第2話
さて、ここからだ。豊臣恩顧派と徳川臣従派に分かれる。これは、避けられないだろう。でも、確実な分断を阻止することは出来るはずだ。迷っている大名は多いと見ている。
まず、私は大阪城へ向かった。
淀殿に恩賞の相談をするためだ。
「朝鮮に渡った諸将は、私財も使い果たし貧困にあえいでいます。ここは、恩賞を出すべきです」
「え~。成果もないのに恩賞を出すってなによ? 逆に所領を没収して改易じゃない?」
「豊臣家だけが栄えても財を使いきれません。秀頼さまをお支えする家臣を増やさないと」
「豊臣家に謀反する家があるっての? あり得ないんだけど。まあいいわ。面倒だから任せるわ」
「良きに計らえ」――秀頼
「はは~」
ダメだな。この母親がいる限り、豊臣家の没落は避けられないのかもしれない。
だけど、それをなんとかするのが私の役目だ。
もうね、恩賞をいっぱい出す。インフレ起きそうなほど出す。
加藤家や黒田家もこれで怒りを収めてくれた。表面的だけど、冷静を取り戻してくれたと思おう。この間に、対策を練れば手出し出来なくなるはずだ。
「さて、こっからだぞ」
私の大河ドラマ知識を総動員する。
ここから動くのが、徳川家康さんだ。
(諸大名を訪問して、他家との婚姻を決めちゃうんだよね……。文治派と、武断派を形成することになる。一流の策略家だよね)
「最上位の策というのであれば、派閥形成の阻止だけど、私ごときが阻止できる訳がない。相手はあの徳川家康なんだ。戦術・戦略で戦う場合は、相手の知能レベルを計算に入れないとな……」
わざと豊臣家に喧嘩を売って、味方を増やす計略。私では太刀打ちできないけど、未来の知識があれば、あるいは行けるか?
そう……、私の戦略は、家康に言いがかりをつけさせないのと、豊臣恩顧の大名を残すことだ。未来の知識を総動員して、家康に何もさせない。
いけっかな~。
◇
五奉行と五大老が集まった。狸抜きだけどね。狸が、婚姻政策をゴリ押ししてるので、問題視し始めたんだ。
「徳川殿の行為は、【起請文】に反するばい!」
「そうだそうだ! 秀頼さまに対する謀反だ!」
「まあまあ、皆様方落ちつかれよ」
当事者になると分かる。豊臣家の結束を崩し、自分の味方を探る行動だ。
一流の策略家だね。
しかも詰め寄っても、ドラマだと「黙らっしゃい」で終わりにするはずだ。
「そもそも、五大老筆頭である徳川さまが、誰に相談する必要があると言うのですか? 今回は目を瞑って、再度起請文を出して頂きましょう。婚姻を結ぶ前に、豊臣家に事前相談してくださいって」
「「「えええ!? 余りにも弱腰過ぎない?」」」
戦にはなんないんだけど、一歩間違うと即座に、五大老・五奉行制度が崩壊しちゃうのよ。
それだけの力が徳川家にはあるんだよね。
その後、前田利家さんに仲介をお願いして、事なきを得た。ここは、歴史通りだ。
挑発はまだ続くけど、真正面から受け止める必要もない。とにかく策謀は躱して行こう。
今は、五大老・五奉行制度の維持が最優先だ。
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