火焚龍之介の過去


 翌日、僕の机の上には大量の牛乳がぶちまけられていた。


 机の上には殴り書きのような文字もあって、他には彫刻刀で削ったような箇所もあった。


 ネットでイジメのやり方を検索してきたような惨状だった。


 教室の隅でクスクス笑ってる、三人の女子に目を向ける。


 同じように笑っている人が、他に4、5人居たけど、殆どの人は戸惑っているようだった。


 小学生にイジメの対処法など、分かるはずがなかった。


 当然僕も分からなかったので、先生にこのことを話に行った。


 最初は驚いていたけど、徐々に気まずい顔になり、最後は小声でこんなことを言った。


『龍之介くん、心当たり、あるでしょ?』


 後日、僕と彼女の2人が集められた。


 ほんの数日前まで、付き合っていた彼女とである。


『ほら、2人とも、ごめんなさいしようね?』


 僕は先生の言っていることが分からなかった。


『確かに、めぐちゃんも酷いことしちゃったけど、龍之介くんもその前に悪いことしちゃったから、これでおあいこ』


 そう言って厳しい顔を作る先生の顔を、僕は呆然と見上げていた。


 どうやら、彼女から僕と別れたことを聞いたらしい。その際に酷いことを言われたと、彼女は伝えたいのだ。


 しかしそれより滑稽だったのが、先生に怒られて本当に泣いている彼女の方だった。


『ご、ごめんなさい……』


『偉いわね!めぐちゃん!ほら、龍之介君も!』

 

 どうして僕が謝らないといけないのか、全くと言って良いほど分からなかった。


 尚もぼーっとしている僕に向かって、先生は怒ったような口調を作った。


『悪いことしたんでしょ?じゃあ、謝らないといけないよね?』


 僕は黙ってその場を去った。


 頭が混乱して、どうするべきか分からなかったからだ。


 結果的に僕はこっぴどく怒られるようになり、彼女たちはそれを見て密かに笑っていた。


 先生に嫌われた僕は、その後も都度あるごとに槍玉に挙げられることになる。


 ここで僕は、元からの信念を再認識した。


 "人に嫌われてはいけない"


 "人に愛されなくてはいけない"

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