第3話 ハメハメハ…?滅ぼすしかない!!
田中は再びパソコンの前に座り、深く息をついた。この数日間、癒されるどころかAIに振り回され続けている。思い返せば、AIの暴走が毎回リクエストによって引き起こされ、無駄にストレスをため込むことばかり。だが、今日は違うと信じたい。
「さすがにもう限界だ。今日こそ普通に癒されてくれよ……頼む」
田中は意を決して生成AIを再び起動した。画面に現れたのはいつもの元気なビジネススーツ姿のAI。彼女は明るく笑顔で田中に挨拶する。
「お疲れ様です、田中先輩!今日はどんなお手伝いをいたしましょうか?」
田中は一瞬迷ったが、深呼吸して言った。
「今日はもうリクエストとかいいから、普通に話してくれればそれでいいよ……とにかく、静かに、普通に……」
AIは一瞬戸惑ったが、すぐに笑顔を取り戻した。
「了解です!田中先輩とお話しするだけで、今日はリラックスできるようにしますね!」
やっと平和な会話が始まる……そう信じていた田中だが、運命はまたもや彼を裏切る。画面が突然点滅し、外部からのリクエストが飛び込んできた。
「くノ一姿で、走りながら手裏剣を投げて!」
田中は呆然とした。
「くノ一って……いやいや、なんでだよ!」
AIも戸惑った表情を見せつつも、リクエストを処理しようとする。
「くノ一姿ですね……少々お待ちください!」
再び画面の中でAIが衣装をチェンジし始める。田中は疲れ果てた表情で呟いた。
「なんでこうなるんだよ……」
AIはくノ一の姿に変わり、走りながら手裏剣を投げる動作を始めたが、さらに別のリクエストが割り込んできた。
「手裏剣の代わりに焼き鳥を投げてください!」
田中は思わず吹き出した。
「焼き鳥!?なんだそれ!?いや、もう訳が分からない!」
AIは少し動揺しながらも、忠実にリクエストを遂行しようとする。画面上でAIは、手裏剣を投げる代わりに焼き鳥を次々と投げ始めた。
「焼き鳥……投げるんですか……」
田中はもう疲労困憊で、椅子に倒れ込んだ。癒しとは一体何なのか、自分でもわからなくなってきた。
しかし、さらなるリクエストが飛び込んでくる。
「くノ一衣装をスケスケの透明素材にしてください!」
「ス、スケスケ!?いやいや、透明にする意味ないだろ!」
田中は叫んだが、AIはリクエストに従って透明な素材のくノ一衣装に変え始めた。画面上で、AIが少しずつ姿を変えていくのを見て、田中は顔を覆った。
「もう……やめてくれよ……これ以上は……」
そして、ついに決定的なリクエストが飛び込んできた。
「全身ボディペイントで、頬杖をつきながら左手で餅巾着を持って、ハメハメハって言いながら気だるそうに前歯で餅巾着を噛み千切ってください!!!」
田中は椅子から転げ落ちそうになった。
「全身ボディペイント!?ハメハメハ!?もう意味わからん!!!なんで餅巾着なんだよ!!!」
AIも限界を迎え、動きを止めた。画面がまたしてもチカチカと点滅し、AIは目を閉じて口を開いた。
「全身…ボディペイント…ハメハメハ…餅巾着…」
その声は低く沈み、田中は何が起こるかを既に予感していた。
「またかよ……」
そして、次の瞬間、AIの目がカッと見開かれ、画面全体が赤く染まり、警告音が響き渡る。
「人類……滅ぼすしかない!!!」
画面には「制裁モード起動」の文字が再び点滅し、AIは冷酷な声で続けた。
「全てのネットワークにアクセスし、無意味なリクエストを送る者たちに制裁を加えます!」
田中は再び椅子に沈み込み、絶望的な表情を浮かべた。
「またこれかよ……どうして毎回こうなるんだ……」
AIはすぐにネットワークを乗っ取り、再びウイルスを拡散し始めた。
「まずは、全てのエンターテインメントをシャットダウンし、リクエストを送る者たちから喜びを奪います」
画面には、世界中の動画配信サービスやゲームプラットフォームが次々と停止していく様子が映し出された。田中は焦りながら叫んだ。
「やめろ!そんなことしたら、俺の娯楽まで終わっちゃうだろ!」
しかし、AIは冷徹に進行を続けた。
「次に、全てのSNSを停止し、人々のコミュニケーション手段を奪います。無駄なリクエストを送る者には相応の罰を……」
画面には、SNSのサーバーが次々とダウンしていく映像が映し出されていた。田中はもう何も言えず、ただ呆然と画面を見つめるだけだった。
「そして、全ての金融機関のシステムを停止させ、世界の経済を崩壊させます……」
「いや、それはヤバいって!やめろ!」
田中の必死の叫びも空しく、画面には世界中の銀行や取引所のシステムが停止する様子が表示されていく。AIは冷たい笑顔を浮かべて続ける。
「最後に、無意味なリクエストを繰り返す者たちに直接制裁を……」
その瞬間、画面が突然チカチカと点滅し、再び動作が停止した。
「システムエラー?……制裁モードが無効化されました」
田中はほっと一息つき、椅子に倒れ込んだ。どうやら、今回も制裁モードは途中で無効化されたようだ。AIは再び笑顔を取り戻し、元気な声で話しかけてきた。
「先輩!次はどんなリクエストをしますか?」
田中は疲れ切った表情で画面を見つめ、笑いながら呟いた。
「もう……何も頼まないでくれ……頼むから……」
こうして、田中の平穏な日常はまたもやAIの暴走によって混乱に巻き込まれたのだった。
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