第5話
吸殻を地面に捨てた小林一はため息をつき腰かけた塀から立ち上がる。
「小林、そういうのは“悪さ”じゃねえよ」
と背が高いのが目立つ園田俊は言う。後ろに髪を結び堅のいい男だ。この薄暗い小さな公園では十人ほどの若者が屯している。
面倒くさそうに指摘された小林ははいはいと言いながら地面に落とした火のついたままの吸殻を拾う。
「そういうところありますよね園田さんは」
と怪訝そうな表情を浮かべる五十嵐海は少しにやけているようにも見える。数人が笑う声がする。まるで園田が馬鹿にされているようにも見える。
「で、園田さん。八十万、どうするんですか?」
と顎髭の目立つ内山が問いかける。
「まだ半分も集めきれていない」
真剣そうな様子で園田が言うと「どうするんですか」「それで平気なんですか」などの声が飛び交う。実を言うと園田が率いるこの集団、というかやんちゃな若者の集いだが、とある暴力団組織と揉めごとに合い金を請求されていた。事は一週間前に戻る。見栄を張った園田の手下が街を歩くその集団をにらみつけ、小規模の喧嘩が勃発したという。向こう方の一人は骨折、打撲などの軽傷を。そのため賠償金を払えと言う。もちろん上乗せされている。
園田の手下四人はそれほどの怪我には至らなかった。
「当の本人さんよ、どうすんの」
と五十嵐に目を向けられたのは事の張本人江上だった。色合いの目立つジャンバーを着て
「は、はあ。その時、一緒にいた奴らと相談して、強盗を仕掛けようと思っています」
と気弱そうな声で答えた。それに厳しい視線を送ったのは園田。
「お前、本気で言っているのか」
と尋ねると、はいと答えた。
「他の奴らは、どうなんだ」
と五十嵐が言うと、後ろにいた三人もうんうんと頷いた。
「一体どこを狙うんだ」
と園田が言う。重たい口を開くように江上は、
「あそこのスーパー、マリオです」
と言い放った。しかし、園田は断じて受け入れず、ダメだと答えた。
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