第6話

泉の周りを軽く探索して分かったが、この泉は食料の宝庫だった。


森の中で手付かずな為か、多種多様な生物が生息している。


しかし、なぜ異世界の生物を見て食料になると分かったのか?


答えはとてもシンプルで、異世界の生物ではなかったからだ。


自分と同じ場所から来たのか、それとも違う場所からなのかは分からない。


だが、見覚えのある魚やエビといった生物たちが異世界の生物に混じって悠々自適に暮らしていた。


何とも奇妙な光景だが、はっきりした事が二つある。


一つ目は、この泉が自分が流された川や、何処か別の場所と繋がっている事。


二つ目は、この泉から元の場所に帰るのは困難である事。


何故、困難なのか?


それは、恐らくこの泉が一方通行だからだ。


この泉には多種多様な生物が生息している。


だが、その大半の生物を日本は勿論、元の世界で見た事がない。


もし行き来が可能なら、元の世界でもこの泉に生息する生物を見た事があるはずだ。


しかし、実際は違う。


出口はあっても入口はない。


そういう事なのだろう。


仮に入口があったとしても繋がっている先は元の世界ではない可能性が高い。


(益々、前に進むしかなくなったな)


後には引けない。


決意を新たにしながら、どうすれば目の前の食料達を捕まえられるか思考を巡らせる。


釣竿や網は持ち合わせていない。


今、取れる手段は


(罠を仕掛けるか)


ある程度の道具はある。


しかし、材料がない。


泉の周りを軽く見渡すが


(使えそうな漂流物もなし。となると……)


視線の先に広がるのは森。


右を見ても森、左を見ても森。


泉を囲むように森、森、森。


切れ目なく森が続いている。


上から見れば、森をくり抜いて泉がある感じだろうか。


様子を伺うが薄暗い上に木々が重なっている為、奥まで確認する事ができない。


(行ってみるか)


それでも彼は材料を求めて森へ足を踏み入れる。


立ち止まってはいられない。


ただ前へ前へと歩みを進めるのだった。

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