第5話


 スーパーは、平屋でそれなりの規模だ。

 駐車場があるが、別に徒歩の俺たちには関係ない。


「やっと、着いたな。」


 俺は、ナズナに弄りまわされていた。

 雨にも濡れている気がするし。

 さんざんだ。


「さあさあ、買い物ですよ、買い物。」


 ナズナは、買い物かごを手に取った。


 俺たちは買い物を始める。

 ナズナが次々と必要なものを籠に入れていく。


「ねえ先輩、これどうですか?」


 ナズナが野菜を手に取って見せる。

 にんじんだ。


「ん?ああ、いいんじゃない」


 正直、何を買おうが俺には関係ない。どうせ料理するのはナズナなんだから。


「もう!ちゃんと見てくださいよ」


 ナズナが不満そうに言う。


「わかったわかった。んー、そうだな…」


 俺は、ナズナが手に取ったニンジンをじっくりと観察した。

 確かに新鮮そうではある。

 でも、正直なところ、野菜の良し悪しなんて俺にはさっぱりわからない。

 それに…

 

 ボク、ヤサイキライ。


「どうですか、先輩?」

「なんか、もっと甘い野菜がいいかな。かぼちゃとか。」


 ニンジンのサラダなんてないだろうけど。


「なるほど、先輩は野菜を食べたくない、と。」

「そそそそんなことないよ!」


 ナズナさん!

 俺も少しくらい食べれる。

 ニンジンは、まだ食べやすい方だ。


「じゃあ、先輩。今日は、ナスとキュウリで…」

「いやいやいや、ニンジンにしよう。」

「分かりました。今日は野菜たっぷりのカレーにしましょう。」


 ボク、カレースキ。

 ニンジンタベル。


 いや、栄養バランスをしっかりと考えている、ナズナのことだ。

 しれっと、横にサラダが置かれている可能性が高い。


 だとすると、カレーに野菜を混入させた方が、おいしく食べられる気がする。

 そうだ、そうしよう。


「うん。野菜のカレーにしよう、そうしよう、ナズナさん。」


 いつの間にか、俺はナズナをさん付けしていた。

 怖い怖い。

 サラダが夕食に出てくるとなったら地獄だ。


「分かりました。じゃあ、これにしましょう。次は…」


 そう言って、ナズナはニンジンをカゴに入れた。

 手慣れたように、ナズナはカボチャや、玉ねぎ、オクラ、パプリカを入れていく。

 俺は、それらを買い物かごへ入っていく光景を、ただただ見つめていた。


「次は…あ、お肉買わないと」


 ナズナが言いながら、精肉コーナーへ向かう。

 力なく俺もついていく。


「先輩、何肉のカレーがいいでしょうか?」

「安いからチキンカレーでいいんじゃない?」


とっさに思いついたものを言ってみる。


「チキンカレー…いいですね!じゃあ、カレー用の肉を買いましょう」


 ナズナは手際よく必要な食材を選んでいく。

 俺は横でカゴを持っているだけだ。

 こんな買い物、俺一人じゃ絶対にできないだろうな。


 だって、料理よく分かんないし。


 カレーは簡単といっても、最後に一人で作ったのはいつだろう。

 よくよく考えてみると、一人で料理をしたことは、これまで一度もないかも。

 なぜなら、常にナズナが隣にいたからだ。


 その他の雑多なものを買う。

 そのまま、俺とナズナは買い物を終え、レジに向かった。


「レジ袋はいりますか?」

「はい。」


 俺は、レジ袋をもらう。

 この時ばかりは、ナズナも何も言わなかった。

 いつものナズナは、レジ袋を買わない派なのだ。


 しかし、今日は違う。

 何を隠そう、いつもの買い物袋は、衣類を入れるために使用されているのだ。

 

 勝った。


 俺は結構、そう思った。

 ナズナが変な顔をしている俺を見ていた。


「先輩、なにか変なこと考えてます?」

「いいや、何も?」

「ふーん。」


 ナズナは、そう言いながら、買い物かごを会計横にあるスペースに置く。

 そして、レジ袋に買ったものを詰めていた。


「ナズナ。荷物持つぞ。」

「はい。」


 俺はナズナが丁寧に入れたレジ袋を手にした。

 そのまま、店舗を出る。


 外に出ると、雨は上がっていた。

 空には薄っすらと虹が見える。


「わあ、きれい」

「ああ、そうだな」


 ナズナは、目を輝かせている。

 俺も空を見上げる。

 確かにきれいだ。

 雨上がりの虹は、どこか幻想的だ。


「さあ、行きましょう。」


 ナズナが元気よく言う。俺たちは並んで歩き始めた。


「先輩、もう30分以上経ってますよ。」

「そうだっけ?」


 買い物袋に入ったものを片手に俺は、ふと時間について聞いてみる。

 ナズナは、時間を見ているかのごとく、そう答えた。

 うーん。

 ま、30分くらい、すぐか。


 しばらく歩くと、コインランドリーが見えてきた。


「あっ、乾いてますね。」


 ナズナは、乾燥機から取り出した自分の衣類を確認してそういった。

 そのまま、服を丁寧に折りたたんでいる。


 まあ、俺がやることはないな。

 ナズナの服がグチャグチャになってしまう。


「さて、先輩。持てますか?」

「ああ、大丈夫だぞ。」


 正直、重いが。

 なんか、慣れてきたのか、重みはそれほど感じなくなってきていた。


 もしかして、麻痺?

 麻痺しているのか、俺。


「いいえ、先輩が辛そうなので。衣類は私が持ちますね。」

「ああ、すまないな。」


 俺は申し訳ないと思ったが、言葉に甘えることにした。

 そのまま、アパートに向かう。


 コインランドリーからはすぐだ。

 安アパートが見える。

 それにしても、こんな狭いところに二人でいるのって、どうなんだろう。

 俺はそう思う。


 まあ、ナズナが選んだ物件だし。

 勝手に部屋に入り浸っているのは、ナズナだし。

 

 それに、何かするときには外へ連れまわされるし。

 まあ、いいのかな?


 そんなことを考えていると、部屋の前に到着する。


「あ、鍵開けますよ?」


 しれっと、合鍵を持っているナズナの手によって俺の部屋が解錠される。


「先輩、どうします?」


 ああ、彼女はシャワーか、風呂を先にするのか、と聞いているのに違いない。


「ああ、シャワーでいいかな。」

「じゃあ、先輩、シャワーを使いながら、お湯を沸かしてますね。」


 なるほど、そういうのもあるのか。

 確かに、雨の中を歩いていたから、シャワーはしたい。

 でも、風呂も入りたい。

 

 ならば、両方すればいいんだ。


「あ、ナズナ先にシャワー使っていいぞ。」

「え?いいんですか?」


 ナズナが驚いたような顔をしている。

 えっ?

 俺、変なこといったかな?


「ああ、女の子が先だろ?」


 俺は思ったことを口にする。


「あれ?先輩が優しい。一体どうしたんですか?」

「いや、俺はいつも優しいだろ?」

「…そうですね?」


 そこはなんで疑問形なんだ?


「じゃあ、先に失礼しますね。」

「ああ、ごゆっくりと。」


 ナズナは、持って帰った衣類を棚にしまったあと、着替えを持って、風呂場へと旅立っていった。


 俺は、レジ袋の中身を整理した後、ナズナを待つことにする。

 俺一人では、料理など出来ないのだ。


 しばらくすると、湯上りのナズナがいた。

 水も滴るなんとやらなのか。

 それはいいとしても、ナズナの私服がパジャマだ。


 まだ、夕方なんだけど。

 どうやら、今日もナズナは、お泊りする気のようだ。


「先輩、次にどうぞ。」


 首にあるタオルで水気を吸い取りながら、ナズナが言った。


「分かった。」


 俺は自分の服を持って、脱衣所へ行った。


 風呂は、いい湯加減だった。

 俺は、湯船に浸かりながら、俺はレポートについて考えていた。

 期限は、次の講義。

 つまり来週までだ。


 まあ、なんとかなるかな。


 風呂を終えて、着替えを済ませる。

 そして、部屋に戻ると、ナズナが夕食の準備を始めていた。


「キチンカレーだ。」


 俺は、キッチンから漂う香りに気づいて言った。


「はい。野菜たっぷりのカレーです」

「ふーん。なるほどー。」


 俺は、動揺を隠すようにそういった。

 まあ、あれほど野菜を買っていたし。

 覚悟はしていた。


 今日は、ただのカレーじゃない。


 でも、いざ目の前にすると…


「先輩、子どもじゃないだから、そんな反応しないでくださいよ」


 ナズナは、呆れたような顔をしている。


「いや、そのな。」

「大丈夫ですよ。野菜は細かく刻んで、お子様用にしてあります。」

「お子様じゃなくても、野菜が嫌いな人もいるんだよ?」

「先輩とかですか。」


 彼女の言うことに、ぐうの音も出なかった。


「…うん。」


 ごめん。ナズナ!


「分かってますよ。もう…」

「ごめんなさい。ナズナさん。」


 俺は、そういう他にない。

 ここで、機嫌を悪くしたら、目に見える野菜のカレーが夕食に召喚されてしまう。


「もう、先輩ったら、そういうのは卑怯ですよ。」


 ナズナは顔を赤くしていた。

 確かに、これ以上邪魔するのは良くないな。


 俺は、炊飯器でコメを炊く作業をすることにした。


「出来ました、先輩!」


 しばらくしたとき、ナズナがそう言った。


 俺は、遠目でカレーが出来ている鍋の中を凝視する。

 遠目で見る限り、普通のカレーだ。

 が、きっと中身は野菜だらけなんだろう。


「先輩、そんな目で見ないでくださいよ。大丈夫ですよ?」

「うん。」


 俺は、そう言った。

 炊飯器のコメは、既に炊き終えていた。


 賽は投げられたのだ。


 俺は、食器の準備を始めた。


 そして、今。

 俺の前にはカレーライスがあった。

 見た目は、上々だ。

 おいしそうの一言。


 ま、まずいカレーなんてありえないから。

 これは大丈夫だろう。

 野菜が少なく見えるカレー。

 見える野菜は、カボチャくらいかな?

 あとは、ニンジンなのかパプリカなのか?

 赤いものが見えるが、それくらい、俺の許容範囲である。

 それらの野菜らしきもの以外には、美味しそうなチキンがカレーに浮かんでいた。


「でかした!ナズナ!」

「まったく、先輩ったら…」


 ナズナはそう言っているが、どこか嬉しそうだ。

 俺はとっても、このカレーを食べたくなってきた!


「よし、カレーを食べようぜ!」

「はいはい、分かりましたよ、先輩。」


 現金な俺に呆れているのか、ナズナは釣れない反応だ。

 しかし、俺は知っている。

 ナズナは、このカレーを俺に食べさせようとしているんだ。

 いや、俺がカレーを食べたいだけか?

 まあ、いいや。

 

 とにかく。


「いただきます」

「いただきます」


 俺とナズナは、同時に言った。

 一口食べてみる。


「うまい!」


 思わず声が出た。

 俺の知っている野菜の味はない。

 カレーだ。

 むしろ、今までのカレーよりもおいしい。


「どうですか?」

「ああ、うまいぞ。さすがナズナ」

「えへへ、それは良かったです」


 ナズナは、どこか嬉しそうに俺を見ていた。


「でも先輩、もっと野菜を好きになってくださいね」

「はいはい。でもこのカレーなら、毎日食べれるな。」


 俺は適当に答えながら、カレーを食べ続ける。


「そうですか?なるほど。」


 ナズナは、何かを考えていた。

 まあ、いいや。

 俺はカレーを食べることに集中した。


 ………。

 ……。

 …。


 しばらくして、ナズナと俺は食事を終えた。

 後片付けをしていると、窓の外は、すっかり暗くなっていた。


「ナズナ、もう遅いぞ。帰らないのか?」


 形式上、俺はそう聞いてみた。


「大丈夫です。お母さんには、先輩のところに泊まるって、連絡してます。」

「そうか。」


 ま、ナズナがここに泊まるのは、いつものことだ。


「分かった。」

「はい。いつも、ありがとうございます」

「いや、こちらこそ。いつもありがとうな、ナズナ。」


 俺は、カレーが美味しかったこともあって、お礼を言った。


「えっ、どうしたんですか。先輩。」


 なぜか、ナズナに驚かれた。


「いや、いつも料理とか作ってもらっているし…洗濯もさせているし。その他にもいろいろな。」

「ああ、そういうことですか。」


 なんか、納得した様子でナズナはそう言った。


「そういや、俺、大学のレポートがあるんだった。」

「へぇ…」


 ナズナは、意地の悪い笑みを浮かべていた。


「私は、数学の宿題がありました。」

「そうか。お互いに大変だな。」


 数学?

 そんなのあったけ?

 去年は、そんなのなかった気がする。

 俺が忘れているのだろうか?


「じゃあ、勉強タイムですか?」

「そうなるな。」


 片付けが終わった後。

 俺たちはちゃぶ台のようなテーブルの上で、それぞれ課題や宿題を始めた。


「先輩、これ分かんないです。」

「どれ…」


 なんだこれ、こんなのやった記憶がない。


「分からん。」

「先輩、ほんとに大学生ですか?」

「いや、ちょっと待ってくれ。」


 俺は、机の上にあった、ナズナの教科書を読む。

 しばらくすると、なんか思い出してきた。


「分かった、俺にその問題をやらせろ。」


 俺はそう言って、問題を解き始めた。

 そうだ。

 公式を当てはめるやつだ。


「先輩、一人で問題解いてますけど。ちょっと、私にも教えてくださいよ。」

「ちょっと、待て。今、思い出してる。」


 そして、思い出した。


「ナズナ、この問題は、教科書のここの公式を当てはめる。」

「へぇー。」


 ナズナは、真面目に俺の話を聞いている。


「途中式は書いておくから、あとは自力で解くんだな。」


 そう、ここからメンドクサイ。

 だから、ナズナにパス。

 でも、入り口さえ分かれば、大丈夫だろ。

 知らんけど。


「それにしても、昨年、俺はこんな宿題しなかった気がするんだが。」

「そりゃ、そうですよ。私、特進クラスですもん。」


 ナズナは、そう言いながら、続きの式を解き始めた。


「そうなのか?」

「そうです。」


 うへー。

 大変だ。

 人の家でカレーなんて作っている暇なんてないのでは?


「大変だな。」

「いいえ。今もこうして先輩に教えてもらってますし。問題ありません。」

「そうか?大変だったら、俺も家事をするから、そう言うんだぞ?」

「はぁ、どういうセリフですか、それ。」


 ナズナはちょっと呆れた感じでそう言った。


 まあ確かに、この部屋は俺の部屋だ。

 自分の家の掃除や洗濯、料理は、そもそも俺がやるべきなのだ。

 だけど、現状、全部ナズナがやっている。


 楽ちんでいいんだけど。

 でも、彼女に負担を掛けるのも良くない気がする。

 特に成績に関わってくると、何か嫌だ。


「えっとな。俺の部屋に来ることで、ナズナの成績が下がると、嫌だなって。」

「ああ、そういうことですか。先輩が私に気を使っていることは、よく分かりました。」

「そうそう。そういうこと。」


 俺は誤解を招かないように、そういった。


「でも、この部屋でやっていることは、私が好きでやっていることです。」

「そうか。それならいいんだけどな。」

「それに先輩。今さら、料理とかできないでしょ?」


 ジト目で彼女が聞いてくる。

 うむ。


「確かに。」

「もー、ダメじゃないですか。」


 ニコニコとナズナは笑った。


「もし、時間が取れないようなら、そうなる前に先輩に相談しますよ。」

「分かった。」


 俺の心配は杞憂に終わりそうだ。


「ナズナは、特進コースで、いい大学にいけるな。」

「いや、進路は先輩と同じ大学に決めてますよ?」

「は?」


 俺は、よく分からないことを聞いた。


「推薦が確実に取れるんで、今のコースにしたんです。」

「さようですか。」


 特進コースの無駄遣いだろ、これ。

 俺はそう思ったが、まあ、いいや。

 ナズナと同じキャンパスは楽そうだし。


 しばらく、俺はナズナの宿題を手伝ったり、レポートを作成していた。

 

「先輩。もう、いい時間ですよ?」

「うわ。もうこんな時間か。」


 俺は、良い子だから睡眠時間を多めにとっている。


 まあ、子どもぽいとか。

 ジジババみたいだ、とか言われそうだけど。


 これについてナズナも反対しない。


「さて、布団。布団。」


 俺はそう言いながら、布団を出す。


「今日は、どうやって決めます?」


 ナズナは、俺に聞いていた。

 そう、どちらが布団かベッドで寝るか。


 毎回、それを決めることが大事なんだ!


 うーん、今日はあみだくじにするかな?

 それとも、大人らしくトランプか?

 いや、どれも違う。


 今日は、原点回帰だ。

 

「よし、決めた。じゃんけんだ!」

「え?いつもみたいに拘らないんですね?」

「いいじゃないか。シンプルで分かりやすいだろ?」

「はぁ…分かりました。じゃあ、じゃんけんですね。」


 ナズナは、ニコニコと笑いながら、同意した。


「じゃんけん…ぽん!」


 俺とナズナは同時に手を出した。

 俺はグー、ナズナはパー。


「やった!私の勝ちです!」


 ナズナは嬉しそうに言った。


「くっ…」


 思わず、俺は唸ってしまう。


 …おかしい。

 これまでの俺の脳内統計によれば、ナズナはグーかチョキを出すと読んでいたのに。

 だとすれば、少なくともあいこで次はチョキを出すはず、とまで読んでいた。

 しかし、まさか。

 パーを出すとは。


 この勝負、俺の完敗だ。


「じゃあ、先輩はベッドで寝てください。私は布団で寝ます。」


 ナズナは、にこやかにそう言った。


「え?お前が勝ったんだから、ベッドで寝ていいんだぞ?」


 どういう意味だ?


「いえいえ、私は布団の方が落ち着くんです。それに、先輩が床で寝たら、明日の朝、腰が痛いーとか、騒いでいそうですし。」

「お前な…」


 ぐぬぬ。

 しかし、どこか気を使ったセリフに聞こえた。

 もしかして、こやつ、勝っておいて譲るつもりだったのか。


「それじゃあ、私は布団を敷きますね。」


 ナズナは手際よく布団を広げ始めた。


 俺は、ベッドに座りながら、ナズナの様子を見ていた。

 なんだかんだで、いつも俺のことを考えてくれているんだよな、こいつは。

 たぶん。きっと。


 …もしかして、すべてナズナ様の手のひらの上で踊らされているのか、俺。

 ちょっと、怖くなってきた。


「じゃあ、そろそろ寝ましょうか。明日も早いですし。」

「そうだな。」


 違いない。


「じゃあ、電気消すぞ。」

「はい、先輩。」


 そういうナズナは、既に布団に入っている。

 俺は、部屋の電気を消す。

 部屋が真っ暗だ。


 カーテンもしているから、余計に。

 俺はスマホの明かりを頼りに、ベッドに横になる。

 そして、スマホを切る。

 

 完全に部屋が真っ暗だ。


「おやすみなさい、先輩。」


 ナズナは、暗闇なったことを確認したのか、そう言った。


「ああ、おやすみ。」


 俺は、ナズナにそう答える。

 ああ、それにしても、今日はいろいろとあったな。

 知らなかったが、ナズナは特進コースか。


 俺がそんなことを考えていると、いつの間にか意識が落ちて行った。

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