大陸一枚岩戦線
納骨のラプトル
第1話 エナプタの目覚め
光宣暦286年――この世界が生み出されて、
この世界――私たちが「
大陸が一枚だけあって、周囲に全て海があり、その一枚だけが海に浮かんでいる。その中で、多くの国家が成立し、その国家たちが戦闘に突入するというところは、ある意味当然の摂理と言えた。今回問題となっているエレムロスとセイカデントの戦いもこれで四回を数えることとなる。だから問題、とも言えるのだが。
現在のところ、この
~~セイカデント王室~~
「王へ伝達いたします。先ほど入電した通り、エレムロス独立国家が我々に宣戦布告。それを受け、前方の部隊がハラムズ山脈の偵察を開始。渉外班はバビシェッド帝国との交渉に向かいましたが、バビシェッド帝国は今回の戦争への関与を拒否。両軍ともども、侵犯すれば即刻
「そうか……ご苦労、下がりたまえ」
ワシがそういうと、その部下は深く礼をして去っていった。そうか、バビシェッド帝国の協力は得られなかったか……
「おい、世界地図を」
そういうと、そばにいたワシの腹心が服の中から地図を取り出した。何度見ても小さな地図だ。地域ごとの地図ともなれば、もっと大きいのだが。さて、作戦を考えなくては。
「バビシェッドの協力がない以上、選択肢は山道か海路か……」
海路というのは、セイカデント北方のシュラブ港からエレムロス西方のチャマッケ港を目指すルートだ。危険度で言えば、ハラムズを通過するのと大差ないだろう。陸路という選択肢は、バビシェッドの協力がなかったので消えた。
「……あ、そうだ。空路という選択肢もあるな。おい、
そばにいた部下たちが、申し訳なさそうな顔をしていた。どうやらできないらしい。
「
「……三年前の、あの戦争か。」
ワシがそうつぶやくと、部下たちは重苦しい表情をして押し黙った。
「……ならば仕方あるまい、今回は空路は使わない。軍事参謀と
部下たちが彼らを呼びに走ったのを見て、ワシは頭を抱えていた。
~~同時刻 エレムロス議会~~
「こっちから仕掛けた戦争で、負けるわけにはいかないでしょう」
「しかしエトーア議長、相手が悪すぎます。いくら我々も領土問題の
「ダビス副議長は、民主主義を疑うのかね。セイカデントへの宣戦布告は議会で採決した通りではないか」
「そういうわけではないですが、しかし――」
エレムロスは議会制だ。ナケン公国時代の貴族たちの圧政から逃れるという名目で、議会制を取ることとなった。しかし、議会の中での発言力に差が生まれているのが現実である。特にこの、議長エトーアと、副議長ダビスはかなり強い発言力を持っていた。
彼らが言い争っていると、突然、バーンと音を立てて、一人の議員が飛び込んできた。
「お取込み中失礼します、バビシェッド帝国より入電が。」
「君は……ピガンか。それで、内容は?」
「はい、以下の通りです。『バビシェッド帝国は今回の戦争について関与しない。侵犯したものは、両軍即刻拿捕する』と」
「……陸路は使えんな」
「議長、バビシェッドが関与しないと言ってるんです。つまり、今回の戦争を甘く見られてるってことですよ」
「……どういう意味だ」
「バビシェッドと言えば、現在ある十国家のうちで唯一属領を持ってる国ですよ。その国が属領拡大の
「……ペローダス国か。最後まで抵抗していた、現在はバビシェッド領のあの国だな。我々と同じで民主主義国家だから、同情せざるを得ない」
「それで、議長。どうなさいますか、此度の戦略は」
「議員の中に軍隊学を学んでるやつがいる。そいつとの話し合いからだ。おい、ゼス!どこにいる?」
今、私の名前を呼ばれた気がする。しかし眠いな。議会の中だが、少し眠ってもバレないだろう。
「おいゼス!寝るな!ちょっとこっちに来て、我々と作戦を考えるんだ!」
あーあ、バレてしまった。仕方ない。彼らと作戦を考えることにするか。
「あー、それからピガン!」
「はい、何でしょう議長」
「……今すぐナケンに電報を送れ。内容は……」
議長は大げさにタメを作って言った。
「同盟だ」
~~同時刻 バビシェッド帝国 ヘルダムス派本部~~
「しかし親分、本当に今回の戦争、指くわえてみてるつもりですか?」
「黙れエラムダ。ちゃんと俺にも考えがある」
バビシェッド帝国は、現在このヘルダムス派が権力掌握している。一応
「しかしまぁ、侵犯したら拿捕ってのはギリギリわかりますけど、なおのこと横からつついた方がよかったんじゃないですかね?」
「今回の戦争、何かありそうでな。まだ宣戦布告しただけだろう、この後ナケンやペローダス、あるいはカレバントが手を出さないとも限らない」
「カレバント帝国?まさか、あそこは帝国とはいえ議会制でしょう?ナケンが何もしない限り、まず間違いなく何も起きませんよ」
「そうか、ナケンなら動くかもしれないぞ」
「……まぁ、親分の言うことなら付き従いますけど。さぁ、礼拝の時間ですよ」
ヘルダムス派、というのは教派だ。いわゆる
彼らが礼拝を終えて向き直ると、全員が血相を変えて真剣に議論を始めるのであった。
大陸一枚岩戦線 納骨のラプトル @raptercaptain
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