第13話 無自覚にハニトラ回避1
――――【
屋上で昼食を取る陽香お姉さま……。
男を知らぬ無垢な瞳、生まれたてかと思うほどの艶やかな肌、
私を虜にして止まない陽香お姉さま!
そんな陽香お姉さまがまさか穢らわしい男と付き合ってしまい、二人仲良く昼食を取っているだなんて!
許せない!
悲しいかな私は陽香お姉さまの一つ学年が下で、同じ教室で過ごせなかったことが悔しくて堪らなかった。ずっと陰から陽香お姉さまを見守っていたけど、気持ちが抑えきれなくなり聖女学院中等部から陽香お姉さまを追うように飛び級で菱川高校に入学した。
またお姉さまと同じ学校で、しかも同じクラスで過ごせると思っていたのも束の間、滝川雄司っていうハイスペ男子が陽香お姉さまをいとも簡単に籠絡してしまった……。
やることなすこと、女子受けがいいことばかりする。
頭が切れ、優しく、顔立ちまでいい……なのに偉そぶることもなく、謙虚で優しい。
これじゃ、二人はお似合いのカップルで私の出る幕なんてないじゃない……。
こうなったら、私の身体を使ってでもあの男を退学にまで追い込んでやらないと!
次の授業はちょうど体育。陽香お姉さまと滝川雄司が離れたときがチャンスだわ。
――――【雄司目線】
もし雛森が律香先輩と同じように眼鏡を掛け、俺に微笑んでくれたら、俺は勘違いを起こしてしまいそうだ。
だが律香先輩と比較され続け、自己肯定感が実質崩壊しちゃってる雛森にそんなお願いをできる訳なんてない。
俺も優秀過ぎる兄貴と比較されてきたから、雛森の気持ちが痛いほど分かってしまう。雛森といるときは「律香先輩より何々」は禁句と言えるだろう。
豚カツに唐揚げ、エビフライという揚げ物チェーン店かよ、と突っ込みたくなる母さん手作りのパワーランチに加え、雛森の肉じゃがの組み合わせ……。
普通なら胃もたれしそうな昼食だったが雛森の肉じゃがは負担になるどころか、まだ食べたくなる魔性の味で……。
「美味しかった。さっき迷惑じゃなけりゃって言ってたけど、迷惑なんかじゃないから。むしろ雛森のお弁当のおかずがたくさん食べたい」
本気でそう思ったから口にしたけど、本当の彼氏でもない俺が言うには図々しいにもほどがある。勘違い発言に自分を嫌になっていると……。
「う、うん。雄司くんの負担にならなければ、作ってくる……。食べた感想、いっぱい聞きたい」
雛森はカーっと緑色の紅葉の葉っぱが赤く染まるみたいに肌を赤くしていた。
昼食を取り終えると次は体育の授業。
「おい、雄司! どういうことか説明しろ」
俺が下着代わりのTシャツを脱ぐとアルミ製のロッカーがガチャンと大きな音を立てた。迫田が俺の行く手を阻むように壁ドンしてきたのだ。
「迫田……ごめん、おまえの気持ちが分からなかった」
脱いだ俺に迫るなんて、なんて大胆な告白をしてくるんだ、迫田の奴は……。
「何言ってやがる! オレはオレは……悔しくて仕方ない」
壁ドンするか、泣くか、どちらにして欲しいんだけど……。
「もう授業が始まるから行くな、あとでじっくり話そう」
体育教師の剛力先生は生徒指導も兼ねているので遅刻に厳しい。
迫田の壁ドンをひらりと躱すと体操服を片手に走りながら、着替えて体育館へ移動していた。俺は間に合ったけど、迫田は剛力先生に捕まり……。
「迫田ぁぁぁ、オレの授業がそんなに不満かぁ? いいんだぞ、別にサボろうが遅刻しまいが。だがもう高校生なんだ、すべて責任を自分で追うことになる。返事はどうしたぁぁ!」
「ひゃ、ひゃい……」
迫田に向かってにたりと笑った剛力先生を見た俺たちは生きた心地がしなかった。
授業も終わり、迫田だけ生徒指導室へドナドナされる悲哀に満ちた光景を見届けたあと、更衣室で着替えて外に出ると一人の女の子が誰かの出待ちをしているようだった。
「滝川くん!」
長い黒髪をツインテールにした大人しそうな美少女が俺と目が合うと声を掛けてきた。
はて、この目はどこかで見たことのある目。
さっき屋上で俺を見る鋭い視線は彼女から放たれていたものだ。いやそれ以前に見たことがある。
兄貴たちに呼び出されたファミレスで雛森のあとからぶつかってきた3人の内の1人……。
「えっと千曲さんだっけ? 俺になんか用かな?」
「あの、私……滝川くんのことが……」
どうしたものか?
妙に潤んだ瞳で俺を見つめてきたけど……。
―――――――――あとがき――――――――――
私事ですが第3回「G’sこえけん」音声化短編コンテストに人妻ASMRをぶっ込んだんですが落ちてました。流石にネタがヤバかったみたいwww
審査に参加されてる声優さんのお歳を考えれば当然ちゃ当然ではあるんですが……。
井上喜久子さん、早見沙織さん、茅野愛衣さんというお母さん声優三傑が揃われる回があるならば再び出してみよう!(そんな時が来るのか?)
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