第2話
朝目が覚めるとおしまいになっていた。
・・・・・・まあ、何を言ってるのかわからねーと思うが、とにかく目が覚めたらなぜか性転換していたのである。
そう、おしまいになっていたのだ。
鏡を見ると、昨日までは普通に男の俺が映っていたのだが、今は一回り背が小さい、真っ白な長髪の儚げな美少女が映っていた。・・・・・・ていうか、単に眠いだけだけど、なんか儚げに見える。
まあ、男の俺も白髪で同じような髪色だし、元からけっこう中性的な見た目で女子に間違われることもあったりするような感じだったんだけど・・・・・・これはもう完全に女子になってる。
なんでこんなことになったんだろう。うーん・・・・・・。
心当たりといえば昨日・・・・・・
『なあ、漫画とかで性転換する回ってよくあるけど、実際に性転換するってどんな感じなのかな』
『何、してみたいの?』
『いや別にしてみたいわけじゃないけど、どんな感じなのかなーって』
っていう会話を留羽としたことぐらいだけど・・・・・・。
いや、どう考えてもあれが原因だな。留羽の仕業だなこれ。
と、いうことで朝食をとった後優雅に紅茶なんか飲んでやがる留羽に文句を言いに行った。
「おい、なんか俺女体化してんだけど」
「あら、なかなかいい感じになったじゃない。かわいいかわいい」
「撫でるな頭を!!そうじゃなくて、別に性転換したくて話振ったわけじゃねえから!あれはなんとなく会話のネタとして言っただけであって、本当にしてほしいってフリじゃねえから!」
「そう?」
「そうなんだよ!というか女体化するにしたってこういう展開はもっとキャラの性格とか容姿とか、そういうパーソナルところを読者に浸透させてからやるもんなんだよ!そうしないとギャップとかそういうのが出ないだろうが!」(最初からTSする作品は除く)
「そういうものなの?」
「そういうものなの!」
「でもかわいいからしばらくはそのままでいてもらうわよ」
「マジかよ・・・・・・」
・・・・・じゃあ仕方ない。留羽以外にこれを元に戻せる奴なんていないだろうし、しばらくこのままでいるしかねえ。
「というか、このまま学校行って大丈夫なのか?」
「大丈夫よ。諸々のことは私がやっておくから」
「あっそう。なら大丈夫か・・・・・・」
ということで俺は学校へ行くことになった。
◇
「は?お前・・・・・は?三条?は?」
教室へ行くと、クラスメイトはあんな可愛い子いたっけ、という感じで黙って見ていたのだが、俺が自分の席につくと途端にザワザワし出した。
そして何事だという顔をして近寄ってきた佐々木に、俺が三条だと言った時のリアクションがこれである。
「そうだ、三条だぞー。三条瑠璃だ」
ちなみに今の俺は普通に女子制服を着ている。留羽が用意していた。・・・・・・ひょっとするとアイツは前々から俺を女体化させようと画策してたんじゃねえか・・・・・・?
「・・・・・・え!?うっそだろお前、おしまいになってんじゃねえか!!」
「そうなんだよー。朝起きたらおしまいになっててさー」
佐々木とともに話を聞いて、驚きのあまり絶句していた清太が俺のこの冷静な態度にようやく口を開いた。
「ちょっとあっさりしすぎじゃない?三条くん・・・・・ていうか本当に三条くんなの?」
「おお、そうだぞ。その証拠に清太、今ここでお前の黒歴史小説『罪びと』の内容を一言一句漏らさず詠唱してみせることだってできる」
「わ、わかった。確かに三条くんみたいだね・・・・・」
「ていうかなんでおしまいになってんだよ!こんなに可愛くなっちまって、胸もでけえし・・・・・・!一服盛られたりしたのか!?お前飛び級で大学卒業した妹なんていたっけ!?」
佐々木はあのTS日常系アニメの内容に絡めた叫びを発した。
「お前、そんなこと有り得ると思うか?そんな天才的妹がそう都合よくホイホイいるわけないだろ」
「ははっ、だよなあ」
「どちらかといえば妖の王を名乗る猫に変な術をかけられて性転換したあれに近いかなあ」
妹の方は科学的だけど、妖の王の方は超自然的だから女神に性転換させられた俺はどちらかといえばそっちに近い。
「いやそっちの方がありえねーだろ!!・・・・・・いやていうかそもそもTS自体がありえねーんだよ!!」
「ま、まあまあ落ち着いて佐々木くん。気持ちはわかるけど落ち着────」
「つーかなんでTSしたのが俺じゃねーんだ!!俺がしたかったあああああああ!!!」
「ああ全然わかってなかった・・・・・・」
「俺だってTSしたかった!!超絶かわいいロリっ娘とかになってロリコン揶揄ったりメスガキムーブしたかったああああああああ!!!」
「親友のショッキングな性癖が今暴露されて、俺普通にドン引きなんですけど・・・・・・」
「お前はいいよなあそんな可愛くなれたんだから!!!クソッ、ドン引きする顔も可愛い!!ていうか興奮する!!」
「親友に興奮するな」
佐々木はガックリと膝をついて絶望を体で表現した。
「おお・・・・・・エリ・・・・・エリ・・・・・レマ・・・・・サバクタニ・・・・・・」
「そんなにか・・・・・」
なんか少し不憫に思えてきたな・・・・・・。
「わかった、じゃあちょっと掛け合ってみるわ」
「えっ、誰に?TSを掛け合うって何だ?専門業者とかいるのか?」
俺は教室の隅の方へ行って留羽に電話をかけて頼んでみた。そしたら普通に快諾だった。今更だけどそんなホイホイ性転換させてもいいのか。人間界にあまり干渉してはいけない決まりとかないのか。
「OKだって。女体化させてくれるってよ」
「マジで!?」
「ああ、手を合わせて天にまします女神様にお祈りすればしてくれるってよ」
「一体誰に何を掛け合ったの三条くん・・・・・・」
「天にまします女神様、俺をTSさせてください・・・・・TSさせてください・・・・・お願いします・・・・・・」
「・・・・・・佐々木くんは変な宗教とかに引っかからないように気をつけてね」
その時、不思議なことが起こった!
祈りを捧げていた佐々木の体が突然強烈に光出したのだ!天にまします女神様(今は三条家在住)にその思いが通じたのだ!
そして光が止むと、そこにはピンク色の髪をツインテールに結んだ、小学四年生くらいの幼女が立っていたのだった。
「なれたのか、佐々木・・・・・」
「ああ、なれた。清々しい気分だな。生まれ変わった気分だよ」
「そりゃ容姿から性別までまるっと生まれ変わってるからな。輪廻転生レベルだぞ」
ちなみに、服はもちろんダボダボになっていたのだが、佐々木の前にはメスガキっぽい衣装が折り畳まれて用意されていた。ちゃんと佐々木の意を汲んでサービスでつけてくれたのである。
佐々木はそれを拾うと、教室の扉に手をかけた。
「さて、俺は今から童貞とかロリコンとかを探して揶揄ってくるわ。夢、叶えてくるよ・・・・・・」
「おお、ていうかよく考えたらお前も童貞なんだけどな・・・・・・むしろメスガキに揶揄われる対象なんだけどな・・・・・・」
「だからこそ見えてくることだってあるのさ・・・・・・」
「気をつけろよ!あんまりからかいすぎるとわからせられることだってあるんだからな!」
俺が大声でそう忠告すると、佐々木は笑顔で振り返ってサムズアップしてみせた。
「大丈夫!わからせ希望だから!」
・・・・・・最後にとんでもない爆弾を落として佐々木は去っていった。
彼の『夢』に向かって、その一歩を踏み出したのだ。
そしてホームルームが始まりそうになったので、五分後くらいに普通に戻ってきたのだった。
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