火焚龍之介の過去
僕は捨てられた。それも両親に。
今でも思い出すのは視界いっぱいの赤色。
だから僕は、愛されなくてはいけない。
他の皆んなが当たり前のように貰っている両親からの愛を、僕は貰えなかったのだから。
『やけに機嫌がいいな、リュウ』
『そう?やっぱりぴかりんは分かっちゃうか』
『何があったん?』
『んー、"上手く別れられた"ってこと?』
『……あぁ、読めたわ。もういい』
『えー?自分から聞いといてそれはないんじゃない?』
制服を少し着崩しながら、足を組んで菓子パンを食べる彼の頬をつつく。
彼は食べづらそうに口を動かして、こちらに抗議な視線を送る。
彼と目が合った僕は、尚も気色に満ちて笑う。
彼はため息をついた。
『中学入って何人目だよ、リュウ。これじゃあいつ刺されてもおかしくねぇぞ』
『んー、もしかしたら女子じゃダメなのかもねぇ』
『はぁ?どう言うことだよ?』
『———ぴかりん、僕のこと、どう思う?』
『……はぁ?』
僕は上目遣いで彼を見上げる。
少し冗談くさく口元を突き出して、彼の瞳を見つめてみる。
彼は語気を荒げて言った。
『ば、馬鹿かよ!女でダメなら男とか、安直過ぎるだろうが!!』
その顔は真っ赤だった。
『……えー、ガチじゃん』
『う、うるせぇ……』
そのまま黙ってしまう彼を見て、それほど悪くない案なのではと思い始める。
『じゃあちょっと、良さげなの探してくるね』
『マジかよ』
『あ、僕の分の菓子パンあげる』
『……おう、ありがとな』
『食べかけだけどね。じゃあねー!』
そう言って教室を後にした僕が最後に目にしたのは、ヤケクソみたいに僕のパンを丸呑みしている彼だった。
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