ての通り魚人だよ!マナさんに聞いた通りだと同い年のはずだから敬語は無しで!」


「わかった、よろしくレーレーン」


「こちらこそよろしくね!」


僕の手を握って上下にブンブン振る太陽のような笑顔に、僕は確かな既視感を再び感じた。

幼い頃にどこかで見たことあるような、そんな笑顔だ。

僕は彼女に聞かずにはいられなかった。


「どこかで会ったことあるか?なんか見たことある気が………」


「うーん…なんか私もそんな気がするんだけど………まあいっか!」


本当に幼い頃に会ったことがあれば、共に過ごす中できっと思い出すだろう。

笑顔を向ける彼女に、僕も笑顔で応えた。





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