第21話 500階はあるモ
「ザ・ワンっの最深部って何階なの?」
『500階はあるモ。今も深く深くなっているはずモ』
500だと!?
深層に興味の無かった俺であったが、リアナたちと一緒に潜ることになったので探索者センターで多少のお金を払って情報を仕入れてきたのだ。
まず探索者ランクについてなのだけど、ランクを決定づけるのは何階まで進んだのか、の一点だけである。
ランク自体は知っていたが、どうやって上がるのかってのに興味がなく(1階専門だったもので)、資質やらは考慮されてないと知って少し驚いた。
現在の俺のランクであるEランクからDランクにあがるには4階に到達すればよいとのこと。4階だと証明するものがないのだけど、自己申告でよいのだろうか?
時間もなく興味もなかったので詳しくは聞いていない。
間を飛ばして10階到達でCランク、20階到達でBランク、30階到達でAランクにあがることができる。この辺りは分かりやすいな、うん。
そして、Sランクになるには100階到達になるんだ。それ以降はどこまで潜ってもSランクのママとなる。
このことから探索者ランクAとSは同じランクだろうが、実力にかなり開きがあることが分かってもらえたと思う。
ブルーノたちのように30階辺りがせいぜいなパーティとリアナたちは大きな開きがあるけど、同じランクであってもランクの仕組みから仕方がない。
あとはだな、到達さえすりゃいいのでパーティにくっついて30階踏破の証明書さえ取れればAランクにあがることができるのだ。
ランクアップの条件を満たしていてもランクアップするかしないかは本人に任される。ランクアップの申請をせずに「上がらない」選択もできるってわけさ。
なんか穴だらけなランク制度だし、ランクがあがったことによる恩恵はパーティメンバーの斡旋くらいだから俺は現在もEランクのままである。
Aランクだったら定期的に探索者センターからお金がもらえるとかなら、即飛びついたけど……。
ここまでの情報は探索者センターで配られている無料冊子にも書かれているのだということだ。
有償の情報だったのは、現在のAランクの最深部記録とSランクの最新記録だった。
それぞれ、Aランクは79階、Sランクは132階とのこと。
ただし、探索者センターに申告があったものに限る。俺のように変に騒がれたくないから申告してない者もいるだろうから、あくまで参考値だな。
それにしても500階以上か……。
「キリがないなあ」
『根気の無いクラウディオだモ。縮地とランナーを使えば少しはマシになるんじゃないかモ』
「マーモ、俺の持っているスキルの性能が分かるの?」
『クラウディオは一応、マーモのマスターだモ。分かって当然モ』
「そいつは……めっちゃ助かる」
『自分のスキルがどういうものか分からないとか、頭がわいてるんじゃないかモ』
こ、こいつ言わせておけば。ま、まあ、俺のスキル情報が試さずとも分かるなら許してやろう。
話に出た「縮地」の方は使ったことがあるが、イマイチ使い勝手が悪かったんだよなあ。切る候補の一つである。
縮地は一歩の距離が三歩分に伸びるのだけど、感覚的には一歩進んだままで、距離だけが伸びるから気持ち悪くてね。
直線にしか進めないし、間に何か遮蔽物があると回避もできずぶつかる。
距離感がつかめなくて戦闘での使用に耐えないんだよね。使いこなせれば戦闘でも活用できそうだが、結構な修練が必要だと思う。
もう一方のランナーは走った時の疲れが三分の一になるスキルなのだって。歩くと走るの境界線をちゃんと把握できれば移動の時には良いかもしれない。
走りながらモンスターの気配をどうやって掴むかが肝だな。
◇◇◇
「マーモ、あれは?」
『メタルドラゴンだモ』
「まんまだな……」
『硬い、熱線吐くだモ』
「さんきゅー」
『早く倒して箱開けるモ』
「りょーかい」
鉄ぽい光沢の表皮を持つドラゴンぽいモンスターを熱線に注意しつつ、ちまちま削って倒す。
マーモがモンスターの名称に加え、簡単な特徴も教えてくれるから何も知らないより戦いやすくなった。
そんなこんなで140階も突破。
食事休憩して更に進むぞ。ランナーの運用にも慣れてきたし、縮地も使いどころによっては戦いに生かすことができるようになってきた。
141階に入るなり、ランナーを発動。ランナー発動中は全力疾走しても驚くほど疲れないんだよね。
ただ全力で走ると周りがおろそかになる。
直線の回廊の先にモンスターらしき影を発見。ゆらゆら影が動いていることから浮遊しているのかと予想する。
「マーモ、前方のあれ、飛んでる?」
『グレートモンバットだモ。コウモリの親玉みたいなモンスターだモ。柔らかいけど、素早いモ。魔法も使うモ』
「りょーかい」
見てろよ、こいつが俺の新スタイルだ。
グレートモンバットが近づくも 全力疾走のまま速度を落とさない。
相手も俺に気が付きコウモリの翼をはためかせ、全身がぴかぴかと発光しはじめた。
「スキル『縮地』」
ここで縮地により速度が三倍になる。
突然速度が倍以上変わったため、グレートモンバットの認識がズレている間にファングによって下から上へ斬り上げ、仕留めた。
これぞ、ランナーと縮地を使った不意打ちである。
難点は直線上でしか使えないことだな。それでも、不意を打つことで楽々モンスターを仕留めることができるので、随分と楽になった。
この階層までくると忍び寄って不意を打つことはほぼ成功しない。高度な忍び足系のスキルを持っていたら可能かもしれないけど、残念ながらまだそのようなスキルには巡り敢えていない。
そんなこんなで結局5日間ザ・ワンに籠り、一旦帰還した。
リアナたちは120階以上に進み、解呪の書? をゲットしたいと言っていたので予習としてはこんなところで十分かな。
あと二日あるから、一日ゆっくり休むとしても一日残るからもうちょい進んでみるか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます