第一章 第二話 親友

 学校に着くと、まず大空美琴おおぞらみことこと、みこが声をかけてくる。

「おっはよー!むむ?今日は何を読んでいるのかな?」

登校中も本を読んでしまうほど『読書中毒』な私は、今日は太宰治の『人間失格』を読んでいた。

「人間失格、読んでる。」

「へぇー。相変わらず本、好きだねー。羨ましい。私なんか、国語の教科書の文章でギブアップ。」

「それはやばいよ。」

 そんな他愛のない会話をしていたら朝のホームルームが始まった。ちなみに、私の、市立東丘中学校1-1の担任は、田中智広たなかともひろ先生だ。一部の女子の間では、イケオジなんて言われている。

「出欠とるぞー。相川」

「はい」

「飯島」

「はい」

私の出席番号は15番だ。まだまだ先。

「桜田」

「はい」

やっと来た。桜田明美さくらだあけみ、これが私の名前。イニシャルはA.S。

 全国の中学生なら分かってくれるだろう。朝のホームルームが世界で一番つまらないということを。

「…はい。連絡は以上です。」

やっと終わった。

 …1時間目はなんだっけ?音楽か。うーん、微妙。教科書とリコーダーと筆箱(お気に入り)を持って移動する。教室から音楽室は近いのですぐ着いた。

「はい、今日はとにかくリコーダーをやります。」

うわっ。もっと微妙なのが来た。私は音楽の成績は良いが、大好きではない。ていうか、『とにかくリコーダ』って、説明雑過ぎないか?

 …やっと4時間目まで終わった。

 4時間目のあとは、お弁当タイムだ!いつも、私もみこも楽しみにしている。

「明美ー!お弁当食べよ!」

「みこ!うんうん食べよ。」

「「いただきます。」」

私とみこは友達が周りの人よりも少ない。だから、いつも一緒にいる。今日もそうだ。

「ねぇ明美。あの、宮内みやうち君って、かっこよくない?」

「え。そうかな?」

「いつの間に!?話聞いてたの?宮内君。」

「そうだよ、大空。声聞こえたからな。」

…みこと宮内君は、なんだかんだ言って仲が良い。男友達0な私とは違う。ちょっと羨ましいと思ったりする。

「桜田!田中先生が呼んでるぞ!」

「はーい。」

田中先生が呼んでる?何で?私やらかした?少し緊張しながら教卓へ向かう。相変わらず、田中先生はニコニコしていた。

「先生、お呼びですか?」

「あぁ、桜田。ちょっと頼みたい事がある。時間あるか?」

頼みたい事?何だろう。どうせ暇なので引き受けることにした。

「はい。暇です。」

「職員室からあの箱持ってきてくれ。」

「はーい。」


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