第5話
肌寒さを感じて目を覚ますと、まだ夜明け前だった。
テントから顔を出し外の様子を伺うと、泉で何か跳ねているのか時折ピシャッと水面を叩くような音が聞こえる。
音の主を軽く探すが、まだ薄暗い上に水面も霧で覆われている為、確認する事はできない。
まだ瞼は重たいが暖を取る為、身体と火を起こす。
薪をくべ、火が充分に着いた事を確認したらケトルを持ち泉へ。
ケトルに水を汲み、顔を洗いならが思う。
(海水じゃなくて助かったな)
この泉の水はとても澄んでいて美しい。
昨日もこの水で珈琲を飲んだが体調に問題はない。
寧ろ良いくらいだ。
(大丈夫そうだけど念の為、暫くは煮沸するか)
ケトルを火に掛け、湯を沸かし、昨日挽いた珈琲の残りを淹れる。
(大事に飲まないとな)
飲み水を確保できた事は大きい。
だが珈琲を始め、彼の持ち物は有限。
使い切ってしまえば代わりはない。
(調味料系が無くなる前に人里を見付けられれば良いけど)
食事は人生の活力の一つ。
それが味気ない物になるのは避けたい。
食は人生を豊かにすると彼は思っている。
(できれば、この世界の料理とか食べてみたいけど取り敢えず今は、食料になりそうな物を探しますか)
珈琲を飲み終わる頃には、朝日が顔を覗かせ、空も青く染まり始めていた。
まだ多少、朝霧が残るものの探索するのに申し分ない。
(改めて見ると大きな泉だな)
彼の視力は決して悪くはない。
だが、そんな彼の視力を以てしても辛うじて対岸が見える程度。
(一日で一周するのは難しそうだな。先ずは近くから何かないか探すか)
必要最低限の物を詰めたバックパックと護身用にナイフを持ち、彼は異世界探索の第一歩を踏み出したのだった。
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