第2章 To The Ghost Soldier's High

風護の研修メモ:なぜ逆遷は危険なのか?

〇最低限覚えるべきこと

霊域にヴァイマンが増えすぎると、生域の人間の精神に悪影響が及ぶ。

これだけ把握していれば、基礎的な活動には支障はない。


ここからはやや詳細な原理。より高度な活動を行う、あるいは他隊員を指導・指揮する立場を目指す場合は理解が重要。

(ゴスキル使いなら知っておけbyオシムラさん)


〇霊核とは?

生物の魂に紐付いている情報体。霊域と生域の関係を論じるうえでは、人間の霊核のみを考えて支障はない。

活動体(生域では肉体、霊域では霊胞)が生きている場合は結合型を取り、死亡・消滅すると遊離型を取る。

 遊離型は、生域では比較的安定しており数日程度は残留することが多い。一方、霊域ではきわめて不安定であり、活動体の消滅から数分程度で急速に分解される。



〇ポジ・ゲートとネガ・ゲート


生域と霊域の間に発生し、遊離型霊核が出入りする門を霊関門と言い、主にゲートと呼ばれる。

各ゲートは一方通行であり、生域→霊域なら順行霊関門(ポジ・ゲート)と、霊域→生域なら逆行霊関門(ネガ・ゲート)と呼ばれる。


これらのゲートは、出発地の霊核(結合・遊離の合計)の密度に応じて発生が誘導される。


現在の生域では人間が多数存在するため、霊核は飽和状態にあり、一定の周期でポジ・ゲートが発生する。このとき、ゲート周辺の遊離型の霊核(=最近死亡した人間の魂由来)はポジ・ゲートを通して霊域に移動。一部は霊胞を形成し(=転現)、残りは分解されて霊素となる。

これは平常時に起こる自然な現象で、順行霊核遷移(順遷)と呼ぶ。


一方、霊域の霊核密度が増すと、平常時には無いネガ・ゲートが発生する。ネガ・ゲートを介した生域への霊核の遷移を逆行霊核遷移(逆遷)と呼ぶ。



〇逆遷の特徴①破吸性

ネガ・ゲートが吸引・輸送するのは遊離型霊核だけではない。ネガ・ゲートは周囲の霊胞を破壊して強制的に霊核を輸送する性質を持っており、これを破壊的霊核吸引性(破吸性)と呼ぶ。

この破吸性への耐性は霊胞によって異なるが、ヴァイマンは弱く・レグマンは強いという傾向は広くみられる。つまりネガ・ゲートが発生すると、周辺のヴァイマンが消滅し、それらの霊核が生域へと遷移する……という現象が起きやすい。


〇逆遷の特徴②霊核干渉

逆遷によって生域へと移動した霊核は、(転現と異なり)新たに活動体を形成することはなく、すぐに分解される。この分解過程で付近の結合性霊核が刺激を受け、その保有者である人間の精神状態が影響を受ける。

この霊核干渉による影響には個人差があり、多くの人間は一時的に気分が変わるだけで目立った影響は受けないが、一部の人間は行動が変化するほどの影響を受ける。その行動変容は、自他の身体・生命を脅かす方向であることが多い。このような霊核干渉による暴力行動・自傷行動の誘導を凶性干渉と呼ぶ。


つまり、生域における傷害・殺人・自傷・自死といった行為の一部は逆遷によるものと考えられ、これら凶性干渉を防ぐことが霊管の最大の目的である。

しかし逆遷と暴力・自傷行動の因果関係を証明する手段はまだ確立されていない。よって、暴力・自傷行動に逆遷がどれだけ関与しているかを把握するのは現状では難しい。ただ、相関関係は明らかであり、因果関係を示唆する報告も増えているため、因果関係があるとみなすのが霊管の主流。

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