第22話 残り一日は
前日は休むとして残り一日で何をしようかと考え、さらに進むかと思っていたけど考えを改めたんだ。
当初はあと少しで200階だから押し切っちゃおうかなと考えていた。
だけど、リアナたちと探索するに200階まで到達することはないだろうから、後回しでいいかなと思ってさ。
というわけで101階に来ている。彼女らの実力なら100階までは危なげなく進めるだろうから再度下見をしておこうと。
彼女らの実力なら101階でも問題ないとは思うのだが、101階でモンスターの強さがグンと上がって戸惑った経験がある。マップはとっているけど、モンスターの特徴は頭の中だけにしかない。復習だ、復習。何事も念には念を、である。
パーティで進むことを想定しソロ専用の「ランナー」と「縮地」は使わず、テクテクとダンジョンを進む。
さっそく蔦で歩く真っ赤な一輪の花が咲いた植物型のモンスターと遭遇した。こいつは確か甘い息? と花粉が特徴だっけ。甘い息の方は何かしらの状態異常だと思う。俺には効果かないので状態異常の種類が何かはわからない。甘い息は広範囲に渡るから回避することはなかなか難しそうだ。俺にとっては甘い息を吐き出している間にモンスターが無防備になるので、ただのラッキータイムになるのだが。耐性がない探索者にとっては嫌らしい攻撃になる。
もう一方の花粉は俺にとっても中々厄介で、花粉をばら撒いて数秒経つと……。
歩く花のモンスターから全速で距離を取る。ほおらきたぞおお。
ゴオオオオン!
次の瞬間、凄まじい轟音が響き渡った。見ての通り爆発と轟音がくるのだ。発動まで猶予があるものの、こちらも広範囲で、殺傷力が非常に高い。
しかし、爆発するまでの時間的猶予があると分かっていればどうということはない。爆発が収まった後、一息に迫りファングを一閃。モンスターは光となり消えていった。
「さあ、次々」
『早く進むモ』
ファングを消し歩き出そうとしたら、マーモが膝をツンツンしてせかしてくる。
せかす理由は一つ。早く箱を開けてモグモグしたいだけである。
こいつは本当にブレないな……。そうそう、彼はこちらがどんだけ速度を上げても余裕でついてくる。体は小さいのだが、スピードとスタミナは俺以上なんじゃないか。『疲れたモ』とか言って休んでくれれば嫌味の一つでも言ってやるってのに。
「ゆっくり行こうと思ってる。110階で帰ってもいいかなってさ」
『箱開け……』
「昼までには着くだろうから、箱を開けてから帰ろう」
『仕方ないモ』
帰ると伝えたらせかしてこなくなった。外に出ればいくらでも食べることができるからね。
◇◇◇
そんなこんなで104階。
おお、80階を超えてから始めて探索者を見たぞ。
探索者は二人組だった。どちらも軽装で近接戦闘をしている。敵はグリフォンメイジとスクリーマー(モンスターの名前はマーモ調べ)。
二人組はどちらも女性で二人とも人間以外の種族なようだ。黒髪の方は頭にツノが、もう一方のピンク髪はタヌキのような獣耳が見える。
二人とも俺が近くにいることに気がついていそうだが、こちらを見る余裕はなさそうだった。彼女らは俺の背後にいるモンスターの存在も把握していそうだ。
なら、俺のやることは一つ!
「後ろは俺がやる!」
二人まで届くよう声を張り上げ、振り返る。
こっちも彼女らと同じグリフォンメイジとスクリーマーが今にも俺に襲い掛からんとしていた。
『モンスターの名前は覚えたかモ?』
「一応な、グリフォンメイジとスクリーマーだろ」
グリフォンメイジとスクリーマーとは戦ったことがるから、特徴を把握している。
だったら新しい戦い方を模索してみるか。
現在の俺のスキルはこうである。
『固有スキル:吸収
スキル:毒・麻痺・睡眠・恐慌・石化耐性
スキル:ランナー
スキル:ファング
スキル:縮地
スキル:フレイムウィップ
スキル:アクアブレス
スキル:鳴動
スキル:光あれ
スキル:自己修復(中)
スキル:瞑想
スキル:流水』
耐性は更に強化されたことと、使えそうで使えなかったモンスターを麻痺させるスキルの代わりにランナーが入っているといったところ。
いつもならアクアブレスで牽制のところだけど……。
獅子に鷹の翼をつけたようなグリフォンより一回り大きなグリフォンメイジとボロボロの灰色ローブに中が真っ黒な影であるスクリーマー。
奴らが選ぶ初撃は炎の弾丸に身をすくませる叫び声でほぼ確定だろう。過去に出会った時、全てそれだった。
こちらが身構えるより早くスクリーマーからガラスを引っ掻いたような金切り声が発せられる。
もう一方のグリフォンメイジが選択したのは炎の魔法ではなく……突進だった!
メイジと名称がついてるからといって侮るなかれ、グリフォンよりも強靭な肉体を持ち、突進力も増し体の大きさも相まって一撃喰らうと立ち上がれなくなるほどだ。
スクリーマーの叫びでこちらを固めて遠距離からの回避不能のブレスがこの組み合わせの必殺と思っていたが意外や意外。
ならば、こうだ。
「スキル『光あれ』」
スキル名の通り、俺の全身から目も眩むほどの閃光が発される。
光るだけであるが、俺に狙いをつけて突進していたグリフォンメイジには効果抜群だったようだぜ。
眩しさでよろけたグリフォンメイジの隙を突き、首元へファングを深々と突き刺した。
易々とグリフォンメイジを仕留めた俺は勢いを止めずスクリーマーへ。
「あれ」
スクリーマーの姿がない。奴の動きは遅いから俺より速く見えない位置まで移動するってことはあり得ないはずだが……。
警戒を強める俺へ呑気なマーモの声が。
『もういないモ』
「なんかしらんが倒したのか」
『光あれで攻めてたじゃないかモ。忘れるのがいくらなんでも早すぎるモ』
「あー、そういう」
104階のモンスターだからか吸収を示す脳内メッセージが出ていない。この階じゃもうステータスが上がらないからね。スキルもロックしてるし。
光あれは目くらましだけじゃなく、アンデッド属性のモンスターを消し飛ばすみたいな効果もあるんだろう、きっと。
思ったより使えるスキルなのかもしれない。
難点はモンスターを見てもアンデッドかどうかなんてわかるわけがないってことだな。「死者が蘇ったモンスター」とされるアンデッド属性であるが、他のモンスターと同じく倒したら光の粒となって消えるわけで、相手が何属性なのか調べる手段もないからな。
マーモの教えてくれる情報にはアンデッド属性かどうか、ってのは含まれていない。
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