第3話 勝ち負けの意味


詩廼と巴は放課後の将棋部で、いつものように対局を楽しんでいた。だが、詩廼は何か気分が乗らない様子だった。


巴 「どうしたの?今日はあんまり楽しそうじゃないね。」


詩廼 「うん…ちょっと考え事をしてて。」


巴は詩廼を心配そうに見つめた。彼女は詩廼の様子を察して、ふと思いついたことを口にした。


巴 「ねえ、私のお父さんが経営してる道場に行ってみない?もっと強くなれるかもしれないし。」


詩廼は目を丸くした。


詩廼 「道場?いや、別にいいや。」


巴 「なんで?お父さん、すごく優しいし、色んな人がいるよ。」


詩廼はしばらく黙り込んでいた。彼女の中で勝ち負けに対する気持ちがもやもやとしていた。


詩廼 「なんか、勝ち負けがあるのが嫌なんだ。」


巴は驚いた表情で詩廼を見つめた。


巴 「どういうこと?将棋って勝負じゃん。それが楽しいんじゃない?」


詩廼 「確かに。でも、勝ち負けにこだわるのが、なんか疲れちゃう。楽しいはずの将棋が、重く感じる時がある。」


巴は詩廼の言葉をしっかり受け止め、しばらく考え込んだ。


巴 「でも、勝つために頑張るのも一つの楽しみだと思うよ。詩廼の強さをもっと知ってほしいな。」


詩廼 「そういう考え方もあるけど、私はただのんびり楽しみたいだけなんだ。」


巴は詩廼の気持ちを理解しようと努力した。友達として、もっと詩廼を応援したいと思った。


巴 「それなら、勝ち負けを気にせずに遊び感覚でやればいいんじゃない?道場でも、みんなそんな感じでやってるし。」


詩廼 「そうかな…。でも、道場に行くとやっぱり緊張しそうだし…。」


巴 「大丈夫だよ。友達もいるし、一緒に楽しめばいいだけだよ!」


詩廼は少し考えた後、微笑んだ。


詩廼 「じゃあ、行ってみようかな。巴がそう言うなら、少しは楽しめるかもしれない。」


巴は満面の笑みを浮かべて頷いた。


巴 「よし!それじゃあ、一緒に行こう!」


この会話を通じて、詩廼は勝ち負けに対する自分の気持ちを整理し、巴によって少しずつ前向きになっていく。友情が彼女を真っ直ぐ押してくれるのだった。


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