チャプター8:「揃い踏みの犠牲者」
フラストレーションを煽る回です。
作者のツ・ブ・シ・タ・イと思う物を、欲張り全部盛りスペシャルにしました。
――――――――――
おおよそ同時刻。
場所は、制刻等が無力化した戦車『リングキャット』よりさらに北東側。
そこにはまた一輛の戦車――『ムシャヒメ』と、一輛の装甲兵員輸送車が並び配置。さらに周りには、07式特殊防御装甲に身を包んだ女歩兵達が展開していた。
制刻等の乗る小型トラックを、リングキャットと協力して挟撃しようと回り込んでいた一隊だ。
「――ッぅ……何て事だ……!」
ムシャヒメの砲塔上。そこに膝立ちの姿勢で立ち、フィールドスコープを構え覗く、一人の女の姿がある。
ムシャヒメの戦車長である
女としては長身。整った顔立ちに、目尻のキリリと釣りあがった目が特徴的。長い黒髪をポニーテールで結い、揺らしている。
預かる戦車『ムシャヒメ』の名に相応しい、まるで女侍、女武者といった様相を醸し出している女だ。
しかし今。その凛々しい顔は険しく染められ、口元は強く噛み締められている。
その理由は、彼女が先に見る光景ある。
彼女がフィールドスコープ越しにその眼に映すは、小隊長である恋華の乗る戦車、リングキャット。いや正しく言えば、そのリングキャットが行動不能に陥れられ、挙句の果てに砲塔を捲り上げられているという、信じがたい光景であった。
「信じられない、こんな事が……――
澪奈は一度フィールドスコープを下げ、そして背後に振り向き尋ねる。背後、戦車のエンジンルーム上には、また一人の女の立つ姿がある。
ストレートの長い黒髪が目を引く美人。澪奈とはまた違う種の、大和撫子。その女もまた偵察騎兵小隊の一員である事を示すように、07式特殊防御装甲を纏っている。
しかし最も目を引くは、彼女の手に持たれ構えられた得物。
それは弓。彼女の身長を優に超える丈を持つ、和弓。
そんな、戦車始め現代装備で固められた部隊の中では、場違いなまでのそれが、女の手にはあった。
「――不覚……申し訳ありません、一曹。射抜き損ねましたわ……ッ」
澪奈より雅と呼ばれたその女は、しかし整ったその顔を顰め、悔やむような声色で報告の言葉を寄こした。
――先に見える戦車『リングキャット』を今の惨たらしい姿へと変えた者。それは、無力化したはずの小型車輛の影から唐突に現れた、遠目にも怪異かとも見紛う禍々しい存在であった。
怪異の如き存在は、超常的な行動を見せ、リングキャットの動きを封殺。そして瞬く間に、リングキャットを目も当てられない姿へと変えてしまったのだ。
現在位置からリングキャットの監視支援に当たっていた澪奈達も、当然それを目撃していた。しかしすでに肉薄を許していたリングキャットへは、まだ生きている可能性のある恋華達の身を鑑みれば、火器火砲での火力投射は到底行えない。
そこで澪奈は小隊員の一人であり、類稀なる才をもって和弓を武器として戦う、雅を指名。彼女に弓矢を用いての狙撃を命じたのだ。
――しかし、狙い放たれ撃ち込まれた矢群を、禍々しい存在は寸での所で回避。戦車の内へと飛び込み姿を消した。
「わずかな差で躱された……雅の矢を避けるなんて……っ」
弓手である雅の隣足元。そこには立膝の姿勢で狙撃銃を構え、装着されたスコープを覗く、また別の女の姿がある。程よく焼けた小麦色の肌に、反した長い金髪が映える、艶やかな美女。雅のスポッターを務める小隊員だ。
その女は、雅の腕を持っての弓撃が失敗に終わったことに、若干の困惑の色を浮かべている。
「我が未熟さを呪いますわ……ッ」
そして雅自身は弓を下げつつ、悔いて己を祟る言葉を紡ぐ。
「雅、自分を責めるな」
「しかし、このままでは小隊長殿の御身が……!」
そんな部下に向けて、宥め促す言葉を掛ける澪奈。しかし雅は、救う事の叶わなかった恋華の身を案じ、訴える言葉を返す。
「分かっているさ。我々はただちに、隊長殿達の救出に向かう! 」
その雅に澪奈は承知している旨を返す。そして配下の女隊員達に向けて、これより救出行動を開始する言葉を発し伝える。
「――……恋華隊長……っ」
しかし発し上げた直後にも、澪奈はその顔をまた曇らせて声を漏らす。虚勢を張って入るが、彼女も内心では、大切な仲間、友人であり戦友である、恋華の安否に気が気ではなかった。
「澪奈さん……」
その澪奈の隣。戦車砲塔の装填手用ハッチから半身を出す、ショートボブが魅力の美穂という装填手の少女が、そんな澪奈を労しく思い声を漏らす。
「おいおい。無敵の女武者様が、ずいぶんと弱気だなッ」
しかしそこへ、そんな少し荒々し気な声が響き掛けられた。澪奈始め、戦車上の女達の視線は、声を辿り隣を向く。
声の発生元は、戦車の隣。そこに並び停車している、装甲兵員輸送車の上。
そこに立つ、一人の女からであった。
褐色の肌とショートカットの淡い金髪が目を引き、男勝りと言った言葉が似あう、整いながらも鋭い顔立ち。
女は、ムシャヒメに随伴していた歩兵分隊、『セイバーズ』の分隊長であった。
「
「アンタの、そしてアタシ達の頭は、ハンパなバケモンに簡単にやられるような女かよ?」
分隊長の女に、その名を口にして返す澪奈。対して、昌と呼ばれた女分隊長は、続け不敵な笑みでそんな言葉を寄こす。
「違いねぇ。あのアマゾネスが、そう簡単にやられるタマかよっ」
「悲観に染まるには、まだ早計と思われます」
さらに女分隊長の昌の隣や背後から、立て続けに声が聞こえ来る。
「
澪奈はまたそれぞれの女の名を呼ぶ。
煉と呼ばれた、女達の中でも際立ってアウトローと言った雰囲気の美人は、口角を上げた口元に八重歯を覗かせながら、相棒であろう二丁の拳銃を弄んでいる。
そして結里と呼ばれた、女隊員達の中でも一際グラマラスな体をスーツ越しに主張している美女は、冷静な佇まいで対戦車火器を担いでいる。
二人はいずれも、セイバーズ所属の分隊員。
「そうそう、弱気になるにはまだ早いって!」
「小隊長の強さは、澪奈さんも知ってるでしょ?」
さらに周囲に展開した、セイバーズの女達から次々に言葉が飛んで集まる。それは全て、恋華達の無事を信じる物。そして悲観に染まる澪奈に発破をかけ、奮い立たせようとする物であった。
「よぉ、雅。普段の高慢ちきなお前が、ずいぶんとしおらしいなぁ?これは面白れぇや」
「お黙りなさい、煉。頭の中まで獣な、あなたとは違うのです」
「あぁんッ?」
そして煉は、雅に品の無い揶揄う言葉を飛ばす。しかし雅はそれに冷たく返し、それを受けた煉は荒々しく絡む声を返す。二人の間に火花が散る。
「結里。相変わらず、顔に似合わず楽観的なんじゃない?」
「あなたが最悪の事態に捕らわれ過ぎなのです、
スポッターの金髪美女が、結里に向けて訝しむ声を飛ばす。対して、スポッターの美女を可憐と言う名で呼び、静かに指摘の言葉を返す結里。二人もまた、静かにしかし強く視線をぶつけ合う。
「――フフっ……まったく、お前達はっ」
しかしそんな中で、澪奈が笑みと言葉を零したのは、その時であった。
個性豊かな女達の見せたそれらのやり取りは、実を明かせば彼女達のいつもの定番の物。この遠慮せず飾らない間柄こそ、彼女達の結束の証なのであった。
「――はっはっは!まったく、最高にしびれるお嬢さん達だなっ!」
しかし。そんな所へ唐突に、毛色のまるで違うそんな声を聞こえ来た。それまでの女達の物とまるで違う、太いそれは間違いなく男の物。
澪奈始め一隊の女達は、揃って声の方向へ振り向く。その先、警戒隊形の背後。そこには聞こえた太い声が示す通り、一人の男が立っていた。
女ばかりで構成される偵察騎兵小隊の中で、その人物は男と言うだけで浮いている。しかし、その男の目立つ部分はそれに留まらなかった。
迷彩服、ないし07式特殊防御装甲に身を包む女達に対して。男の恰好は、漆黒のロングコート姿だ。さらに目元にはサングラスを掛け、黒で固められた中で、金髪の頭髪だけが目立っている。
はっきり言って、おかしいまでに悪目立ちしていた。
「どんな時でもソルジャーソウルと友情を失わない。やっぱり、俺の見込みに間違いはなかったぜっ!」
そんな姿格好で、男は女達に向けて評価するかのような言葉を発する。
しかし。一方の女達はと言えば、揃って漏れなく軽蔑や色物を見るジト目を作って、その男に歓迎的ではない視線を注いでいた。
「……そういえば、君もいたな……」
そして、女達を代表するように。澪奈が先までの笑みから打って変わった、困り呆れたため息交じりの声を漏らした。
説明すれば場違いなこの男。元はと言えば、かつて過去に恋華や澪奈達が打ち倒した敵対組織に、傭兵として雇われていた者であった。そして成り行きで刃を交える事となったのだが、男は戦いの最中で恋華や澪奈達を気に入り、なんと雇われていた組織を裏切り、彼女達の側へと寝返ったのだ。
そして組織が打ち倒された後も、男はドサクサで罪を逃れ。以降恋華や澪奈達の行く先々に付きまとい、勝手に助っ人のように立ち振る舞っていたのであった。
そんな困った男を、澪奈は微妙な顔を浮かべ見下ろす。
「まーだ尻尾振って付きまとってんのかあいつ」
「はっきり言って、ストーカーの変態ですわね」
そして煉や雅始め女達からは、冷たい言葉が容赦なく飛ぶ。
「はっはっは!クールだなっ、強い女はそうでなくっちゃな!」
しかしサングラスのその男は、そんな言葉を受けてなお、嬉しそうに笑い上げていた。
「――ふっ。しかし、少し気持ちを取り戻せたかもな」
そんな様子を眺めていた澪奈は、しかしそこでその顔にキリリとした色を戻し、そして紡いで見せた。女隊員達のいつものやり取り。そして少しおかしな追っかけ男。
それらの空気に影響され、澪奈のその心内からは焦りが消え、大切な戦友である恋華の無事を信じ、それを救い出さんとする確固たる意志が芽生えていた。
「私は、いい仲間に恵まれた――」
そして紡がれた澪奈の言葉。それを聞き、一隊の女達の視線が、彼女に集まる。
「さぁ、悲観するのはこれまでだ。我々はこれより、隊長達の救出作戦を敢行する――隊長達の無事を信じて!」
そして発された澪奈の一声。それにより、凛と心地よく張り詰めた空気が、女達に伝播する。
「昌、分隊に正面からの攻撃を任せたい。危険な役割となるが、やってくれるか?」
「ハン。アタシ達が、できないと言うとでも?」
まず、歩兵分隊『セイバーズ』の分隊長である昌に、行動指示を告げ、そして尋ねる澪奈。対して昌は、不敵な笑みで肯定を示す返事を返す。彼女だけでなくセイバーズの分隊員達は、皆漏れず同じ意見、意気込みであるようであった。
「頼もしいな。――ムシャヒメ、ハニーレオ、両車輛はセイバーズに随伴し、これを全力でサポート!」
『了解!』
『了解です!』
続いて澪奈は、戦車と装甲車に指示。対してそれぞれの乗員からは、インカムで返事が返ってくる。
「そして――美穂、雅、可憐!私達は別働迂回し、リングキャットの元へ強襲。恋華隊長達の、救出に当たる!」
それから澪奈は、戦車上の自分の周りに居る女隊員達に、同行を命ずる。
「はい!」
「御意に」
「まかせてください」
指名されたそれぞれからは、頼もしい返事が返る。
「そして……君は好きにしてくれ……」
そしてついでと言ったように。澪奈はサングラスの男に向けて、困り持て余したように、そう言葉を投げかける。
「はっはっはぁ!お嬢さん達の素晴らしいダンス会にお招きいただけるとは、光栄だ!」
そんな澪奈の内心を知ってか知らずか、サングラスの男はコートをたなびかせ、息巻いて言葉を発して見せた。
「――……あ、あの……レイナ様……!」
各員へ指示を伝え終えた澪奈。その彼女の元へ、足元から何か遠慮がちな声が聞こえ来たのはその時であった。
戦車上から視線を下ろす澪奈。その彼女の目に映ったのは、一人の少女だ。
一見は、15歳前後程。姿格好は他の女隊員達と同じく07式特殊防御装甲姿。
しかしその装備と不釣り合いなまでに目立つのは、少女のその幻想的なまでに美しい金色の長い髪。そしてきめ細やかな白い肌。両側頭部の、白い羽の飾り物が目を引く。
そして何より目立つは、笹のように尖り長い、人間の物ではない両耳。
その少女は、エルフであった。
「ミルフミュイ姫?いかがなされましたか?」
そんなエルフの少女に、一方の澪奈は、これまでの部下への物とは打って変わった、畏まった言葉使いを降ろす。加えて、エルフの少女の物と思しき名に、姫という敬称を付けて。
「あの……わ、わたくしも、戦場へご一緒させていただきたいのです!」
そのエルフの少女、ミルフミュイから発された言葉。それはこれよりの戦闘に、彼女自身の同行の許可を求める物であった。
「姫、それは……しかし……」
しかしその要求に、澪奈は戸惑い躊躇する様子を見せる。
このエルフの少女ミルフミュイ。彼女はとある事情から恋華達の皇国陸軍に保護されている、あるエルフ族の姫君であった。
偵察騎兵小隊には現地に精通した案内人として、特例で同行していたのだが、立場としては客人であり、他のコミュニティの要人。
そんな彼女の、危険な戦闘の場への突然の同行の申し出は、澪奈を戸惑わせるには充分であった。
「ご無理を申し上げている事は承知しております……ですがどうかお聞き届け下さい!」
その澪奈に向けて、ミルフミュイは声を精一杯張り上げて訴える。
「恋華様には御恩があります!それに……あの者等が、マイリセリア姉様を誑かし、果てにその命を奪い去った悪辣な存在なのであれば……――それを討ち仇を成す事に、せめてお力添えしたいのです!」
「!」
そして発し言い切るミルフミュイ。
マイリセリアとは、ミルフミュイが敬愛していた姉姫。そしてミルフミュイと、恋華や澪奈達皇国陸軍はそのマイリセリアが、今まさに戦っている悪辣な者等――〝日本国隊〟なる組織の手により、命奪われたという事実を情報として掴んでいた。
その経緯から皇国陸軍は、〝日本国隊〟なる組織を打ち倒すべき敵対組織と断定。
そして恋華率いる偵察騎兵小隊は、悪辣なるその者等断ずる行動の一環として、発見した敵車輛隊に攻撃を敢行したのであった。
「わたくしも、戦い身を護る術は手ほどきを受けております!ですので、どうか……――!」
その美しい瞳に、確固たる意志を浮かべ、懇願の声を紡ぐミルフミュイ。
「……分かりました、姫」
その熱意と確固たる意志についに負け、澪奈はそう言葉を零す。
「その揺ぎ無き意思、確かにお受けいたしました。これを蔑ろにしては、皇国軍人としての恥となります――共に、戦場に切り込みましょう」
そして続け言葉を紡ぎ、共に戦うことを誓う旨をミルフミュイへと告げた。
「レイナ様……感謝の限りです!」
それに、ミルフミュイは感極まる様子を見せ、礼の言葉を発した。
「ただし条件がございます。姫様にはこの私と行動を共にしていただきます。御身の安全のためです、私の側を離れないでいただきたい」
「はい!」
澪奈は最後に、ミルフミュイに向けて忠告の言葉を告げる。ミルフミュイはそれを、当然の条件と受け入れる。
「では、参りましょう――さぁ皆、合戦準備だッ!」
そのミルフミュイを、まるでエスコートするように促した澪奈。
続く動作で、澪奈は戦車の砲塔上で立ち上がる。そして、纏っていた迷彩服の上衣をまるでマントのように脱ぎ去り、その下に着用していた07式特殊防御装甲の姿を露にした。
美女美少女揃いで、レベルの高い美しい体を持つ者ばかりの偵察騎兵隊だが、澪奈のそれは一際抜きんでた、抜群の物。その芸術なまでのプロポーションが、体のラインをはっきりと移す07式特殊防御装甲により強調され、見るものを惑わせ魅了する。
「澪奈さん、こちらを」
そんな澪奈に、側に寄って立った装填手の少女、美穂が声を掛け、そして何かを差し出す。
「ああ、すまない美穂」
それを受け取る澪奈。
澪奈が手にしたそれは、長物――日本刀だ。
澪奈は07式特殊防御装甲の腰部に設けられた、特殊なアタッチメントを用いてその鞘を固定、帯刀する。
そしてその鞘から、刀身をゆっくりと抜き出す――そしてその刀の、黒光りする姿が露となった。
漆黒の刀身が特徴的なその刀。その名は『桜切雪村(おうせつゆきむら)』と言った。
見る者が見れば、一見するだけで相当の業物と分かるそれは、澪奈がこれまでの戦いで愛用して来た、相棒であった。
「雪村も、調子が良さそうだ」
その刀身に目を走らせ、愛おしそうな声で相棒に語り掛けた澪奈は、それから丁寧な動きで刀身を鞘に戻し収める。
「――んっ」
その際、少し身を捻った澪奈は、唐突に何か艶っぽい声を漏らした。
「っぅ……07式は、軽量で動きやすく高性能なんだが――少し着心地と、何よりデザインがな……」
そして澪奈は少し頬を赤らめ、自らの身体を見下ろす。
身に纏うその特殊な形式の装束が、澪奈の身を擦り悪戯をし、艶やかな声を上げさせたのであった。
「?」
その時、澪奈は何か複数の視線を感じる。
そして周りを見れば、美穂やミルフミュイ達、何名かの少女達が、何か顔を赤らめて澪奈を凝視していた。
「ど、どうした皆?」
何か変わった彼女達の様子に、澪奈は少し戸惑い疑問の色で返す。
「い、いえっ……!」
「ご、ご無礼を……!」
対して、美穂やミルフミュイ達何名かの少女は、顔を背けたり飛び上がったりと、戸惑いしどろもどろになる様子を見せる。
そんな様子の彼女達に、首をかしげる澪奈。
「ははっ、相変わらず破壊力のすごい魅惑のボディだな」
そんな所へ、また揶揄うような声が飛ぶ。それはセイバーズの分隊長、昌の声。
「あ、昌?どういう……?」
その言葉の意味するところが掴めずに、困惑の言葉を漏らす澪奈。
「はぁ、自覚が無いって罪ねぇ」
今度は背後。スポッターの美女の可憐から呆れ困ったように声が飛ぶ。
「まったく――娘っ子達は、アンタの極上のエロティックボディにやられちまってるのさ」
「――んなッ!?」
そして、昌から告げられたダイレクトな指摘。それによって、澪奈も流石にその意味と、そして今の状況を理解。その端麗な顔をさらに赤く染め上げ、驚きの声を上げた。
そう、極上のプロポーシュンを持つ澪奈に、まだ初心な生娘達は当てられ、ドギマギしてしまっていたのだ。
「お堅い顔してとんだ魔性だな、どんだけの小娘共をそれで雌にしてきたんだか?」
「一曹……もう少し、ご自覚なされたほうが良いかと思いますわ……」
アウトロー女の煉からは揶揄う声が飛び、和弓使いの雅からは、少し赤くなり背けられた顔で、進言の言葉が来る。
「そ!そんなつもりは……!」
それらの言葉に、さらに同様の色を見せる澪奈。
「はっはっ!たまらんねぇ!こんな極上の女を前にしちゃ、俺様も射抜かれ果てちまいそう……あぎゃっ!?」
そしてサングラスの男からは、品の無いやっかみの声が飛ばされかける。しかしそれに限っては、分隊員の女達が投げつけた弾倉やら装備やらが見事にヒット。サングラスの男は強制的に沈黙させられた。
「ま、まったく……――んんっ」
澪奈は少し不服そうな様子を見せながらも、咳払いをして気を取り直す。
「ははっ。ちょっとおふざけと揶揄いが過ぎたか?でも、これもいい刺激になっただろう?」
それから状況をまとめ整えるように、分隊長の昌がそんな声を発し上げる。
「まっ、こんくらいふざけてた方が、やり易いってもんよ」
「これがいつものあたし達らしいかしらね」
「これもまた、良いコミュニケーションであったかと」
「ま……不快ではありませんわ」
それから煉、可憐、結里、雅達、女隊員それぞれから賛同の声が上がる。
ふざけ合いじゃれ合いながらも、いつしかその眼には、いずれも真剣な色が宿っていた。
「――確かに。これが、私達らしい」
それに、澪奈もその表情に凛とした物を取り戻し、透る声で発する。
「澪奈さん」
「レイナ様」
そして美穂やミルフミュイから掛けられる言葉。それは、これよりの戦いで、澪奈を信じ、己を託し着いていく決意を伝える物。
「あぁ――」
鋭く、士気を鳴らす空気が満ちる。
それに澪奈は一言で答え。そして。スゥと息を吸う。
「――我ら、皇国陸軍、第7機甲師団、偵察騎兵隊。悪しきを討ち、かけがけの無いものを護る刀――いざ、参る――ッ!」
凛と。確固たる決意の元、張り上げられたその一声。
それを合図に、澪奈と配下の女達は。美しいまでの揃った動きで、一斉に飛び出し行動を開始した――
――――――――――
女戦車隊側は全部揃いました♣
あとはぶっ飛ばすだけ♠
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