劣等
「……元々、お二人は付き合っていたんですか?」
「そうそう。もともと彼氏と彼女の関係だったんだけどさぁー、少し喧嘩?みたいな事しちゃって。つまらない事なんだけど、それでもお互いに距離を置くようになっちゃってさ、私も意地になっちゃって新しい彼氏作って気を引こうとしたんだけど、暫く音信無かったから何してるのかなーって思ってちょこっと友達に話聞いたの。そしたらリュー君は彼氏作っちゃっててさ!!もう本当にビックリしたの。あぁ、もう終わったぁー、って思ってたけど、突然今夜会えない?みたいな連絡がリュー君からきてさー、もう、舞い上がっちゃって、すんごい急いで来てみたらさ、プレゼントまで用意して待っててくれて!!もう、なんかブワッって来ちゃった。それで嬉しいなー、また付き合いたいなーって思ってたら、なんと本当に、もう一度付き合えることになりましたぁー!いえーい!!」
リュー君の彼……そういえば、名前聞いてないや。まぁいっか。
顔が小さくて、甘い匂いのする、ワンちゃんみたいな可愛い子。ピンクの丸いメガネがよく似合っていて、涙で濡れたのか、レンズに弾かれた光がところどころで妙に漏れている。
そんな儚くて、守ってあげたくなる子。
嫌だなぁー。
「だから、手伝ってあげるからさ、直ぐに出てってよ。今日から私とリュー君がここに住むから」
だから、私は本当に幸せそうな笑顔を作ってそう言ってやる。
本当はリュー君の彼氏なんてぶん殴ってやりたいくらいだけど、今の私は気分が良いから、ニコニコ笑顔で接してあげる。
ずっと困惑した表情のまま、身動き取らずに突っ立っている彼を見ながら、私はずっとニコニコしている。
やがて彼は口をモゴモゴと動かし始める。
「りゅー先輩は、何処に行ったんですか?」
「今、関係ある?その話。無いよね」
「あ……あり、ます。だって、先輩は」
「先輩は?何?貴方の何?ただの先輩だよね?もう貴方にとっては、ただの先輩だよね?」
「あ……う、う、五月蝿い!!!」
突然声を上げた彼。
私は笑顔を消した。
「せ、先輩に捨てられた癖に!!僕らの事、何も知らないくせに!!貴方はもう先輩と別れたんですよね?!なら、僕らには何も関係ない人じゃないですか!!どっかに行って下さい!!僕らに関わらないで下さい!!これは二人の問題なんです!!」
きゃんきゃん吠えて、鳴き声を出し切って、そんな彼は酷く惨めで哀れで可愛く見えた。
私は最後まで吐き出すのを待ってあげて、彼の息が続かなくなった事を確認してから、ゆっくり話す。
「私はリュー君の代わりに貴方に別れを言いに来たの。そうリュー君に頼まれたから。分かるでしょ?今邪魔なのは貴方だから、その言葉は全部筋違いなの。だからどっか行って。理解して。私達の邪魔しないで」
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