第4話

こっちに来なと催促され、伊地知のすぐ近くのワインのボトルを前に寄せ、手直しをする。

「鬼門っていうのはな、鬼が出る不吉な方角のことを指しているんだよ」

 はあと頷きながらも伊地知を見る。

「その方角がな北東なんだ」

 うんうんと頷く。

「で、俺気づいちゃったのよ。この店、結構変な客多いじゃん?」

 確かにと思う。

「あそこの山の『阿魏神社』ってわかるか?」

 知ってますと答える。昔からその神社で行われる祭りには参加していた。しかし、それ以外として訪れていない。静かで妙な場所だからだ。

「あそこ結構怖い噂あるじゃん?女性の霊が出るとか、丑三つ時に藁人形を刺している人を見たとか」

 確かに聞いたことがある噂だ。この街には知らない人はいないだろう。

「で、俺思ったわけよ、地図を開いてみて北東の場所!」

 ピンときた。ハッと頷く。

「そう、この今いる場所なんだよね」

 とにやけながら言ってきた。

 怖いというよりか、なんだかワクワクしていた。その日のバイトは特に何もなく、お疲れ様ですと告げ、スーパーを後にした。自宅に帰り、スマートフォンで阿魏神社周辺をマップで調べる。確かにその北東の部分にはスーパーマリオが在った。

 

 *

 

「花火したいな」

 そう呟いたのは熊野隼人である。今現在小学六年生という遊び盛りの少年である。恐らくスポーツブランドのロゴだろうか、大きな英語で書かれた文字が目立つ青いシャツを着ている。

「いいじゃんしようぜ」

と同じく小学六年生瀬川歩は言った。意外にも教室は賑わっていて煩い。普段の休み時間には校庭で遊ぶ面々が多く、今日に至っては皆が教室から出られない。雨だからである。

熊野の遊びグループも普段ならサッカーでもしていただろう。

「よし、トランプしようぜ」

 と阿部雅史が尋ねると口をそろえて嫌と言う。じゃあこれならと賭けに出る。

「負けたら奢りな」

 と言ったと同時に乗ったと言い出した。案外今の小学生も悪くないだろう。

「マリオで全員分奢りだぞ」

 と鶴橋寛太が言うと、不満そうな顔つきで熊野が、

「あそこはお母さんが働いているから嫌だよ」と言った。

 

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