第一章 第三話 やってしまった…。

 田中先生の言う、あの箱というのは、教科書が沢山詰まったBoxのことだ。あれ、重いんだよな…。

 そうこうしているうちに職員室に着いた。

「失礼します。1-1の桜田です。田中先生の荷物を取りに来ました。」

あ、あったあった。教科書Box。

「うおっも!失礼しました。」

こんなに重かったっけ?重いからすぐに戻ろう。そう思って私は早歩きで教室に向かった。

 「ドンッ!!!!」

と、私は誰かとぶつかってしまった。

「ごめんなさい!大丈夫ですか?」

私がぶつかったのは、『東中ひがしちゅうの王子様』の、健太けんた先輩だった。

「大丈夫だよ。気を付けてね。」

「はい…。すいませんでした。」

…さ、いそごう。

 「明美ー、お帰り!」

「ただいま…。」

「どしたの?元気なくなった?」

いくらみこでも、健太先輩の事を言うのは気が引ける。

「…いや、何でもないよ!」

みこは、なーんだって顔で席に戻っていった。健太先輩は大人気だから、私がぶつかった事が知れ渡ったら『健太ファンクラブ』の人達は喧嘩を売りに来てしまう。面倒くさい。

 5時間目は数学だ。私は数学の成績があまり良くない。他の教科は学年首位なのだが(※自慢)。だから数学には特に力を入れている。さぁ、ノートだ!

 疲れた…。全力で取り組み過ぎた。

「明美ー!ごめん、この問題教えてぇ…。」

「えーっと?…ここをああしてそれを代入して……。」

「桜田さん、頑張ってますねー。」

「あ、飯田いいだ先生。」

飯田先生は数学の先生だ。いわゆる、『天才』。私と正反対の人。努力主義な私は、少し憧れている。

「しかし、すごいですねー。桜田さん、こんな難しい問題を解説出来るなんて。」

「そんなことありません。詰め込みです。」

嘘だ。私は詰め込みなんてしない。時間をかけておぼえる。

「明美、すごいんです。徹夜までして勉強して。」

「ほぇー、すごいですね。尊敬します。」

照れくさい!やめてくれぇぇ…。

***

 その頃、三木健太みきけんたはさっきぶつかって来た子の事を考えていた。

[あの子、可愛かったな…。]

健太はおとしやかな女子が好みだった。ファンクラブには美人は居るが、好みの女子は居ない。だからこそ、あの子が気になっていた。

[せめて名前だけでも知りたかったな。]

 この日、三木健太は初恋をした。






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