第44話 あー

 クリスティアは一瞬、顔を曇らせて「あー……」と気まずそうに答えた。

「なんだ、追放してからまだそんなに経ってないのに、もうパーティに入れてもらったのか?無能のくせにな」

 彼の言葉に、他の男たちは笑い始めた。


 その時、少年のような人物が前に出てきた。彼は駆け出しの冒険者のような軽い装備だったが、手に持っている剣は明らかに普通の剣ではない――まるで聖剣のように輝いていた。彼は転生者だろうか?

「仕方ないよ。僕みたいな転生者でない限り、女神の加護を受けることはできないからね」

 そう言って、自慢げに剣を見せつける。


「そうですね、旦那」

 片目に眼帯をしてボウガンを構えた大男が、仲間に同調して言った。


 その様子に俺は思わず堪えきれずに笑い出してしまった。

「くはっ……」

 そして、腰からスティックを抜いて構えた。


「お前、転生者か?なら俺の敵だ。今すぐ潰してやる」


 転生者の少年は一瞬驚いたが、すぐに自信満々の笑みを浮かべた。

「おいおい、何を言ってるんだ?雑魚が僕に勝てるとでも思っているのか?」


 瞬間、彼の聖剣が抜かれ、刃が俺の懐に迫ってきた――その時。

「復讐」

 俺は静かに呟くと、まるでパリィのように彼の聖剣を弾き返した。聖剣は宙を舞い、地面に突き刺さった。


 少年は左手を押さえ、痛みを堪えている。アックーが嬉しそうに囁く。

「憎悪を感じる……ああ、良い、良いね」


「す、すぐに回復を……」

 クリスティアは彼に駆け寄ろうとするが、少年は彼女を振り払い、パーティメンバーに命令した。

「何をしている!早くヒールをかけろ!」


 あっけに取られていた仲間たちは我に返り、彼に駆け寄って回復を施し始める。


 クリスティアは俺に向き直り、不安そうな顔で尋ねた。

「あなた、いったい何者なの?」


「それは今のところ秘密だ。それより、俺はこいつをぶん殴らないと気が済まないんだが?」


 怯えた少年は、地面に金貨の入った袋を置きながら必死に懇願する。

「こ、これで許してくれ……頼む」 


 俺は少し冷たい目で彼を見下ろしたが、何も言わずにその場を離れることにした。少年は後ろから捨て台詞を吐いた。


「覚えていろ……今日は調子が悪かっただけだ……」


 パーティはそのまま去っていったが、彼らの姿が見えなくなるまで、クリスティアは複雑な表情を浮かべていた。


 それからしばらくしてクリスティアと酒場に入ると、何か妙に視線を感じる。


 男たちがこちらをジロジロと見ている

 。

 特に、クリスティアが幸せそうな顔で食べている姿に向けられた視線は、まるで俺を狙いすましたようなものだった。


 彼女の無邪気な「おいしぃ!」という声が、ますます男たちの殺意を煽っている気がする。



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