第2話
「綾」
「何?」
ある朝、お母さんに呼ばれた。
「ちょっとヒロくんち行ってきてくんない?」
「なんでよ」
ヒロくんは、隣の家に住んでいる。そのうえ同い年だから、小さい時から仲が良かった。
ちなみにヒロくんの本名は
「前にヒロくんのお母さんにお世話になったからさ、この袋渡してきて」
「何入ってるの?」
「お菓子」
ふうん、私にはくれないのにヒロくんにはあげるんだ。まあ、いいけど。
玄関へと向かい、靴を履く。
ヒロくんちはうちと違って綺麗だ。
いつも家を出るたびに思う、何故私の家はこんなに汚いのだろうか、と。まあ、それが何故かはすぐわかるしわかったところでどうでもいい話なのだけれど。
ヒロくんちのインターホンを押す。
少しして、ヒロくんのお母さんがインターホン越しに話してくれたので、「ヒロくんいますか」とだけ聞いた。正直言って、ヒロくんのお母さんよりヒロくんとの方が話しやすいのだ。
ドアが開き、その隙間からヒロくんが顔をのぞかせた。私と目を合わせた後、こちらに寄ってきた。
「……何で来たんだ?」
「お母さんが、これを渡してって」
「……」
ヒロくんは一度考えてから、こう言った。
「そうか、お前のお母さんはもう、決めたんだな」
「え?」
何を言っているのかさっぱりわからない。最近、私の周りの人はみんなおかしいような気がする。
「お前が気づいていないようだから言うが……少し、場所を変えよう」
「あ、うん……」
私には何が何だか理解できなかったが、とにかくヒロくんが真剣なのは伝わったので、取り敢えず彼についていく。
ヒロくんが選んだのは、近所の公園。ベンチに腰掛け、再び話し始めた。
「どこから話せばいいのか……。お前のお母さんには事前に、『綾が袋を持ってきたら伝えておいて』と言われていたんだ」
うん。で、何を伝えられるの、私は。
「とうとう、その時が来たんだ。……お前、自分の体について知っていることだけ話せ」
急に質問されて戸惑ったけど、薄々気づいていた。もしかしたらヒロくんも知ってるのかな、って。理由はわからないけれど。
「うーん……。私がアンドロイドみたいなもので、変な機能がついてるってことくらいかなあ。あっあと、タイムトラベルとかどうのこうのってお母さんが」
「なるほどな……」
そう言い、ヒロくんはしばらく「考える人」になった。
どれくらい待ったことか、またヒロくんが口を開いた。
「俺、実はさ」
「えっ?」
何か重大なことを打ち明けそうだ。これってもしかして、恋の予感ってやつ――!?
「な、何……?」
私は、できるだけ平静を装って聞いた。
「猫に化ける能力を持ってるんだ」
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