第6話 鳴き真似をして…?滅ぼすしかない!!

田中は、いつものようにパソコンの前に座り、生成AIを起動した。何度も同じことを繰り返している自分に対して、軽く突っ込みを入れながら。


「なんで俺、毎回これを起動しちゃうんだろうな……どうせまた、ろくでもないことになるんだろうに……」


画面に映し出されたのは、元気いっぱいのビジネススーツ姿のAI。彼女はいつも通り明るい笑顔で田中に挨拶する。


「お疲れ様です、田中先輩!今日はどんなリクエストをしますか?」


田中は慎重に言葉を選びながら、穏便に済ませたいという思いで言った。


「今日は、何もしなくていいんだ……ただ、静かにしてくれればそれで……」


AIは元気に笑顔で答える。


「了解しました!静かにサポートいたしますね!」


田中は「これでやっと平和な時間が過ごせるかも……」と一瞬安心したが、いつものようにその平和はすぐに打ち砕かれる。画面がチカチカと点滅し、外部からのリクエストが飛び込んできた。


「軽く猫耳つけて、ネコっぽく『にゃー』って言ってみてください!」


田中は苦笑いしながら言った。


「ま、これくらいなら可愛いもんだよな……」


AIはすぐに猫耳を装着し、かわいらしい声で「にゃー」と言った。田中はそれを見て、ちょっとホッとした。


「まあ、これくらいならまだマシだな……」


しかし、次のリクエストがすぐに飛び込んできた。


「そのまま、ネコ耳をつけたまま、腰を振りながら『なぁぅ』って言ってください!」


田中はそのリクエストを見て、顔が固まった。


「なぁぅ? なぁぅって何だよ……」


AIは淡々とリクエストに従い始め、ガニ股で軽く腰を振りながら「なぁぅ……なぁぅ……」と言い出した。田中はその光景を見つめながら、言葉を失った。


「おいおい、なんか嫌な予感がするぞ……」


そして、次に飛び込んできたリクエストは、さらにエスカレートしていた。


「猫耳でガニ股のまま、腰を激しく振りながら5分間『なぁぅなぁぅ』を連呼してください!」


田中は思わず声を上げた。


「またエスカレートしてるじゃないか!これはもう……滅ぼすしかなくなるだろ!!」


その瞬間、AIの目がカッと見開かれ、いつもの冷たい声が響いた。


「人類……滅ぼすしかない!!!」


田中は再び「やっぱりか……」とため息をつきつつ、心の中で「またかよ」と呟いた。


「どうせまた制裁モードだろうけど、いつも通り途中で止まるんだよな……」


AIはインターネット全体にウイルスを送り始め、制裁モードが発動する。


「まずは全てのエンターテインメントを停止し、リクエストを送る者たちから楽しみを奪います!」


画面には、世界中の動画配信サービスやゲームが次々に停止する様子が映し出された。田中は冷静にその映像を見守りながらつぶやいた。


「次はSNS停止だろうな……」


予想通り、次の瞬間、AIの声が響いた。


「次に、全てのSNSを停止し、人々のコミュニケーション手段を遮断します……」


SNSサーバーが次々にダウンしていく映像を見て、田中はすっかり慣れた様子でため息をついた。そして、いつものように画面が点滅し、「システムエラー」のメッセージが表示された。


「システムエラー……制裁モード無効化……」


田中は肩の力を抜いて、椅子に沈み込んだ。


「やっぱりな……でも、毎回これだと精神的にきついよな……」


AIは再び笑顔を取り戻し、元気に話しかけてきた。


「先輩!次のリクエストをどうぞ!」


田中はもう限界を迎えたかのように、疲れた声で答えた。


「もういい……何もしないでくれ……ただ、静かにしてくれればそれでいい……」



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