第15話:私、妊娠してるかも。

好人はもうジョリーから離れられなくなっていた。


相手は人間じゃなく悪魔・・・だけどそう言う偏見はとっくに捨てていた。


好人は就職活動の努力の甲斐あってとりあえずだけど精密機会の部品を磨く

会社に就職した。

ほんとは広告やチラシのwebデザインなんかをやってみたかったが、食って

いくためにはしかたなかった。


ジョリーも今はひとりで買い物もいけないし、でもここで暮らすなら、いずれは

ひとりで外に出ていけるようにしてやらないと・・・だから好人は会社が休みの

日には率先してジョリーを連れ出した。


そんな中でジョリーが言った、奥さんって言葉・・・まだプロポーズすらしてない

のに・・・意味深な言葉。


それがなにを意味してるのか好人はジョリー本人から聞かされた。


「ヨシト私・・・・生理来ないし・・・」


好人は避妊もせずにジョリーとエッチに明け暮れていたので当然のように

ジョリーの体に変化が起きる訳で・・・。


「ヨシト・・・もしかして私、妊娠してるかも・・・」


「まじで?・・・」


まさかの妊娠の可能性・・・およよな出来事である。

人類の長い歴史の中で悪魔が人間の子供を宿したなんて話、聞いたことがない。


ジョリーのお腹の中の赤ちゃんが順調よく育っていざ出産ですってなって

おぎゃ〜と産まれた子供は人間と悪魔のハーフ。


前代未聞、空前絶後・・・支離滅裂・・・人間と悪魔の子供なんてありえない

話だった。


これには、さすがに好人も驚いたと言うか、しばらく言葉も出なくて動揺が

走った。

最初ジョリーから生理が来ないって聞いた時は、ただ遅れてるだけだろうって

思っていた。

でも念のためと思って薬局で買って来た妊娠検査薬で調べたら妊娠してる

ことが分かった。


こうなったらしかたない。

できちゃったものはしょうがない。


好人は千春さんにも相談したが、最初、千春さんはジョリーが妊娠したって

聞かされてひっくり返るほど驚いた。

しばらくは動揺していたが、母は強し、すぐに冷静に戻って言った。


「流産でもしたら大変・・・ちゃんと養生させないと・・・」

「産婦人科も予約しなきゃね」


「あのね・・・ジョリーは人間じゃないんだよ、健康保険だってないんだからね」

「産婦人科なんて行ったら診察料どれくらい取られるか分かったもんじゃないよ」


「そうだったわね・・・戸籍ないのよね、ジョリーちゃんは・・・」

「しかたがない・・・じゃあ私が面倒みるわ・・・」

「赤ちゃんは、なにがあっても、ちゃんと産むべきだからね」


母親の断固とした意見だった。


「人間と悪魔のハーフでも、ひとつの命」

「世間には子供が欲しくてもできない人もいるんだから、あななたちは恵まれて

るんですよ」


って千春さんに言われて、ふたりは納得してジョリーも産むことを決心した。


ジョリーもまさか人間の世界に来て、こんなことになるなんて思いもしてなかった。

でも、内心では好人の子供を授かったことを喜んだ。


この出来事はジョリー好人とぶつかった時から起こりうる結果だったのだ。


ってことは人間の世界では、こうなると当然できちゃった婚ってことになるん

だけど・・・。

嫁さんが悪魔なんて誰も信じないし婚姻届なんかはもちろん受理されない。


一応千春さんとしては、ちゃんと式くらい挙げさせてやりたいと思った。

でも結婚式を挙げるなんてことジョリーは面倒くさいって当然、嫌がった。


「私は嫌だからね・・・そんなウザなこと・・・そんなのダサいこと・・・」

「それに、なんで悪魔が神様の前で愛を誓い合うんだよ・・・それおかしい

でしょ?・・・神様だってシラけるに決まってるよ」


つづく。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る