第34話 一緒にお風呂2

――――【雄司目線】


 流石に裸で入る訳にも行かず、お風呂案は却下しようと雛森に呼び掛けようとしたときだった。


「水着がありますから着替えていいですか?」


 上目遣いで、おずおずと雛森が訊ねてきたが水着を予め準備していることに驚いた。


「男の子は水着を着た女の子のボディサイズを測るのが好きだと聞きましたので……」


 何故水着を常備しているのか、訊こうと思っていたら、雛森自ら教えてくれた。


 着せ替え人形の影響なんだろうか?


 それからだとすると、だいぶ誤解を含んでいるような気がするが、兄貴に好かれようと地道な努力する雛森に好感が持てた。


 問題はどうやって着替えるか、だ。


 靴と靴下を脱ぐくらいなら、それほど苦労することはない。だが服を脱いで、水着を着るとなると相当な困難が予想される。


 シャツとブラウスを脱ごうにも繋がったままの手では、引っかかって脱ぐことができない。


 シャツ、ブラウスが引っかかったまま、お風呂に入るということができない訳じゃないが、やっぱり重くなるから……。


「諦めて、バケツに浸けて取る方が……」

「切りましょう!」

「へ?」

「ハサミで切れば問題ないと思います。雄司くんのシャツは私が払いますので大丈夫です!」


 そりゃ雛森からしたら、俺のシャツなんてペットボトルを買うよりも安い感覚なのかもしれないが……。


 まさに英断……と言っていいのだろうか?


 雛森の何が何でも俺と一緒にお風呂に入るという強い意志に負けて、雛森は俺のシャツと彼女のブラウスの袖にハサミを入れていた。


 ブラウスを切ってしまった雛森は当然下着姿になっている。俺はなるべく見ないように心掛けたが、チラと目にしてしまった雛森のブラはピンク色でフリフリがついた実に女の子らしくてかわいらしい物だった。


 だが雛森は着痩せするタイプなのか、温水プールでビキニを見せてもらったときと同様、あどけなさの残る顔つきに不釣り合いなくらい巨乳である。


 雛森は俺の同志。


 同志をまじまじ見て、欲情するなんて失礼だと思い、俺は先にズボンを脱いで先に水着に着替えさせもらうことにする。


 だけど、雛森は俺とは違うようで……。


「雛森? 雛森!? あんまり見られると脱ぎにくいんだけど……」

「は!? はわわ、ごめんなさい……」


 俺の身体を凝視して、心ここに在らずといった感じの雛森は俺と兄貴を重ねているんだろうか? 兄貴は俺よりもっと痩せてて、スラッしているけどな。


 ただ雛森が「おあいこです」なんてこと、言い出さなくて良かったと思う。俺も女の子の……いや雛森の身体に興味がない訳じゃない。さっき、雛森と一緒におトイレに入ったときに何度目を開けようかと思ったことか。


 開ければ下半身に一糸纏わぬ、ありのままの雛森を見られると俺の中の心の悪魔が囁いてきて、同志を裏切るのかと天使とせめぎ合っていたのだから。


 雛森はスカートも脱ぎ、俺の前で下着姿となってしまう。彼女とはただの偽装カップルなのに……。


「雄司くん……片手では紐が結べません……手伝ってもらえますか?」

「あ、いや……雛森はいいのか? 俺が手伝って……」


「もちろんです! 雄司くんに手伝ってほしい……」


 そこまで兄貴のためなら涙ぐましい努力をしようとするなんて……。雛森が律香先輩から兄貴を寝取ることに成功すれば、俺も律香先輩を慰めるという大義名分ができる。


 自分ではただの陰キャだと思っているが、雛森の下着姿を見た俺は陰キャにキモさが加わり、キモ陰キャと化しているかもしれない。


 そんな俺に触れられるリスクを背負ってまで、兄貴と相思相愛になりないなんて……。


 パチリと鳴る音がした。


 雛森の覚悟に打ち振るえていると彼女はブラのホックを外すと当然ブラが重力に従い、ずれ落ちようとする。一瞬だけチラりと見えた雛森の乳輪にドキッとしてしまう。


 雛森は慌てて手ブラをして全て露わになることは防いでいる。


「雄司くん、ごめんなさい。水着を取ってもらえませんか?」

「ああ……」


 籠に入った雛森の水着を見て、絶句した。


 いや、これ……。


 ドスケベすぎん?


 明らかに温水プールに行ったときよりも布面積が減っている。某コンビニのお弁当、スイーツの減量も真っ青になるくらい。


 大人しい雛森から想像もできないほぼマイクロビキニ……。


 兄貴に対する想いがそこまで限界突破していたなんて、健気過ぎる。


「雄司くん、紐を持ってくれませんか?」

「え? あ、はい……」

 

 自意識過剰と思われてしまうかもしれないが……、雛森は俺のこと、落としに来てないか?


 ホントは兄貴を落とすためのなのは重々承知しているけれど、俺に雛森がしてくれるサプライズの数々は男にとって、最高のことばかりだったから。


「雄司くん、いいよ」


 目を開けると雛森は片手で器用にビキニ紐を首に掛けていた。雛森本人は目を瞑らなくていいと言ってくれていたが、そういう訳にはいかない。


 これ以上、律香先輩とあどけなさを残しつつも瓜二つとも言える顔立ちの雛森のえっちなボディを見続けたら、変な気が湧いてきて怖かったからだ。


 雛森が首の紐を左手で押さえ、俺が右手で結んでゆく……。そのときに雛森の柔肌に軽く触れると、つきたてのおもちのような感触がして、ドキドキしてしまう。


 加えて初心な雛森が「ふぁっ」と微かな声を上げるので、正直自制するのがツラくなってくる。


「やっぱりこっちも……だよな」

「お願いします……」


 雛森のデカパイにビキニが前に押し出されて、背中で結ぶ紐が乳暖簾のように胸前でダラリとぶら下がっていた。


 紐を取るために雛森のデカパイと目を合わせなきゃならなくて、意を決して見るとこれでもかと横乳が祭りを催している。


 雛森のおっぱいポロリなどなくミッションを無事成功させた俺たちだったが、まだ残っていることがある。


 それはビキニのボトムス……。


 トップスよりも押さえておく難易度が高いのでせめて紐をテープで、と言いかけたときには遅かった。


 雛森はすでにショーツを脱いでしまっており、股間にビキニの生地を当てて、今にも泣き出しそうな声を上げていた。


「ゆ、雄司く~ん……ど、どうしよう……」


―――――――――あとがき――――――――――

これが読まれる頃には年が明けていることでしょう。昨年は色々ありましたが今年も良い年にしていきたいです。

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