第5話 水の中の解放

家に帰ると、時佳はさっそく里菜に「今日はありがとう」とメールを送った。プールでの特別な体験が心に残る中、彼女はお風呂に入ることにした。お湯に浸かると、日中の疲れが少しずつ溶けていくのを感じたが、プールでの解放感とは違うことに気づく。


お風呂に身を沈めながら、時佳は思考を巡らせた。「どうして、プールで感じた解放感とお風呂では違うんだろう?」お湯の温かさは心地よいけれど、プールで感じた自由な感覚とは何かが違っていた。


湯船に浸かりながら、彼女はその理由を考え続けたが、答えは見つからない。「わからないな…」と呟くと、頭を振りながら考え込んだ。


お風呂から上がった後、里菜に電話をかける。「ねえ、プールとお風呂の解放感の違いって、なんだと思う?」と聞くと、里菜は少し考えた後に答えた。「それは、空間的な広さが関係してるんじゃない?」


「空間的な広さ?」と、時佳は首をかしげながら頷く。「確かに、プールは大きいし、水がたくさんあるから、自由に動ける気がする。でも、お風呂は狭いし、閉じ込められてる感じがするよね。」


「そうそう」と里菜が続ける。「プールの水の広がりが、心の広がりにもつながってるのかも。お風呂は、一人の時間だけど、囲まれている感覚が強いから、解放感が薄れるのかもね。」


時佳はその言葉に共感し、「うん、なんだかすごく納得した」と返す。「でも、なんでそう感じるのかは、私もよくわからない…」


二人はその後も、解放感についての話を続けたが、結局はそれがどこから来るのかを明確に答えることはできなかった。ただ、こうして話し合うことで、互いに感じていることを共有できたのが嬉しかった。


電話を切った後、時佳はふと、プールでの経験がこれからの自分にどんな影響を与えるのか考えた。解放感は場所によって変わるものかもしれないが、それを求める気持ちが自分の中にある限り、自分は自分なのだと思った。


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