さよなら私の平穏な人生!!
emakaw
第1話
「
土曜日の朝、寝起きに母からそう告げられた。
「えっ、何?」
「いいから早く座って」
そう言われ、自分の椅子に座る。
それにしても、どんな話なのだろうか。
もしかして、勝手にお菓子を二袋食べたこと? テストで平均点以下を取りまくってしまったこと? お皿を洗おうとして、結局三枚の皿を犠牲にしてしまったこと?
ああ、駄目だ。心当たりがありすぎる。
「で、どう……したの?」
びくびくしながら私は聞く。
「……ずっと、隠しててごめんね?」
「えっ、あっ、うん……?」
怒られると思っていたら突然謝られたので、間抜けた声を出してしまった。
「綾の体には、実は機械が入っているの」
「……?」
何秒間か私の思考は停止した。
「それって……つまり?」
「あなたはアンドロイドなのよ」
……。
アンドロイドって、あのアンドロイド?
「ワレワレハ ウチュウジンデス」っていうやつ? あ、それはただの宇宙人だ。
ええと、だから、私はロボットっていうこと……って、
「ロボット!?」
「はあ……やっと気づいたのね」
「で、でも私ちゃんと成長してるし、胸だって……」
「ああ、誤解しないで。アンドロイドってのはわかりやすく言っただけ」
どういうこと?
「あなたの身体の一部に、特別な機械が埋め込まれてる。……そうね、じゃあ、『モニターを表示して』って言って」
……あやしい。さすがにその程度の嘘に騙されるような年齢じゃないよ、私。
でも……気になるっちゃ、気になる。
「……モニターを、表示して」
次の瞬きの瞬間、目の前に何かアイコンのようなものが数個現れた。
「お母さん、これ何?」
「……その様子だと、成功してるみたいね。なんて書いてある?」
半透明のそのアイコンは少し読みづらかったが、ノートのイラストが描かれたもの、歯車……これはわかる、設定だ。あとは眼鏡のイラストに耳のイラスト。一番右に三つの点があるが、パソコンなどを使うときによく見かけるマークだ。多分、「その他」にあたるのだろう。右から二番目には時計のイラスト。時間がわかるのかな?
「ノートのやつは体調管理ね。眼鏡はズーム機能、耳は感度調節。重要になってくるのが、時計のアイコンよ」
「えっ、そうなの?」
ただ時間を知るだけのものがそんなに大切なのだろうか。
「いい、あなたにはタイムトラベルをしてもらうの。未来を変えるために」
「……うっそぉ!」
あまりの驚きに少し反応が遅れた。
「そ、そんな、未来を変えるだなんて。私にそんな大役務まるのかなぁ……」
「あー、これだけは覚えておいて? 絶対にこの国や世界の全てが変わるようなことはしちゃだめだから」
「……?」
「だから、例えば関ヶ原の戦いで石田三成が勝つようにしたら駄目だよ、ってこと」
なんだ、それなら大丈夫そうだ。そんな力、私は持ち合わせていない。
「えーと……タイムトラベルって、いつするの?」
「それは、またいつか」
……はあ。
その時、私は重大なことに気がついた。
――……その様子だと、成功してるみたいね。
今思えば、確かにお母さんはやけに詳しかった。
そもそも、私は何故機械人間にならなければならなかったのか。
それを何故私は聞けなかったのか――。
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