第4話 教育的指導
「グリオス様がこの世界を征服したいのであれば、私は全力で力添えを致します」
どうしてアネリーは、俺に対してこれ程の忠誠があるのだろう。この女を、この世界を、俺は信じていいのだろうか。
俺はそう不安になってアネリーを見つめると、アネリーは俺に優しく微笑んだ。
「グリオス様、大丈夫でございます。何も不安な事などございません。
グリオス様の胸の内に、強い想いがあるのを私は知っております。単なる暴力ではないその想い、この世界に唯一無二でございます。」
俺の中の想い、それが何なのか俺自身も余り理解できていない。けれど、俺のことを分かってくれる人がいるのは、とてつもなく安心する。
「分かった。君を信じるよ」
俺がそういうと、アネリーは笑顔を見せた。
「よし! 俺は何をすればいいの?」
「グリオス様、まずはお勉強のお時間です!」
お勉強? 予想外の返答に俺は困惑した。こういうのって大体
「まずは隣国を滅ぼしましょう!」
とか
「人間達に強さをしめしましょう!」
とか、じゃないのか。
困惑する俺を気にせず、アネリーは俺の手を引いてどこか別の場所へ連れていく。
手を引かれてこの建物の中を歩いたが、俺はその広さに驚いた。10メートルほどの高さの天井に、今歩いている廊下はどこに終わりがあるのか全く分からない。
5分ほど歩いて、アネリーは一つの扉を開けた。
「ここは、私とグリオス様だけのお部屋でございます。この中で話す声は一切外には漏れません。」
アネリーの顔はなぜか火照っている。そしてなぜか、部屋の中にベッドがある。
「今からなにをするの?」
「そ、それは…// いくらグリオス様相手でも、そんな恥ずかしいこと言えませんわ」
掌で顔を隠して、アネリーは恥ずかしそうにしていた。
「けれど、グリオス様がそんなに知りたいのならば仕方がありません//
今からやることは、私とグリオス様の愛のこづくr」
「いや、しないよ」
「そ、そんな… どうしてですか!」
「普通に怖い」
「酷いです、、」
アネリーは縮こまって
「うぅ、うぅ、」
とわざとらしく泣き出した。
「グリオス様がそう言うなら仕方がありません… 今日はまた別のお勉強をしましょう」
しばらく泣き続けて、アネリーはやっと落ち着いた。
「グリオス様、単刀直入に申します。その言葉遣いは、私以外には絶対に使わぬようにして下さい。」
「何か変かな?」
「いえ全く変ではございません。
ですが、全く王でもございません。」
「どういうこと?」
「どういうことだ? です」
「ど、どういうことだ??」
「王とは力以外にも、その存在こそが王でなければなりません。誰よりも偉そうに、恐ろしく、喋るのです」
「わかった」
「ほう、分かった です。」
「ほ、ほう、分かった」
「まだぎこちないですよ。今から2時間みっちり練習します!」
に、2時間!? アネリーは結構ドSなのかも、
2時間後
「ふぅ、どうにか形だけは完成致しましたね。」
「うむ」
「素晴らしい恐ろしさでございます!」
「当然であろう、我はグリオスぞ」
「ですがグリオス様、時には私だけに以前のように優しく喋りかけて頂けますでしょうか」
「なぜだ?」
「そ、それは// 優しいグリオス様も素敵だからでございます」
アネリーの耳は少し赤くなっていた。
「うん分かった。そうするよ。俺もこっちの方が楽だから」
「はぁ…//私だけ、私だけのグリオス様//」
アネリーは、ぶつぶつとそう呟いていた。この女は普通に変態なんじゃないのか…
「ふぅ、やっと落ち着きました。それでは行きましょう」
「どこに?」
アネリーは俺の話を聞かず、俺の手を引きながら早足で巨大な廊下を歩く。
俺とアネリーは、やがて巨大な扉の前にたどり着いた。
「さぁ、お開けください」
言われるがままに、俺はその扉を開けた。どこかの殺し屋一族の門くらいの大きな扉だったけど、すんなり開くことができた。
「うぉぉぉ!!!」
「グリオス様ぁぁあ!!!」
な、何だこれは!?
扉を開くとそこはバルコニーで、下には無数の生き物がいた。
オーク、ドラゴン、鬼、巨人、天狗
ゲームやアニメでしか見たことのない生き物が、そこには沢山居た。そいつらが、大声で俺の名前を叫んでいる。
「あの者達は全て、グリオス様の配下です。」
後ろにいたアナリーが、俺の耳元でそう囁いた。
「さぁ、グリオス様の恐ろしさと強さをあの者達に知らしめるのです」
そう言われても、どうすればいいんだよ…
とりあえず、何かそれらしい事言ってみるか、
「お前ら聞け! 我の名はグリオス・ヴァン・ヴァインだ! 」
「うぉぉおぉぉ!!!!」
化け物達のけたたましい叫び声は、周りの空気を震わせる。
「この世界の王して、最も恐ろしく最も強い存在だ! 」
「うおぉぉぉぉおお!!」
「これから我は… この世界を征服する!」
「うおぉおおおぉぉ!!!」
「今から我のことは…… ボスと呼べ!!!」
「Yes BOSS !!!」
化け物達のその声は、この世界の全てに響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます