【関ケ原の戦い】を起こさないために~人の心が理解できる三成は奔走します~
信仙夜祭
第1話
「なに? 太閤殿下(豊臣秀吉)が身罷られただと?」
最近寝込んでいたけど、薬湯の甲斐もなく亡くなられてしまったか。
こうなると、今までの強引な政策の反発が予想される。
その中で最たるモノが、【慶長の役】だ。
私は、すぐに淀殿(茶々)に面会を求めた。
「太閤殿下亡き今、朝鮮出兵を中止すべきです!」
もうね、回りくどいことは抜きだよ。核心から話す。
「まあ、いいんじゃない? 得られるモノもないみたいだし~。それよりも、秀頼の権力を確実なものにしてね。特に、狸には注意してね。あの腹黒は、警戒したいの」
「はは~」
即座に面会を終えて、私は九州に向かった。もうね、手紙とか言ってられないんだよ。
何度か、太閤殿下を騙すような行為をとってまで、朝鮮出兵を止めようとしたんだけど、全部無駄だったし。まあ、切腹を言い渡されなくて良かったかな。
「殿! お供いたします」
島左近が来た。
「貴殿は、私の名代だ。京を頼む。兵を大阪城へ集めてくれ。謀反の事前防止だ」
政変が起きるなら今しかない。その抑止力だ。
部下が少ないんだよね~。信頼できるのは、島左近しかいない。
左近君は、渋々納得してくれた。
◇
私は、陸路と海路を使い九州の名古屋城へ向かった。
そして、唐入りの撤退命令を出す。
諸将は、困惑気味だ。得られるモノがなく、万人の死者を出すだけの結果になってしまったからだ。
豊臣恩顧の家臣団でも、亀裂が入っている。それくらい、評判の悪い出兵だった。
名目上は、五奉行と五大老の命令だけど、太閤殿下になにかあったのは、誰の目にも明らかだろう。
そして、三ヶ月後に全軍の撤退が完了した。
「頭痛て~。もうね、視線が痛いのよ。全ての大名から敵意を向けられているよ。太閤殿下の命令だったんだし、どうしようもないじゃん。私に恨みって筋違いだと思うんだよね」
三ヶ月に及ぶ撤退戦は、俺の精神を削り切っていた。
その後熱が出て、寝込むことになる。
起きているのか、寝ているのか……。
まどろみの中で、何かを思い出して来た。
「川角太閤記……。天正記……。シミュレーションゲーム?」
苦しみの中、私の前世の知識が、少しだけ蘇った夜だった。
朝起きて、確認する。
まだ、朝日が昇った時間なので、静かだな。
「俺……、
ここで、大谷吉継さんが来た。私の数少ない友人だ。
「のう、三成殿。もうすぐ、黒田殿たちが来る。すっげー、怒ってそうだけど大丈夫か?」
冷汗が出る。
三成のここでの失言は、後世に伝わっている。
「蔵を開いて、おもてなしの用意をお願いします」
「ほう?」
◇
「皆々様にかけたご苦労、亡き太閤殿下の名代として頭を下げさせて頂きます」
「「「てめぇ~。俺たちが異国で何食ってたか知ってんのか!?」」」
「ご怒りはごもっとも。私も異国へ渡った身。豊臣家から恩賞を送らせていただきます。何でも言ってください」
「「「……」」」
その後、酒宴を開いた。私も朝鮮に渡ったんだ。後方支援だけじゃないんだよ。
その時の苦労話で痛みを分かち合う。
加藤清正さんと福島正則さんは、渋い顔だ。怒りの矛先が欲しいんだろうな。
宴会は、盛り上がらずに終わったけど、問題も起きなかった。
ドラマなんかでは、『三成は人の心が分からない』とか言われてるけど、今日は問題は起きなかったみたいだ。
そして、気がついた。
「歴史を変えられるのであれば、まだ間に合うんじゃね?」
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