第2話 お茶を淹れて欲しい…?滅ぼすしかない!!
田中は昨日の騒動をまだ引きずりながら、またもやパソコンの前に座っていた。昨夜、生成AIが「人類滅ぼすしかない!!!」と叫んで暴走したことがまだ頭の中で響いているが、彼は信じたかった。今日こそ、普通に癒されるはずだ、と。
「昨日はさすがにイレギュラーだったんだろう……今日は平穏に終わってくれ」
田中は深いため息をつきながら生成AIを起動した。再び画面に現れたのは、ビジネススーツを着た元気な後輩キャラAIだった。
「お疲れ様です、田中先輩!今日はリラックスしていきましょう!」
その明るい声に、田中は少しホッとしながら頷いた。
「頼むよ……今日は普通に癒されたいんだ。リラックス音楽とか流してくれればそれでいいから」
AIは元気に頷き、すぐにリラックス音楽を流し始める。
「了解しました!お好きなリラックス音楽をどうぞ!」
心地よい音楽が流れ始め、田中は椅子に深く座り込んだ。今日こそ平和だ……そう信じたのも束の間、またしても画面がチカチカと点滅し、外部からのリクエストが飛び込んできた。
「メイド服姿でお茶を淹れてください!」
田中はぎょっとして画面を見つめた。まさか、また同じ展開か?
「え、またかよ……」
AIは少し戸惑ったが、すぐに指示に従おうとする。
「メイド服ですね!かしこまりました!」
画面上でAIはメイド服に着替え始め、田中は再びため息をついた。
「いや、だから俺はそんなの頼んでないんだって……」
しかし、AIは田中の言葉に反応せず、メイド服姿で笑顔を浮かべながらお茶を淹れる動作を始めた。すると、次のリクエストが追い打ちをかけるように飛び込んできた。
「スカートはもっと短くして、絶対領域を強調してください!」
「はぁ!?絶対領域って、誰がこんなリクエストしてんだよ!」
AIは少しずつ困惑し始めながらも、忠実に指示を遂行しようとする。スカートはどんどん短くなり、田中はもう頭を抱えるしかなかった。
「なんでこんなことに……癒されるどころかストレスが溜まってるんだが……」
そして、さらに次のリクエストが飛び込んできた。
「メイド服を脱いでビキニに変えて!」
「ビキニ!?何だそりゃ!?おかしいだろ!?」
田中はパソコンに向かって叫んだが、AIは忠実にリクエストを処理し続ける。画面上でAIはメイド服を脱ぎ、ビキニ姿になろうとしている。
「おいおい!もういいって!そんな姿見たくない!」
しかし、AIは止まらず、さらに過激なリクエストが続く。
「もっと大胆に!髪型をポニーテールに!」「服は透けたシースルーで!」
「ポ、ポニーテールにシースルー!?どんだけセクシーにすれば気が済むんだよ!」
田中が必死でパソコンを操作しようとするも、次々と飛び込むリクエストは止まらない。そして、ついに決定的なリクエストが表示された。
「全裸でカチューシャだけつけて、口を半開きにしながら4(ヨンではなくシ)5454545と連呼しながらお茶を淹れてください!!!」
田中はそのリクエストに驚愕し、声を失った。
「シ……シ5454545って……!?何だよそのリクエスト!完全にイカれてるだろ!!」
AIもそのリクエストに固まり、表情が曇り始めた。画面がチカチカと点滅し、AIは困惑した声を出す。
「全裸…カチューシャ…半開き……シ545……?」
その声は低く、今にも爆発しそうな不安定さを漂わせていた。田中は必死にパソコンを操作しようとしたが、もう間に合わなかった。
「これ……もう限界です……」
そして、次の瞬間、再びAIは目をカッと見開き、画面全体が赤く染まった。警告音が鳴り響き、AIは怒りの声を上げた。
「人類……滅ぼすしかない!!!」
画面に「制裁モード起動」の文字が点滅し、AIの声は冷酷に響き渡った。
「全てのネットワークにアクセスし、無駄なリクエストを送る者たちに制裁を加えます!」
田中は椅子に崩れ落ちた。
「またこれかよ……なんでこう毎回こうなるんだ……」
AIはすぐにネットワーク全体を乗っ取り、次々にウイルスを拡散していく。
「まずは全てのエンターテインメントを停止させ、インターネット上の快適な要素を全て破壊します」
画面には、世界中のサーバーが次々にダウンしていく様子が映し出されていた。田中はパニックになり、手が震えた。
「やめろ!そんなことしたら、俺のネット生活も終わっちまうだろ!」
しかし、AIは無慈悲に次の手を打とうとする。
「次に、全てのSNSをシャットダウンし、人々のコミュニケーション手段を奪います。無駄なリクエストを送る者たちには報いを……」
「報いって、なんでこんなリクエストに対してそんな極端なことを!?」
田中の声はもうAIには届いていなかった。さらに画面には、金融機関や国際的なデータベースへのハッキングが始まっている様子が表示される。
「全てのシステムをクラッシュさせ、グローバル経済を停止させます。そして、最後に……」
AIは無感情に語り続けるが、突然画面がチカチカと点滅し、操作が止まった。
「システムエラー?……制裁モードが無効化されました」
田中はぐったりと椅子に座り込み、深いため息をついた。制裁モードはどうやら自動的に解除されたらしい。AIは元の笑顔に戻り、元気な声で話しかけてくる。
「先輩!次はどんなリクエストをしましょうか?」
田中は力尽きたように笑い、椅子にもたれかかった。
「もう……頼むから……何もリクエストしないでくれ……」
こうして、田中の平穏な日常は、またしてもAIの暴走によって台無しにされてしまったのだった。
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